第十六話 『盟約』
第十六話です。
感想、ご指摘などお待ちしております。
「俺を創世竜とやらに会わせろ」
そう口にした俺に竜は明るい表情を一転させ「ズーン」と効果音が聞こえそうなほど露骨に落ち込んだ。
「それは、、、無理じゃ」
「なぜ?」
「それは、、創世竜のいる場所が問題だからじゃ。アレは世界の核におる。妾ではその場所まで辿り着くことはできんのじゃ」
「世界の、、核?」
「うむ。魔力や魂をはじめ、この世の全てのエネルギーが集まる場所じゃ。消費された魔力や死んだ生物の魂は全てそこに流れ込み、時間をかけてまっさらな状態となり、また世界に戻ってゆく。あらゆる膨大な力が渦巻く場所故、それこそ分たれる以前から存在するような者達でなければ、入った瞬間形を保つ事すら叶わぬじゃろう」
、、、輪廻転生、、あの世みたいなもんか?というかコイツ、会いに行く事すら叶わない相手にどう対抗する気なんだ?
「、、、お前、会いに行けもしない相手にどう対抗するつもりなんだ?」
「う、、うぐっ!?そ、、それでもなんとかせねばならぬ!!あやつと約束したのじゃ!!!」
、、、あやつ?、、誰だ?
俺が疑問を浮かべていると竜は更に言葉を続ける。
「そ、、それに創世竜はその様な場所におり、弱体化の影響もありおいそれと手出しはしてこれん、、、、はず、、じゃ。その手足として動いておる眷属を叩けばよい!!」
「なら、条件変更だ。その眷属とやらに会わせろ」
俺がそう口にすると勢いよく喋っていた竜がしなしな〜と勢いを失う。
「そ、、それはっ、、、、無理じゃ。現状向こうが動き、世界に異変が起きねば察知する手段がない、、、」
「おいおい、、後手後手じゃねえか。向こうが動いてやっと感知できるって、、、それ気付いた時には手遅れパターンも普通にありえないか?」
「そこは大丈夫じゃ。いくら創世竜といえどもいきなり世界を丸ごと引っ張ってくることなど弱体している今はできぬ。できるなら既にやっておるじゃろうしな。やるとしたら徐々に行なっていくはずじゃから充分に対処は可能なはずじゃ」
なるほど。そこはかとなく不安になる返答だ。
「、、ハァ、、色々とツッコミどころはあるけどまぁ今は、いい。とりあえず封印とやらを解きに行くぞ」
俺がため息を吐き出しつつそう口にするとすっかり意気消沈していた竜はパッと顔を上げると呆然とした表情を浮かべた。
「、、、行かないのか?」
「あ、、ああ!!もちろん行くのじゃ!!!」
竜はこれ以上ないくらい嬉しそうに瞳を輝かせ慌てて立ち上がり、、、そのまま顔面から地面に突っ込んだ。
「、、、、おい、なにしてる?」
「あ゛、、足が痺れて、、」
その場を、沈黙が支配した。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ふんふーん♪」
「、、、、、、」
ーーービキッ。
額に青筋が浮かぶ。
よほど上機嫌なのか俺の背で呑気に足をパタパタさせ鼻歌など歌い始めた竜を放り投げたい衝動に駆られるが、頑張って耐える。チラリと横に視線を向けると先生が青褪めた顔で物凄く不安そうにこちらをチラチラと見ている。
なぜ、こんな状態になっているのかというとあの後、ずっと正座していたせいか足が痺れて立ち上がれなくなった竜が「おんぶしておくれ」とぐずりだしたのが原因だ。ノータイムで尻を蹴飛ばしそうになった俺だが、割とまとも?な竜に行った自らの仕打ちを思い出し、歯を食いしばってなんとか耐えてその提案を受け入れ、現在に至るのだ。
ちなみにその際、俺が歯を食いしばって耐えてる様子を見た他の面々が全員顔を青褪めさせ、熊谷などは汗をダラダラ流しながら「あっしが背負いますよ?」なんて言い始めた。
、、とうとう「あっし」とか言い始めたぞ、コイツ。なんで三下キャラに磨きがかかってるんだ。
「、、、ん?」
ふとある事が気になった俺は竜に質問を投げかけた。
「そう言えばお前、俺にやたら怯えてたけどそれも俺の存在の″格″とやらが高いせいか?」
「いや?お主の顔が普通にやべーだけじゃよ?」
「、、、ッ!!」
、、、耐えろ。
「確かに″圧″は感じるが怯えるほどのものでもない。お主が怒る事で多少威圧を増す効果もあるじゃろうがアレは普通にお主が怖かっただけじゃ。まったく、人ではなく悪鬼の類を呼んでしまったのかと思ったぞ」
そう言って竜はケタケタと笑い始めた。先生が更に青褪めさせ瞳にうっすらと涙を浮かべ始めている。仁千佳達も顔を青褪めさせ熊谷などはどこからいつの間に拾ってきたのかそこそこ太い木の棒を握りしめ、なにやら覚悟を決めた様な顔で竜に視線を向けている。刺し違えてでもこの愚か者を止めねば、、といった様子だ。
、、、俺の顔、そんなに怖いのか?
一周回って冷静になってきてそんな事を考えているとまたふと新たな疑問が思い浮かび口を開く。
「なぁ熊谷」
「はい、なんでしょうか?」
「、、、、、、敬語じゃなくていい。それより、魔法とやらが話に出てきてたけど、、お前らも普通に使えたりするの?」
俺が問いかけると熊谷は戸惑いつつ答える。
「は、、うん。みんな普通に使えるます、、よ?」
なんだかおかしな喋り方になっている熊谷に他の面々が同意する様に頷く。
「へー、、ちなみに、今使えたりすんの?」
「うん。私は、氷の魔法が得意」
そう言って熊谷が手をかざすとパキン!と音がなり、何もない空間に拳大の氷が出現した。
「ほえーすげえな、、、おぉ、、ちゃんと氷だ。どうなってんだ?これ。、、ちなみに仁千佳はなんの魔法が使えるんだ?」
「、、ッ!!!」
俺が熊谷の出現させた氷を拾い上げて眺めつつ試しに仁千佳にも聞いてみると仁千佳は一瞬で顔を強張らせた。
、、、突っかかってくる訳でもないし、、最初の頃みたいな嫌悪感みたいなのは感じないけど、、まだ話しかけない方が良かったか?
「、、、、、私は、風の魔法が得意」
「お?、、お〜」
雰囲気を良くしようと話しかけた事を後悔していると仁千佳は戸惑いつつも答えてくれた。同時に手のひらをこちらに向けたかと思えばそよ風が吹いてきた。
、、、魔法を使ったのか。熊谷と違って見た目にはわかりずらいけど2人とも夏とか便利そうだな。
その後、先生、盛島、広瀬にも聞いてみたが先生は土、盛島は水、広瀬は粘液魔法が得意らしい。広瀬だけなんだか異質だが、これは酸性を強めたり毒を混ぜた粘液を放出したり、逆に粘性などを高めて身に纏う事で保護幕の様な使い方ができるもので特段珍しいものでもないらしい。たまたまこの場では浮いていたと言うだけの様だ。
「あれ?、、でも水や氷が出せるなら飲み水に悩む必要なかったんじゃ?」
「それは無理じゃ。、、ちょうど頃合いじゃろう。ほれ、先程の氷を見てみよ」
俺が疑問を口にするとそれまで会話に混ざって来なかった竜が既に手放した先程の氷を指差す。
「、、、?、、、あ、、」
しばらく氷を見ていると急になんの前触れもなく氷が煙の様に霧散した。
「ああ言う事じゃ。通常の氷や水と違い、込めた魔力を使い切ればああして消える。多くの魔力を注ぎ込めばその分長持ちさせる事は可能じゃが、結局は消える。取り込んでも意味なかろう?」
見ると、氷が少し溶けて地面にできていたシミまで消えている。
、、なるほど、体内に取り込んでもああなるわけね。そりゃあ意味ないな。てか取り込んだとしてもしかして急に体内の水分が消えることになんのか?、、怖っ!
そしてシミの消えた地面を見つめて考え込んでいた俺をじっと見つめていた仁千佳がぽつりと呟いた。
「、、本当に、、別の世界から来たんだ、、」
「、、、みたいだな」
「、、、ねえ。別の世界の私と春樹は、、、、ッ!!ごめん、、忘れて」
何かを聞きかけた仁千佳は途中でまた顔を強張らせそう口にすると唇を噛んで俯いてしまった。
、、、ぎこちないけど話せるようになったかと思ったらまた逆戻りしてしまった。く、、空気が重い。
「ついたのじゃ」
俺が空気の重さに困り果てていると竜がそう声をかけてくる。正直ありがたいが、、、ここはまだ森の中だ。周囲には、、、特別そうなものは何も、、、いや、あった。わずかに差し込む日の光がキラリと反射して気が付いた。蔦が絡み付き、景色に同化するようになっているが一本の日本刀が地面に突き刺さっている。隠れている部分もあるので正確な長さはわからないが、その刀身は俺の知る刀よりも反りが大きいように見える。
、、、、確か、平安時代の刀が反りが大きいのが特徴だったか?て事はあの刀の持ち主と思わしき勇者とやらは平安時代の人間?てかそもそも日本人だったのか?、、さっきアトランティスがどうのと言っていたが平安時代とじゃ時代が合わなくないか?詳しくは知らんがアトランティスは仮に実在したとしてももっと前だろ?
、、、いや、違うな。そもそもが別世界、その辺りの事情は気にするだけ無駄、、か?
俺が考え込んでいると竜が刀を指差して口を開く。
「アレを、引き抜いて欲しいのじゃ」
、、、え?それだけ?
「封印、、なんて割に随分と簡単なんだな?ていうか不用心すぎやしないか?」
蔦に絡まれているが、、アレは刀を隠そうとしているのではなく時間をかけて自然にそうなったのだろう。それらしい台座もなく、本当にただふら〜っと歩いてきて適当にそこら辺に突き刺して帰りました、、とでも言うように無造作に突き刺さっている。
刀に近付きながらそう指摘すると竜はニヤリと笑って口を開く。
「問題ない。後ろを見てみよ」
「うん?」
言われて振り返ると、俺と熊谷以外の距離がいつのまにか2mくらい開いている。熊谷は不思議そうにしているが他の面々は驚愕の表情を浮かべている。
「ち、、近づけない?それになんか、、、」
呆然と呟き困惑している様子の仁千佳達を指差した竜が口を開いた。
「普通は、ああなる。妾の力に適合している娘と、存在の″格″が高いお主が特例じゃ。ちなみに、妾も近づく事は問題ないがどれだけ力を込めてもうんともすんとも言わぬ」
あぁ、そういやなんでもありの別世界でしたね、ここ。
なんだかどうでも良くなった俺は刀に手を伸ばし、無造作に引き抜くと、驚くほどあっさり抜けた。ぶちぶちと蔦が千切れ、若干の抵抗を感じるがそれ以外はまるで紙粘土から引き抜いているのかと錯覚するほどスルリ、と抜けたのだ。
「、、、、、、、?」
特に何も起きない。
え?コレで終わり?封印っていうくらいだからもっとこう、、なんかないの?、、、まさか、揶揄われたのか?だとしたら流石の俺も修羅にならざるを得ないぞ?
そんな事を考えながら俺は疑問を投げかける。
「これで、、封印は解けたのか?」
「うむ!本当に感謝するのじゃ!!、、あとは、、、」
俺の問いかけに嬉しそうにそう返事した竜は俺の背中からぴょんと飛び降りると自分の指をガリッと噛んだ。
「、、、おい、血が出てるぞ?何してるんだ?」
「後で治す故、少し我慢しておくれ」
そんな事を考えているとおもむろに竜が俺の手を取りそう口にしながら俺の指を同じように噛んだ。
「ッ!?、、、??」
指先に走る痛みに顔を顰めた俺だったが訳も分からずひたすら困惑していてリアクションがうまく取れないでいると、竜は俺と手をつなぎ怪我している部分を重ねるとブツブツと呟き始める。
「ーー我、緋の竜、名を緋月。我が名と存在をかけ、彼の者と共に歩み、共に在る事を証とし、盟約を交わす事をここに誓うーー」
「なっ?!っまさか!それは!?」
俺と同じように呆然としていた先生が何かに気付いたのか悲鳴のような声をあげる。先生が声を上げたのとほぼ同時、俺と竜の体が突如光り始めた。
突然身体が光り出すという異常事態に呆気に取られているとすぐに光は収束していきビー玉くらいのサイズになって俺と竜の胸の辺りから出てきた。その2つの光はふわふわと周囲を旋回するとすぐに互いの胸に戻ってきて、心臓の辺りに吸い込まれるように消え、やがて光も収まった。
、、ちなみに、竜から出てきた光が俺に、俺から出た光は竜に入っていった。
「よし!これでよい。さて!さっそく島から出るのじゃ!!」
「おう待てや、阿呆」
「ふぎゃぁっばっばばばばばばば!?」
俺はくるりと背を向け意気揚々と歩きだした竜の後頭部をはたいた。
後頭部に猛烈な衝撃を受けた竜は悲鳴を上げながら一回転、その後顔面から地面に落ち海老反り状態でガリガリと地面を抉り、滑るように4〜5mほど進んでから停止した。そしてパタリ、、と倒れ込むと地面に顔を突っ込んだまま再びびくんびくんし始める。
そして俺はくるりと振り返ると突然の暴挙に絶句していた先生に声をかけた。
「、、、先生。魔法でアイツを顔だけ出した状態で地面に埋める事って出来たりしますか?」
「、、、え?、、エッ!?さ、、流石にそれは、、」
「出来るのか?出来ねえのか?」
「、、、デキマス」
俺の問いかけに呆然としていた先生は青褪めながらそう答え、シクシクと泣きながら竜を魔法で埋め始めた。
その様子を腕を組んで眺めていた俺は作業が完了したのを確認すると地面から頭だけ出し、白目を剥いてだらしなく開いた口から涎を垂らし未だにびくんびくんしている竜を指差して声を上げる。
「盛島」
「ッ!?な、、なに?」
まさか自分に話がふられるとは思っていなかったのか盛島はビクッとしてからそう答える。
「アレ、起こして?」
「お、、起こすってどうやって、、?」
「水。得意なんだろ?」
全員、絶句する。
「あ、、悪魔?」
「あぁ、、竜神様、、私はなんて事を、、ごめんなさい、ごめんなさい」
俺の容赦の欠片もない発言に盛島は顔を青褪めさせ、広瀬が呆然と呟き、先生は土下座しそうな勢いで竜に謝罪している。
控えめに言って地獄絵図だが再びプッツンきて仕事モード全開な俺はそれら全てをサクッとスルーして口を開く。
「盛島、やれ」
「で、、でも龍神様にそんな事、、」
「やれ」
「、、、はぃい」
情けない声で返事した盛島が涙目で手をかざすと、竜の頭上からバケツ一杯分くらいの水が降りかかるのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに竜さんの名前が判明しました。
感想、ご指摘などございましたらコメントしていただけると喜びます。




