第十五話 『解ける謎』
第十五話です。
感想、ご指摘などお待ちしております。
ーーーーーーーーいま、コイツはなんと言った?
言葉を聞いた瞬間、一瞬頭が真っ白になる、、が真っ白になったのは本当に一瞬の事で、一拍遅れて驚愕する。
竜の言葉にではない。
竜の言葉に全く驚いていない自分に、驚愕した。
とても信じられる内容ではない。だが、胸の奥でストン、、と何かがハマるような感覚があった。
気になる事はある。コイツは「混ざっている」と口にした。謎もいくつかは残る。だが、それ以外はどうだ?。
「、、、、、」
全部、繋がる。
仁千佳達の態度、周囲の俺に対する評価、小さなものから大きなものまでこの島に来てから数えるのも馬鹿らしいほど感じていた違和感、そもそも目の前の竜の存在や、ループだの洗脳だのと言った訳の分からない力。、、俺が別の世界から来たとすると、全て説明がついてしまう。だって、異世界だもの。
いや、、俺は仁千佳達を知ってるし向こうも俺を知って、、、そうか、、″分たれた世界″か!。でも、、世界が分たれたのはずっと大昔だよな?分たれた別の世界に来てしまったとしてなんでそこに仁千佳達がいる?分たれても同じ歴史を辿ってきてるって事か?、、そうするとパラレルワールド、、いわゆる並行世界ってやつに近い感じ、、なのか?
「、、、熊谷、、いや、、みんな。みんなにとってコイツみたいな存在は普通か?」
俺が混乱しつつも質問を投げかけるが皆一様に驚愕の表情を浮かべたまま固まっている。しばらく沈黙が流れた後、なんとかと言った様子で熊谷が口を開いた。
「ふ、、普通じゃない。四大精霊なんて神様みたいな最上位の存在に、、しかも、かつて勇者様と行動を共にしたとされる竜神様に会えるだなんてとんでもない事だよ、、少なくとも今生きてる人達の中で会った事あるのなんて私達くらいだと思う」
、、もちろん知らない人なんていないと思う、、と付け加えた熊谷の言葉に仁千佳達も同意する様に弱々しく頷く。
珍しい存在である事に変わりはないが全員認知はしてる、、か。そういえばさっきも、熊谷はコイツをえらく持ち上げる様な喋り方をしていたし、思い返せばみんな突如竜なんて存在が現れたと言うのに驚愕こそしていたが怯えてはいなかった。
「、、、、、、、」
、、、、これは、参った。
残念なことに、とても嘘をついている様には見えない。それに自分が異世界に来てしまっていたと知ってもあんまりショックを感じない。むしろ色々な事に納得がいってしっくり来たくらいだ。ただ理解が追いついていないのか、それとも無意識に現実逃避でもしてるのか、夢の中にいるみたいにフワフワとして現実味がない事もショックを感じない要因の一つかもしれない。
「やはり、お主はあちら側の存在なのじゃな。妾も長い事生きておるが、目にするのは勇者と、お主で2人目じゃ」
竜が顎に手を当て感心した様に口にする。
「、、、どう言う事だ?」
「お主の存在の″格″が高すぎるんじゃよ。それこそ、妾に圧を感じさせるほどにな。普通に″統合″されただけではそうはならぬ。それに魂も横の娘らと比べて遥かに濃くなっておる」
俺は何も言えないまま仁千佳達に視線を向けるが未だに驚愕の表情を浮かべ固まっている。その様子を見ていた竜が再び口を開いた。
「妾達の住むこの世界が遠い昔、分たれたと言う話はしたな?」
「あ、、ああ」
「妾達の住むここ、″この世界″は大元、本体に該当する世界じゃ。つまり、創世竜の目論み通りに世界が一つになるとこの世界に引き摺られ、取り込まれる形で他の世界が″統合″される事になる」
竜が人差し指で地面を指しながら続ける。
「″世界″は、統合されると全体的に″力″が濃くなるだけじゃ。言ってしまえば元に戻るだけ。一つの世界が統合された程度では今生きておるもの達が生きていけなくなるような変化も起こらぬ。では、統合された″生物″の方はどうなると思う?」
「、、、、、、」
答えられない俺に竜はさらに続ける。
「答えは生物も変わらぬ、じゃ。こちらの生物に別世界の生物が引っ張られる形で肉体も精神も統合され、存在が強化される」
「そして、あくまで受け皿はこちらじゃ。肉体も精神もこちらが優先され、別の世界の存在は取り込まれ溶け合い消える」
「で、、でも俺は、、」
「そう、そこでお主の話に戻るのじゃが、本来なら統合され存在が強化されたとてこちらの存在に与える影響は微々たるもの、、せいぜいちょっと肉体が強くなる程度じゃ。それがお主は明らかに肉体も精神も本来消えてなくなるはずの″統合される側″が優先されておる」
「先程も口にしたが、妾の知る限り別世界の存在がその肉体と記憶を保持したまま逆にこちら側の存在を取り込んだ″例外″が2人だけ存在しておる。それが勇者とお主じゃ」
竜はそこで一旦言葉を区切ると「あくまで推測の話になるのじゃが」と前置きして話始める。
「おそらく、この島に来てからこちらの″お主″は死んでおる。そして偶然、そのタイミングでお主がこちら側に引き寄せられ、肉体も精神も死を迎え生命力が極限まで弱りきっていた事で本来消えるはずだったお主が優先権を得て、肉体も精神も乗っ取った」
「、、、あっ!!」
竜が話しているところに急に熊谷が声を上げ全員の視線が向く。思わず声が出たと言った様子で気まずそうにしている熊谷だったが竜が「話してみよ」と言った事で躊躇いつつも口を開き始めた。
「そ、、その、、″最初″の渋谷くんと″二回目″の渋谷くん、人が変わったみたいだったなって思って、、。あの時は私も人の事見てる余裕なんてなかったけど、今思い返してみると、、、、その、、本当に別人になったみたいだった」
言いづらそうにそう口にした熊谷の言葉に俺や他の面々が絶句していると竜は満足そうに頷きながら言葉を引き継ぐ。
「うむ。恐らくそのタイミングで″混ざった″のじゃろうな。そして、本来ならば乗っ取ったとて傷は治らぬからそのまま死にゆくはずじゃったが、妾が娘に貸し与えた権能の力で戻った」
「、、、、俺の、、俺のいた世界は、消えたのか?」
「いや、まだ統合はされておらん。もし世界規模で統合されたのなら必ず妾が気付く。元々偶発的に極小規模の″統合″が起こる事は稀にあった。ちとタイミングが良すぎる気もするが、お主もそのケースじゃろう」
「、、仮に、お前の言う通りの事が起きてたとして、それでなんで身体能力が上がる?お前の言い方だとこれは異常な事なんだろ?」
「うむ。これも推測になるが、お主の元いた世界には魔法も、妾のような存在もおらんかったのではないか?」
俺と竜以外の全員が再び驚愕の目線を向けてくる。
「、、確かに、竜なんて存在も魔法とやらもなかったけど、、それがこの話にどう繋がる?」
「お主の魂は、統合された事を考慮してもちと濃すぎるのじゃ。魂が濃いと言う事は、同時に世界の″力″も強い事を意味する。恐らくは人間などの比較的格の低い生物がギリギリ誕生できた、、と言うレベルじゃろうな」
一旦竜は言葉を区切るとこちらの様子を窺うそぶりを見せ、言葉を続ける。
「その世界で当たり前に生まれ、育ってきたお主にその自覚はないじゃろうが、それは生物にとって酷く過酷な環境じゃ。妾達のような格の高い存在は、エネルギーとして存在はしておろうが抑えつけられ生まれる事すら許されないほどにな。その様な環境下で生活していた故に肉体も頑強になったのじゃろう」
「お前は、、、創世竜とやらの子孫なんだろ?それがなんでそんな事になる」
俺が問いかけると竜は苦笑いしつつ答える。
「子孫と言うても主ら人の子らの様に他者と交わって産まれた訳ではない。生命とも少し異なる。妾は世界が分たれるその時、創世竜が抵抗しようとして行使した力の余波で生まれた自然現象の様なものなのじゃ」
、、、ああ、もう頭が破裂しそうだ。
それに、質問したのは俺だが、、また話が少し逸れた。今は、とりあえず自身の事が優先だ。軌道修正しなくては。
「とりあえず、俺の身体能力については、わかった」
俺は一旦言葉を区切り、一瞬躊躇ってから口を開く。
「俺は、、、元の世界に帰れるか?」
「、、ッ!!!」
俺がそう問いかけると仁千佳が反応を示した。唇を噛んで俯いている。なにやら気になる反応ではあるが、、正直今それどころではない。
「それは、、、恐らく、無理なのじゃ。向こう側の記憶を持っておるお主の状態を考えれば主観的には″移動″した、、と言えなくもないが、、実際には世界間を″移動″したのではなく″元に戻った″のじゃ」
「絶対無い、、とは言わぬが少なくとも妾は世界間を移動する術など聞いた事もない、、、、創世竜ならあるいは、、、いや、、知っておったとしてもおそらく弱体化している今は無理じゃろう。もし可能であるのならばとっくに世界間を移動して分たれた自己を再び一つにして世界も元に戻しておるじゃろうしな」
そう言って竜は一旦言葉を区切り、申し訳なさそうな表情を浮かべ言葉を続ける。
「勇者の奴も最後までこの世界で生涯を終えたし、仮に戻れたとて、、、おそらく元の世界でお主は文字通り消え、なかったことになっておる可能性が高い」
竜がもはや泣きそうな顔を浮かべながらそう締め括った。
、、、長い時間を生きたコイツが方法を知らずワンチャンある創世竜も弱体化している今は無理。そして創世竜が元に戻る事は世界が元に戻る事と同義。それはつまり現存の生物が息絶えることを意味する。
今、手元にある情報では、、詰みだ。
それでも、、俺は帰りたい。仁千佳達をの様子を思い返して理解した。理解、、させられた。例え魂レベルで同一人物であろうと、辿ってきた道のりは明らかに違う。
今、俺の視線に映るのは″よく見知った顔の知らない誰か″だ。両親、友達、仁千佳、、ついでに職場の連中。例え竜の予想通り無かったことになっていたとしても俺は、俺の知ってる奴らのいる世界に帰りたい。
何がなんでも元の世界へ帰る。
どうしようもなくそうしたいという焦燥感にも似た衝動に駆られた俺は竜に問いかけた。
「オイ、封印とやらはどこにある?解くには何をすればいい?」
「む?、、解いてくれるのか!?」
竜の顔がパァッと明るくなる。
「条件がある」
竜が「む?」と首を傾げる。
「封印は解いてやるし、俺に出来ることなら手伝いもしてやる。 だから、俺を創世竜とやらに会わせろ」
俺は、そう口にするのだった。
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