召喚(1)
「ルナ、前に言ったことがあっただろう? 元々聖剣は神殿のものではなく、王家のものらしい、と。俺のような聖剣に選ばれる者が出たのは百年以上ぶりのことだから、曖昧なのだが、王家が聖剣とその騎士について権利を主張しに動きはじめたのだと思う…。」
ユーゴがルナに説明した。
「今回はルナさんと共にものすごい力を発揮してしまったからな…。」
バシルが呟いた。
「おそらく王家はルナさんも取り込もうとしてくるでしょうね…。」
ジョセフが冷静な口調で言った。
「ああ、我が辺境伯家と神殿と王家で、三つ巴だな。」
バシルがややシニカルな微笑みを浮かべて言った。
「申し訳ない。」「申し訳ありません。」
ユーゴとルナが声を揃えていった。
「いや、この国と辺境領を守ろうとしてくれた結果だ。謝罪などいらない。」
バシルが力強く返した。
「さて、そこであらためて二人に聞いておきたい。」
ユーゴ、ルナさん、これからどうしたい?」
バシルの問いかけに二人は互いを見つめた。
そしてまずルナが答えた。
「私はこれからもずっとユーゴの傍にいます。ユーゴの行くところに私も一緒に行きたいです。だから、神殿には戻りたくありません。」
次にユーゴが答えた。
「俺は、もっとルナに広い世界を見せてあげたいと考えています。お許しいただけるのであれば、ここを拠点に旅をしていきたい。もし家族や領地に何かあるときは必ず駆けつけます。」
ルナとユーゴの言葉にバシルは頷き言った。
「いいだろう。ユーゴ、ルナ、好きなときにここへ帰ってこい。」
「ジョセフ兄さん、兄さんをお支えできず申し訳ありません。」
ユーゴはジョセフに頭を下げた。
「いいんだ。ユーゴは家族なんだから、どこにいても私にとって心に支えになってくれる。ノアにとってもそうだ。もちろんルナさん、貴女もね…。」
ジョセフは噛みしめるように言った。
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
ルナの胸に温かいものがこみ上げてきた。
「さて、では明日急いで準備をして明後日には出発するとしよう。ぐずぐずしていると叛意があると取られかねないからな。
ジョセフ、留守を頼むぞ…。」
「はい。どうぞお気をつけて…。」
誰の目から見ても頼もしい辺境伯継嗣がそこにいた。
次の日、ユーゴとルナが王宮へ召喚されたと聞き、ダフネがガスパールを連れてルナの部屋へやってきた。
ガスパールは有能な神官らしく、王宮側の思惑を予測していた。
「それで、ルナたちはこれからどうしたいんだ?」
ガスパールは、バシルと同じことを聞いてきた。
「ごめんなさい。私は神殿には戻りたくはありません。ユーゴと一緒にいろいろなところに行ってみたいと思っています。」
即答したルナの言葉に、ダフネは心配そうにガスパールの顔を見た。
しかし、ガスパールの表情は平静さを保っていた。
「そうか…。」とガスパールが言うと、ルナとダフネは意外そうにガスパールの顔を見つめた。




