召喚(2)
「神殿に戻れとは言わないの?」
ルナが恐る恐るガスパールに聞くと、ガスパールは少し寂しそうな顔で言った。
「もう言わない…。ユーゴの傍にいることがルナの幸せなんだろう? ユーゴもルナと一緒の方が聖剣の力を引き出せるようだしな…。」
「ガスパール…。」ルナが呟いた。
「ガスパール、あなた成長したのね…。」と、ダフネが呟いた。
「は!? 何だよ! その上から目線?!」
ガスパールが急に幼い頃のようになり、顔を赤くしてムキになった。
「いやいや、成長しましたよ。幼馴染としては嬉しい限りです…。」
ダフネは腕を組み、ふむふむと頷いた。
「俺はただ、神官としてやりたいことが定まっただけだ。世界は広い。俺を必要としてくれる場所はたくさんある、そう気づいただけだ…。」
「素晴らしいわ、ガスパール。幼馴染として、貴方を誇りに思うわ。」
ルナがガスパールの手を握り言った。
ガスパールは急に手を握られて狼狽した。しかし、すぐに微笑みながら言った。
「ありがとう、ルナ。これからもそう思ってもらえるように精進する…。」
その微笑みはどこか吹っ切れたような、爽やかなものだった…。
翌日、辺境伯バシル・ルーセルと、ユーゴ、ルナは慌ただしく王城へ向け出発した。
それよりも前、先行してガスパールは中央神殿に向け出発した。それは、ユーゴとルナのために国王謁見用の聖騎士と聖女の正装の衣装を、神官長の許しを得て準備をするためだった。
そして、それはガスパールの読みがあってのものだった。
その読みとは…、今回の召喚では〝聖剣とその持ち主であるユーゴ、その力を増幅させるルナを王宮に取り込む〟ということが国王の第一目的となるはずだろう。だから、それを避けるためには、辺境伯家の人間というよりは、独立権をもつ神殿の人間である、ということをアピールした方がよい…
というものだった。
そして、まだユーゴとルナは神殿側の人間である、ということをアピールするのは、神官長の意向にも沿うだろう…と、ガスパールはルナに話していた。
また、ダフネはルナに付き添いを申し出て、ルナといっしょの馬車に乗った。
当初はマージが侍女としてルナに付き添うことを強く希望していた。しかし、国王側がどう出てくるかがわからない以上、ユーゴとルナが無事に戻ってこられるという保証はなかった。だからルナはマージが付き添うことを許さなかった。
貴婦人としても、辺境伯家の大事な人としても、ルナを付き添いなしで行かせる訳にはいかない…、とマージは執事やダフネに相談した。
すると、ダフネは「じゃあ、私が行くわ。」とあっさりと言った。
「だって、私は一応聖女見習いとして、少しだけど聖女様のお付きについたこともあるしね。マージみたいに凝った髪型にしてあげることはできないけれど、今回は大丈夫でしょう…。」
ダフネが一緒にいてくれれば心強いことは確かだったので、申し訳ないと思いつつも、その気持ちに甘えたルナだった。




