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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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旅立ち



「さて、ダフネ。」と首席聖女はダフネの方を向いた。

「はい、首席聖女様!」

見習い聖女で終わったダフネは、首席聖女を近くで見ることはほとんどなかったので、緊張して返事を返した。


「あなたに関しては心配していません。もちろん良い意味でね。」

首席聖女はきっぱりと言った。

「そう申されますと、少し寂しい気もいたします。」

と、ダフネが返すと、首席聖女はダフネの手を取りしばらく目をつぶって言った。


「あなたは、あとしばらくは気持ちの面で落ち着かないかもしれないわね。けれど、モテて楽しそうだわ。青春ね……。」

「聖女様!? あの、それはどういう意味ですか? 未来が見えるのですか?」

ダフネが慌てて聞くと、首席聖女は目を開きにっこりと笑って言った。

「少しだけです。ダフネ、困ったときはいつでも相談にいらっしゃい。私はあなたの味方ですよ。」


「ありがとうございます、聖女様。」

ダフネは首席聖女の中に、かつての聖養母の面影を見たような気がして、目に涙が滲んできた。



「ガスパール、神殿にいるあなたには一番力になってあげられるかしら?」

首席聖女がそう言うと、ガスパールはにっこりと微笑んだ。


「はい、首席聖女様。私はゆくゆくは重職につき、もっと開かれた神殿を目指し改革を行っていきたいと思っております。何卒ご高配を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。」


ガスパールの言葉に、首席聖女はくすくすと笑った。

「あなた方はサーラの言う通り、それぞれが才能豊かで本当に興味深いわ。

ガスパール、まず私に依頼したいことは、ブイエ村の水源のことではなくて?」


ガスパールは首席聖女はそこまで知っているのかと驚いた。

まさに、ガスパールの中の第一の懸案事項はそこだった。ブイエ村の井戸の一つは毒性物質の汚染により使用できないままであった。

また、村の中心部にもう一つ残っている井戸についても、できれば早急に毒性物質の有無を監視するための手段、例えば検出する試薬や装置を開発したいところだった。


「おそらく、私とルナとユーゴが力を合わせれば、地中の水脈を動かして汚染しない位置までもっていくことができると思います。」


「そんなことができるのですか!?」


「ええ、私はこれでも首席聖女ですよ。

ルナ、ユーゴ、旅立つ前に、私といっしょにブイエ村に行ってくれるわね?

毒性物質の検出については、中央神殿の中に開発チームを立ち上げるよう、神官長に進言しましょう。」

ガスパールは嬉しさに顔を輝かせた。

ルナとユーゴ、ダフネは、そのガスパールの顔を見て晴れやかな気分になった。


「さあ、最後に皆でお互いを祝福しましょう。手を繋いで。」

五人は丸くなり手を繋いだ。

「神様の祝福が降り注ぎますように……。」

首席聖女の言葉を合図に、それぞれが目を閉じ、祈りと共に聖なる力を巡らせ受け取ったのだった。



 

 その後、ルナとユーゴは願った通りに、東の辺境領を拠点にして世界中を巡り歩いた。

遠く離れていても、神官長に貸し与えられた通信用の水晶玉があったので、神官長や、首席聖女、辺境伯家とやり取りができた。


また、後に辺境伯となったノア・ルーセル所蔵の書簡には、ルナからのものが数多くあったという。


時を経て、世界のあちらこちらで、神殿がない所でさえ、聖女や聖剣の伝説が残った。

しかしそれらは、ルナとユーゴのものであるかは不明である……。


        <了>


最後までお読みいただきありがとうございました。

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