謁見(1)
次の日ルナとユーゴは、聖女と聖騎士の正装に身を包み、辺境伯バシルは東の辺境軍最高司令官としての正装を身にまとった。また、ダフネはガスパールが用意してくれた神殿の聖女付き女官用の衣を着た。
バシルとユーゴは立派な馬に乗り、ルナとダフネは辺境伯家の紋章入りの馬車に乗った。そして、その前後をやはり正装をした騎乗の辺境騎士団の騎士たちが囲んだ。
勇壮な中にも華やかさがある一行の道行きは、王都の人々の目を集めた。そして王都の街を抜け、煌びやかで頑丈そうな門をいくつも抜け、ルナ達は王城の一角に到着した。
ルナとダフネは王城に足を踏み入れたのは初めてであり、ユーゴは神殿の遣いとして二、三回訪れたことがあるだけだった。
六人の辺境騎士団の騎士たちと共に、ルナたちは壮麗な大回廊を抜け、王城の奥へと進んでいった。
やがて国王謁見のための大きな控室で、騎士たちは待機するように言われた。
ルナたちは謁見の間を抜け、さらにいくつかの部屋を通ると、今度はダフネがそこで待つようにと言われた。
ルナは、正直に言えば、王城の中を進んでいくにつれ、どんどん心細くなってきていた。けれども昨日ガスパールが言ってくれた言葉を思い出し、ルナは顔をしっかりと上げ、ダフネの手を握り微笑んで言った。
「ダフネ、ありがとう…いってくるわね。」
ダフネは何も言わず、ルナの手を握り返した。
そして、ルナとユーゴ、バシルは豪華な装飾だが落ち着いた雰囲気の、やや広めの部屋に通された。
「お父さん、ここは…。」
「ああ、王のプライベートなエリアだ…。」
しばらく待っていると、
「国王陛下のお出ましでございます。」という侍従らしき男性の声と共に、立派な口髭をたくわえた壮年の男性が奥の扉から現れた。
ルナとユーゴは膝を折り、頭を下げ、神殿式の礼を取った。
「よい、頭を上げよ。」朗々した声が響いた。
ルナが顔を上げると、国王の隣に神官長と首席聖女が立っていた。
「神官長様、首席聖女様…。」
ルナとユーゴは再び神殿式の礼を取った。
「その礼といい、服装といい、そなたたちは未だ神殿に属しているということか?」
国王は単刀直入に聞いてきた。
ユーゴがちらっと神官長の方を目線を動かすと
国王は直ぐに「よい、直答を許す。」と言った。
「恐れながら申し上げます。私共は5歳で神殿に招かれたそのときより、神にお仕えいたしております。」
ユーゴが答えた。
「ほう? しばらく前にそなたと聖女ルナは神殿を抜け出したと聞いているが?」
国王が口の端でニヤリと笑った。
「神殿側からはお咎めなしか? 寛大なことだな…?」
国王が神官長へ向けて言葉をかけた。
「何のことでございましょう…。」
神官長は全く表情を動かさず返した。
「まあ、よいだろう。ユーゴ・ルーセルよ、
此度のイースター国との戦いでの働きは誠に見事であった。褒美として爵位と領地を与えようと考えておるが、いかがか…?」
「!?」
王の言葉を聞いて、バシルは内心自分の読みの甘さに舌打ちをした。まさか王が爵位を与えてまでユーゴを取り込もうとするとは予測していなかった。
「辺境伯バシル・ルーセルよ。それとも今の継嗣を廃して、このユーゴに後を継がせるつもりであったか? それならば、辺境領の領地を増やしてもよいが?」
「陛下、私は爵位や領地など要りません。父も兄を継嗣から外すことはありません。」
ユーゴが国王にはっきりと言った。




