謁見(2)
「ほう、それでは、近衛騎士団の騎士団長職はどうだ? それとも、国軍の将軍がよいだろうか?」
国王は余裕の顔でユーゴに問い続ける。
「神職としての栄誉を望むのであれば、宮廷司祭の座を新たに用意してもよいぞ。それとも国中外から美姫を集めて、めあわせようか? もちろん私から持参金をたっぷりと上乗せしよう。」
「陛下、そこまでになさっていただきたい。」
ユーゴに怒りの感情がこみ上げてきた。そして、それを抑えるために、硬く唇を引き結び、両手の拳を握った。
「なるほど…、聞いていた通り、そのルナという娘を気にいっているということか?確かに美しいがな。若さというものは…。」
国王がわざとらしくため息をついてみせた。
「よいか、聖剣の騎士ユーゴよ。よく考えてみよ。容色はいつかは衰える。傍に置く女なぞ、その時々で替えればよい。」
「ルナを私を、侮辱しないでいただきたい! 私が愛しているのは、ルナの魂だ!」
ユーゴの新緑の色の瞳が燃え上がるように輝いた。
「まあ、そう熱くなるな。それでは、どのような飴を出しても、私のものにはならないということか? それでは、どうしようかのう…?」
国王が不敵に笑みをもらし、右手をスッと上げた。
それを合図に、左右の扉から剣を抜き放った王宮騎士たちが部屋になだれ込んできた。
そして、すぐさまルナに手を伸ばし、拘束しようとした。
ユーゴは騎士たちの動きを見切り、体術であっと言う間に跳ね飛ばした。
そしてルナを自分の後ろにかばう体勢をとった。
バシルも素早く隠し持っていた短剣をぬき、構えた。長剣は王宮内の決まりとして携帯を許されてはいなかった。
そしてバシルは小さな笛を取り出し、力一杯吹いた。笛の音が大きく鋭く響き渡った。
「国王陛下、我ら東の辺境軍と騎士団を敵に回すおつもりか? すぐにでも一騎当千の者どもがこの部屋に参りますぞ。」
バシルが睨みをきかせ、すごみのある声を響かせた。
「やれ。」国王は不敵な笑みを浮かべたまま、命令を下した。
王宮騎士たちが飛び掛かってくる刹那、ユーゴは右手の中に聖剣を出現させた。ルナは後ろからユーゴの右肩に手を添えている。
そして、聖剣がまぶしく光を放ち、部屋の中を満たした。
光が収まると、王宮騎士たちはポカンとした顔をして、剣を下げていた。
そこへ、剣を抜いた辺境騎士団の騎士たち6人が部屋へ走りこんできた。王宮騎士たちはそれを遮ることなく、部屋へ入れた。辺境騎士団の騎士たちはすぐに状況を察知し、バシル、ユーゴとルナの周りを取り囲み、守りの体勢をとった。
パン、パン、パン、パン…、静まった部屋に拍手をする音が鳴り響いた。
ほとんど表情を変えていない国王が鳴らしていた…。
「皆のもの、剣を治めよ!」
バシルが高らかに言うと、王宮騎士たちはすぐにそれに従った。
それを見てから、辺境騎士団の騎士たちも剣を鞘に納めた。
「国王陛下、お人がお悪い。初めからユーゴに聖剣を使わせるおつもりでしたな?」
バシルは国王を睨みながらも、苦笑いを浮かべ言った。
「まあ、そう言うな。素直に願っても聖剣を見せてくれない気もしたのでな?」
国王が肩を少しすくませながら返した。




