第十四話 『世界』
第十四話です。
感想、ご指摘などお待ちしております。
ーーーーーーーーどうして、こうなった。
竜から″世界の危機″とやらについて詳しく話を聞いた俺はこの島に来てからもう何度目かわからない疑問を思い浮かべながら竜の語った話の内容を思い返す。
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「遠い遠い、、、遥か遠いむかし、この世界は″力″で満ちておった。そして満ちすぎていた″力″の影響でまだこの星に生物などほとんど存在しておらんかった頃、世界が突如分たれた。それまでに生きていたわずかな生物も″力″もその他のものも何もかもが、じゃ」
、、、おいおい、、そこまで遡るような話なのかよ。もうスケールがデカすぎて逆に驚きがねえわ。
喋り始めた竜の言葉を聞き俺は長い話になりそうだと頭を抱えたい気分になりつつも耳を傾ける。
「そして、世界が分たれた事により世界を満たしていた″力″も弱まり、それまで″力″によって抑えつけられ抑圧されていたあるエネルギーが活動を始めた」
「あるエネルギー?」
「うむ。そのエネルギーとはお主らが″魂″と呼ぶものじゃ」
「、、、、ちょっと待て。何もかもって事は世界が分たれた時に当然その″魂″も分たれたんだろ?ならその″力″?とやらとのパワーバランスもプラマイゼロで変わらないはずだ。それがなんで急に活動を始める?」
俺の問いかけに竜は「ふむ」と呟きしばらく思案顔を浮かべていたがやがて口を開く。
「お主の目の前に水桶に貯められた真っ黒な水があったとする。そこに白い水を柄杓一杯分注ぎ込んだところで当然、色は変わらぬじゃろ?」
ふむ?
「では、透明度があるレベルにまで薄められた黒い水に同じく薄まった白い水を加えたら、どうなる?」
「、、、、、、、、、、」
、、、、え?、、ど、、どうなんの?
美術部でもないのにわからねえよそんな事。
困惑する俺に気付かないのか竜は構わず言葉を続ける。
「見た目にはほぼわからぬだろうが、色はわずかに濃くなるはずじゃ。ようは、満たされていた″力″が薄まった事で他と混ざり合い変化する余地が生まれたのじゃ」
な、、なるほど?
己の知識不足故にいまいちピンと来ていないがなんとなく言わんとしている事はふんわりと理解できた。
まぁ、、ここはアレだ。この島に来てからすっかりお馴染みのそういうものと言う事にしてゴリ押しで無理矢理納得する作戦で行こう。どの道今している会話の内容が既存の生命の誕生秘話とか言う壮大なトンデモ話なのだ。その道の学者などからすれば垂涎ものな話題なのだろうが俺は知らん。
要するに大昔に世界が分裂して同時になまらヤベー不思議パワーも分裂してそのおかげで生物が生まれる事ができたわけだ。オーケーオーケー、全て理解した。
脳内で強引に話をまとめた俺は竜に質問を投げかける。
「それで、お前はさっき世界が何者かの手によって一つになろうとしているって言ってたな?誰がそんなアホな事しでかそうとしてる?ていうか、もう一度聞くがそもそもこんな話を知ってるお前はなんだ?」
俺が続け様に質問を投げかけると竜は一瞬躊躇う様子を見せるが口を開き始める。
「、、、妾は、その昔この世界と共に生まれ落ちたと言われる″創世竜″の末裔じゃ。そして世界の統合を目論んでおるのはおそらく、、、その創世竜じゃ」
竜はうつむくと「実際に動いておるのはおそらくその眷属じゃろうがな、、」と付け加えた。
「、、、だとして、なんで今更そんな事をする?お前の話だと、世界が分たれたのは考えるのもバカらしいほど昔の話だろ?それが、なんで今更?」
俺がそう問いかけると竜は苦笑いをして答える。
「それは、お主ら人間の感覚じゃろう?先程も口にした通り、創世竜はこの世界と共に生まれ落ちた。つまりは世界が分たれる以前から存在していたわずかな生命のうちの一つじゃ。世界と共にその存在を分たれ、力の大半を削がれ休眠状態に入っていたのじゃ」
竜は一旦言葉を区切るとどこか悲しそうな表情を浮かべ続きを口にする。
「お主らにとって永遠に等しい時間でも、妾達にとっては決して短くはないが長いとも言えない程度の時間なのじゃよ。ただ怪我を負って少し眠りについたと言うだけのことじゃ」
「それに、こんな事をする理由はもっと単純じゃ。創世竜からすれば、いきなり事故で身体を引き裂かれ力を削がれたようなものじゃ。、、元の身体に戻りたい、元の世界に戻したいと、そう願うのは当然の欲求じゃろう?」
「、、、、、、」
どうしよう。言ってることはわかる。
だが。スケールがデカすぎでリアクションがうまく取れない。心が麻痺してしまっているのか″驚く″という感情すらほぼ湧いてこない。困り果てた俺はチラリと先程から一切喋らない先生達に視線を向けると皆一様に困惑した表情になっている。
よかった、どうやらリアクションに困っているのは俺だけじゃないらしい。困るよね、いきなりこんな話されても。わかるわかる。
あと、シリアスな雰囲気を醸し出してるところ大変申し訳ないが、この竜、現在進行形で全裸で正座中だ。その状態で真面目に話されても更にリアクションに困ってしまう。
まぁ、いい。スルーだ、スルー。
無駄に壮大な話だがそもそもこの話はコイツが″封印を解いてほしい理由″だ。俺達にも、、、まぁ関係はありそうだが気にしたところでどうにかなりそうな問題でもない。台風に素手で殴りかかるようなものだ。一旦忘れて話を元に戻すとしよう。
「つまりは、その創世竜とやらの目論みを止める為にお前は俺たちに封印を解いて貰いたいと?」
「その通りじゃ」
「お前が本当は凄く悪いやつで、俺たちを騙している可能性は?」
「そ、、それはない!!本当じゃ!!!」
俺の問いかけに竜は必死な表情を浮かべ否定をした。
、、勘でしかないが、嘘は言っていない気がする。
「、、、それなら、お前は誰に、何故こんな島に封印された?」
俺がふと浮かんだ疑問を投げかけると竜はフイッと視線をそらし、しどろもどろになりながらも衝撃の内容を口にする。
「そ、、そそそれは、、昔、、その、ちょっと色々あって″あとらんてぃす″とか言う人間の国を海に沈めたのじゃが、、その時に勇者と喧嘩になって負けてしまって封印されてしまっただけなのじゃ」
竜が若干早口でそう口にする。
やっぱり悪い奴なんじゃねえかよテメエ。ていうかあとらんてぃすってアトランティスか!?あのオカルト系の話題で有名な?実在しててしかもコイツが滅ぼしたのかよ!?それに勇者って、、、
「あ、、あれは人間が妾を討伐しようとしてきたのが悪いのじゃ!!たしかに、勇者の言う通り海に沈めたのはやりすぎだったかも知れぬが、、、」
俺が衝撃を受けていると竜は慌てた様子でそう口にする。
、、、いかん。
さっきから気になることができて一つ質問するたびにまた別の気になることが生まれてのループでどんどんと思わぬ方向に話が逸れていく。本当に収集がつかなくなるので多少強引に気になる事を聞いてしまおう。
「とりあえず、封印云々は理解した。だから一旦置いといて、そもそも俺たちがこの島に来たのは、、お前が原因か?」
後ろの面々がハッと息を呑む声が聞こえる。
「その通りじゃ。創世竜の復活と世界に異変が起き始めている事を察知したのじゃが、封印のせいで島から動く事が出来ずに困り果てていたのじゃ。そんな折、妾の力の届く範囲に妾の力に適合できそうな人間が侵入してきた事に気が付いたので呼び寄せたのじゃ、、、アバァ!!?」
現在巻き込まれている騒動の元凶にとりあえずゲンコツを叩き込んだ俺は顎に手を当てて少し考えた後質問を投げかける。
「、、お前の力とやらに適合しそうなのは俺たち全員か?あと、飛行機に乗っていた、、ここにいない連中はどうなった?」
「う、、うぅ、、ち、、違う。妾の力に適合しておるのはそこの娘のみじゃ。それ以外の者は近くにおったことで巻き込まれたんじゃろう。、、まぁ、巻き込まれた時点で少なからず素養はあるはずじゃが、その娘には遠く及ばぬ」
そう言って熊谷を指差した竜は言葉を続ける。
、、、やっぱり適合者は熊谷か。
「呼びよせたお主も、巻き込んでしまった者達にも大変申し訳ない事をした。だが妾もようやく掴んだ機会を手放すわけにはいかなかったのじゃ。そして、ひこうきとやらも問題ない。この島に来たのは間違いなくお主らだけじゃし残りの気配が妾の感知範囲の外へと抜け出した事も確認しておる」
「じゃ、、、じゃあみんなは巻き込まれて、、わ、、私のせいで」
熊谷が震えた声でそう口にする。視線を向けると顔も青褪めている。
、、まぁ、そうなるのは無理もないがお前のせいではないだろ、、って言っても納得は出来ねえんだろうな、こういう場合。
「娘よ、それは断じて違う、悪いのは妾じゃ。手前勝手な理由で一方的に主らを呼び寄せた。封印の影響で力も弱体化しておったし、本当に力の届くギリギリの距離じゃったから制御が甘くなった事も否定はできぬ。他の者まで巻き込んだのは言い逃れの余地なく妾の力不足であり、落ち度じゃ」
俺が熊谷の言葉を否定するより先に竜がそうハッキリと口にし頭を下げる。
、、、驚いた。思ったよりちゃんとしてるんだな、コイツ。
ナチュラルに失礼すぎる感想を持った俺は、はて?と首を傾げて思い返す。
、、、、頭に血が上ってたし、怒涛の展開でなんかハイになってたし、何より完全に洗脳してきた危険生物と断定してたから気が付かなかったけど、そういやコイツ最初から結構まともだな?
長生きしている竜だと言うのにこちらを見下すような偉そうな態度は見せないし謝罪を要求したらすぐ謝った。今だってこうして謝っているしこちらの質問にも素直に答えてくれている。
、、、もしかして、、やりすぎた、、か?
今更ながらにそんな事を思った俺は改めて竜を見やる。
先程のゲンコツで頭に大きなたんこぶを作り若干涙目になりながら大人しく地面に正座している。そして、全裸だ。
「、、、、、、」
や、、、やばい。急にとてつもない罪悪感が襲ってきた。
「、、、そう言えばお前、服は?」
「うん?衣服なら妾の棲家に勇者と共に行動していた時のものがあるが?」
竜が何故急にそんな事を?と言った様子で答える。外野から「今更!?」と誰かのツッコミが聞こえてきたがスルーだ。
「、、、、取りに行くか?」
「、、、、何故じゃ?人里に降りる時は服をきねばならぬらしいがこの場なら別にこのままでも不便はなかろう?」
「、、、、そうか」
俺が竜とそんなやりとりをしていると「それでいいの!?」と再び外野からツッコミが入るがこれもスルーだ。
「、、、あ、あの」
「うむ?なんじゃ?娘よ」
罪悪感から若干テンパリ気味で繰り出された俺のとりあえず優しくしてみよう作戦が見事に空回り内心更にテンパっていると熊谷がおずおずと声を上げた。
「わ、、私はこの島に来てから何度も同じ事を繰り返しています。これも、、竜神様のお力なの、、ですか?」
「うむ。お主は妾にとってやっと見つけた希望であり、何より手前勝手な事情で呼び出してしまった故、何がなんでも死なせるわけにはいかなかったのでな、、妾の権能を一時的に貸し与えておるのじゃ」
、、、竜神様って、、随分とコイツを持ち上げた喋り方するな?まぁ、なんにせよこれで島に来た経緯と熊谷の能力の謎は解けた。まだ濡れてない荷物やらスマホの電波やら現在地やらの謎もあるがそれはとりあえず後回しだ。おおよそ全てコイツの仕業だろうしな。
あとは、、、
「熊谷だけでなく俺もこの島に来てから様子がおかしい。具体的には身体能力が異常に増加してる。これも、お前の影響か?」
俺がそう問いかけると竜は「そうじゃった!」と思い出したように口を開く。
「お主に関しては妾は無関係じゃ。お主は、混ざっておる」
「、、、混ざる?」
俺が疑問を口にすると竜は大きく頷き続けて衝撃の言葉を言い放つ。
「うむ!お主からは別の世界の匂いがするのじゃ!魂の色も濃くなっておる」
、、、、、、、、、は?
竜の言葉を聞いた瞬間、俺の頭は真っ白になるのだった。
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