第二十一話 『帰還』
第二十一話です。
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「、、、、、、はぁぁ」
どうしたもんかなぁ、、、
現在、みんなが寝静まったのを確認した俺は静かに洞窟の入り口あたりの壁際まで移動し、座り込んで星空を眺めながらこれからの事を考え込み、思わずため息を吐いていた。
考えても考えても、答えなど出ない。そもそも、俺と″こちらの俺″はどの程度違っていたんだろうか?
そう考えて思い返してみると、、仁千佳は明らかに違和感を感じていたと思う。先生も、仁千佳程ではないが俺が変わった事に気が付いていた。
盛島や広瀬は、、、どうだっただろうか?
驚きや困惑はしていてもさほど大きな違和感は持たれていなかったように思う。、、熊谷は本人も別クラスでわからないと言っていたし参考にはならないな。
となると、、俺の事をよく知る人や先生のように特殊な立場から俺を見ていた人は違和感を覚えるが、逆に言えばそれでも違和感を覚える程度の差、、、か?それなら学校の友人程度ならなんとかなる気もするが、、やはり両親が違和感を感じ取る可能性は非常に高い。
こちらの両親はどんな人達なんだろう。仁千佳達を基準に考えるのなら、そこまで差が無いような気もするが、、、うーん?
「何してるの?」
俺が思考の渦に飲み込まれていると不意に後ろから声がかけられた。考え込んでいたせいで全く気配に気付かなかった俺は、思わず心臓が飛び出そうになるのをなんとな抑えながら後ろを振り向くと、そこには熊谷が立っていた。
「ちょっとな、、熊谷も寝れないのか?」
平静を装いつつ俺がそう聞くと熊谷は苦笑いを浮かべつつ口を開いた。
「、、、ん。ちょっと、、怖くて」
「怖い?」
「、、このまま眠っちゃったら、明日が来なくてまた最初に戻っちゃうんじゃないかって、、もちろん、緋月さんのお話も聞いてたし大丈夫だとはわかってるんだけどね、、、」
俺が怪訝な表情を浮かべながら問いかけると熊谷はそう口にした。
「、、、、、、、」
その言葉を聞いた瞬間俺は絶句し、同時に激しい後悔に襲われた。
俺は、馬鹿か、、、いや、大馬鹿だ。
自分勝手な決断をしたと自覚はしていたが、自分の思っている以上だった。熊谷の味わってきた経験を思えば怖くなるのも当然の事だ。そんな当たり前の事にすら自分の事でいっぱいいっぱいで気が回っていなかった。本来ならすぐにでも家に帰してやるべきだったのだ。
何をやっているんだ、俺は。
すると、自責の念に囚われている俺に熊谷が近寄ってきて口を開いた。
「となり、座ってもいい?」
「、、、ああ」
戸惑いつつ俺が答えると熊谷は肩が触れるほどの距離に腰掛け、同じように星空を見上げた。
「「、、、、、、、、」」
互いに無言のまま時間が流れる。
え、、?なにこれ気まずっ!?
あと、、近い!!不安なのはわかるが今はちょっと離れて欲しい。先程の件で負い目もあって正直めちゃくちゃに気まずい。
「、、、ありがとね」
申し訳なさやら気まずさやらで内心悶えている俺に熊谷がポツリと呟くようにお礼を口にした。一瞬、何の事か分からずポカンとした俺だったがすぐに熊谷の話を信じた事だろうと察して苦笑いを浮かべて口を開いた。
「、、、そりゃこっちのセリフだろ?熊谷が話してくれなきゃ、きっと今頃何も知らずに″六回目″の真っ最中だった。勇気出して話してくれてありがとな」
「ううん。私1人じゃ、どうにも出来なかった。信じてくれて、助けてくれて本当にありがとう」
俺の言葉に、熊谷はゆっくり首を振りながら改めて礼を口にする。
「「、、、、、、、」」
再び、互いに無言になるが今度は俺の方から口を開く。
「、、、、悪かったな」
「、、、?どうして渋谷くんが謝るの?」
バツの悪そうな顔で謝罪を口にした俺に熊谷が怪訝そうな表情を浮かべて問いかけてくる。
「あの場で帰る決断をしなかったからだよ、、、怖かったんだ、、帰るのが。自分の事でいっぱいいっぱいでお前らの事考えれてなかった。だから、ごめん」
「、、、帰るのが、、怖い?」
俺の言葉に何を言っているのかわからないと言った様子で怪訝から困惑へと表情を変えていく熊谷だったがすぐに「、、、あ」とハッとした表情を浮かべ声を出した。どうやら察したらしい熊谷に俺は力無く笑みを浮かべながら口を開く。
「、、情けない事に、わからないんだ。どんな顔して会えばいいのか。、、、こんな事して戻るのを先延ばしにしたって意味ないのにな」
「、、、ッ!!!」
そう口にした俺を見て泣きそうな表情を浮かべた熊谷はいきなりガッと俺の手を勢いよく取った。
「、、うちに、、、うちに来ればいいよ」
「、、、、、、は?」
思いもよらぬ行動と発言に俺が呆然と声を出すと熊谷は俺の手を取ったまま勢いよく立ち上がり興奮した様子で口を開く。
「そう、、それがいいよ!!お父さんとお母さんは私が絶対説得するから!!学校だってウチから通えばいいんだし、それに、、、」
「熊谷、ちょっと落ち着け」
しばらく呆気に取られていた俺だったがハッと我に帰り熊谷の手を軽く引いて座らせてやる。
「、、、ッ!!、、ごめん、、出来もしないこと言った」
俺に手を引かれた事で我に帰ったのか熊谷はそう口にして座り込み、シュンとした様子で肩を落として俯いてしまう。
「謝んなよ、、励まそうとしてくれたんだろ?ありがとな」
俺が苦笑いしつつそう口にしながらポンポンと頭を撫でてやると熊谷はわずかに顔を上げ口を開いた。
「、、、、私に何かできる事はない?さっきの事だって渋谷くんがいいなら本気でお母さん達説得するし、、、とにかく、、私の事を信じて助けてくれた渋谷くんの力になりたいの」
「流石に居候は申し訳なさすぎるし、感情面を抜きにしても色々と無理があるから気持ちだけ貰っとくよ。でも、、そうだな、、、早速だけど気分転換がてらに少し話に付き合ってくんない?」
そう口にした俺に熊谷は大きく頷いた。
そこから、他愛の話をしばらくしていた。互いにどんな学校生活を送っていただの、互いの印象はどうだっただの本当に他愛のない話だ。
、、まぁ、熊谷も前に言っていた通りお互い別クラスでよく知らなかった事もありほとんど情報なんて手に入らなかったのだが、、
熊谷から聞いた中で唯一気になった俺に関する情報は、どうやらこちらの俺はいじめを受けていたらしい、、という事だ。
、、、、本当に俺か?それ。俺がもしイジメなんて受けたら10倍にした上に丁寧に梱包して熨斗まで付けてお返しちゃうぞ?
一度負けたとしても上等じゃねえか、、となんかテンション上がってきちゃって嬉々としながら報復に打って出る自分の姿が容易に想像できるし、、、間違いなく俺なら実際にそうする。正々堂々正面から、相手の数が多いなら1人を狙って奇襲、闇討ち、とにかく打てる手札は全て打って徹底的に叩きのめすはずだ。
、、、改めて、本当に別人なんだなぁ。
俺視点で見れば仁千佳は違和感を感じる程度。盛島、広瀬、熊谷の3人は元々よく知らないから判別不能。先生に関しては一度も違和感を感じなかった。
先生の口から俺の印象を聞いた際は違和感を覚えたが、それは話の内容に対してであって先生個人に違和感を感じた訳ではない。つまり、それほど元の世界のコイツらと似ている訳だが″俺″に関しては話を聞く限り完全に別人のように感じる。
、、、自分の事だからそう感じるだけで案外人から見たら違和感レベルの小さな話なのか?
俺がそんな事を考えているとふいに熊谷が身を寄せて俺の肩に頭を乗せるようにして体重をかけてきた。
「、、、熊谷?」
問いかけるが返事はない。
どうしたものかとしばらく困惑しているとやがて規則正しい寝息が聞こえてきた。、、どうやら寝てしまったらしい。まぁ、、疲れていたのだろう。
「、、、頑張ったな」
俺は労いの言葉を呟きながら、なんとなくもう一度熊谷の頭をぽんぽんと撫でてやり、どうせ俺は寝ないのだからとそのまま起こさず寝させてやることにして再びこれからの事について考え始めた。
そして俺はこの時、実は熊谷が寝たふりをしていた事も、もう1人離れた位置から寝たふりをしながらこちらに視線を送って来ている人物がいる事にも気がつかないまま再び思考の渦に飲まれて行くのだった。
そして翌朝。
「さて、出発するが、、よいかの?」
荷物を背負った面々を見渡し、最後に俺に気遣うような視線を向けた緋月が問いかけてくる。
結局、あの後一晩中考えていて一睡も出来なかった上に答えも出せていない。でも、時間があったおかげで覚悟だけは決まった。
帰ろう、知らない我が家へ。
どうするかなど何一つ決まってないが、とりあえず当たって砕けろだ。気合いだ、気合い。
俺は緋月に頷き、口を開く。
「ああ、帰ろう」
そうして俺達は竜化した緋月の背にのり、なんだかとても長い時間を過ごしたような気のする島を後にするのだった。
ーーーーーーーーーー
一方その頃。
とある別世界の、とある城の王座の間に1人の男が立っていた。
腰まである長い銀髪を靡かせ、褐色の肌に赤い瞳、頭からは山羊のような螺旋状の角を生やし、軍服のような服装にマントを羽織った異様な出で立ちの男は無言で虚空を見つめている。
するとそこに″声″が響いた。
『我が眷属が、姿を現した』
「、、、緋の竜が?、、しかし、何故突然姿を、、いや、そもそも今まで一体どこにいたのでしょうか?」
突如頭の中に響くように聞こえてきた″声″に男は問いかける。すると再び″声″が響く。
『忌々しい勇者が封印という形でアレを隠しておったのだ。そして緋月の気配が現れたのと同時にその勇者と似た気配を持つ存在が現れた。おそらくその者が封印を解いたのだろう』
「、、、いかがいたしますか?」
『無論、殺せ。奴は必ずこちらの動きを察知して動き、いずれ必ず我らの元へ辿り着き脅威となる』
その″声″の言葉に男は険しい表情を浮かべる。
「しかし、、アレは貴方様のお力から生まれた存在、、我らに勝てるとはとても、、」
『勝てぬであろうな。故にしばらくは動きを控え、奴の動向を探り、策を練れ。殺すのはその後だ。そして叶うならば勇者もどきはなるべく早く消せ。アレに力をつけられては我が眷属以上に面倒な存在となる。更に手まで組まれてはお主らどころか弱体している今では我ですら手出しができなくなる。故にこちらの方でも一つ、手を打っておいてやろう』
「、、、ハッ」
『先程も言ったが、下手に動けば必ず奴は察知してくる。くれぐれも慎重に動け』
恭しく跪き胸に手を当て礼をする男に″声″は最後にそう伝える。
男は″声″が響いてこなくなった事を確認するとその場で立ち上がり、さっそく行動を開始するために動き始めるのだった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
今回で実質第一章、無人島編は完結となります。
次回、別視点が入りその後第二章に入る予定です。
※まだ未定ですがもしかしたら閑話が一話と人物紹介が入る、、かも?(あくまで未定です)
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