帰還(3)
ルナは自分に触れているノアの腕や頭の位置を感じ〝ノア、背が伸びたのね。〟と思った。
そして、ノアの後ろから、ジョセフが近づき、そっとノアの肩に手を添えた。
「ユーゴ、ルナさん。お疲れ様でした。ノアもとても頑張っていたのですよ…。」
ジョセフが優しくノアの肩をポンポンと叩き、ノアがやっと自分の身体を、ルナとユーゴから離した。
涙を手で拭い、ノアが言った。
「僕はもう大切な人がいなくなるのが嫌で。僕が頑張ったら神様がちゃんとお二人を返してくれるかもって、思っていたんです。」
そう言いながら、またノアの目に涙が溢れてきた。
「そうか、ありがとう、ノア。無事に帰ってこれたよ。」
ユーゴはノアの頭に手を置いた。
「ルナ、ユーゴ!!」
自分の順番を待っていたダフネだったが、ついにこらえ切れずに駆け寄った。
そして、ルナに抱きつき、ルナを抱きしめた。
「……、お帰り、ルナ。」
「ただいま…、ダフネ。」
親友の二人には、それで十分だった。
しばらくしてダフネは、少し離れた場所でルナとユーゴを見つめていたガスパールを呼んだ。
ガスパールは呼ばれると思っていなかったのか、「え!?」と声を出し、そのまま固まってしまった。
「もうっ。」と言いダフネがガスパールの手を引き、ルナとユーゴの前に連れてきた。
ガスパールは神官服ではない、シャツとベストというラフな格好をしていて、少し日に焼け、しっかりとした体つきになっていたので、ルナとユーゴは目を見張った。
「聖剣の騎士様、聖女様…。」と、それでも元々神殿での秩序を重んじていたガスパールは二人に膝を折り神殿式の挨拶をしようとしたが、
「はい、ストップ~!」
と、ダフネがガスパールの襟元をつかみ止めさせた。
「いろいろあるし、あったけど、今日は幼馴染の再会ってことにしない?」
ダフネの提案にルナが顔を輝かせた。
「それ、いいかも!?」
「いいな…。」ユーゴも同意した。
そして、昔やっていたように、四人で手をつないだ。そして誰からともなく四人で丸くなって肩を組んだ。ガスパールは最初は戸惑っていたが、
「昔と違って高さがガタガタだな…。」と微笑み、「お帰り、ユーゴ、ルナ。」と言った…。
後でダフネから聞いたところによると、
ガスパールは、ダフネを手伝い、戦時下の治療院の運営に手腕を発揮しただけでなく、ルナとダフネが気になっていた捕虜の待遇についても、辺境伯家側に改善案を申し入れ、そのために働いていたという…。
「本来の神官の仕事って、本当にこういうことかもしれないわね…。」というダフネの言葉にルナは頷いた。
城に帰ってから丸二日ほど、ルナは緊張の糸が切れたのか、ほとんどの時間は眠って過ごしていた。治療院の様子を見に行こうかと思ったが、日中でもすぐに瞼が重くなってきた。
三日目にようやく眠気やだるさが取れた頃、バシルから、ユーゴと共に来るようにと呼び出しがあった。
ユーゴと共にバシルの執務室へと向かう途中、ユーゴの顔が少し緊張していることがルナは気になった。
執務室に入ると、バシルとジョセフが二人を待っていた。
「ルナさん、体調の方はいかがかな?」
二人をソファに座らせ、自分もジョセフと共に向い合せで座った後、バシルが聞いてきた。
「お気遣いありがとうございます。もう大丈夫です。」
バシルはルナの返事を聞いて安心したように微笑んだ。
そして短く深呼吸を一つしてから口を開いた。
「王宮から二人に招待状が届いた。」
「やはり…。」ユーゴは驚かなかった。
「招待状という体裁をとってはいるが、事実上は逆らうことのできない命令というやつだ。」
ユーゴが頷いた。
「私ももちろん同行しよう。大事な息子と未来の娘だけで行かせることはできないからな…。」
「ありがとう。お父さん。」
二人のやり取りを聞いていたルナが口を開いた。
「あの…、神殿ではなく、王宮からの呼び出しなんですか?」
ラストまで、もう少しです。




