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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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帰還(1)


「居心地の良くないところで、人の手伝いに回るなんて、以前のガスパールからは考えられないな。あいつはプライドが高かったから…。」

と、ユーゴは感心したように言った。


「そうね…。」と、ルナも呟いた。

「まあ、お城にお戻りになられたら、いろいろ楽しみにご覧くださいませ。ノア様もすっかり逞しくなられていらっしゃいますし。」

と、マージは楽しそうに言った。


「そうだな、部隊の撤収もだいぶ進んできたし、隣国からこちらを偵察する気配もなくなってきた…。ルナ、そろそろ一緒に城へ戻ろうか?」

「本当?うれしい!早く皆に会いたいわ。」

マージの話を聞き、すっかり城への里心がついてしまったルナは、ユーゴの言葉に顔を輝かせた。

「でも、マージ、城に戻ると、トムとの二人きりの生活が終わってしまうわね。残念?」

と、ルナはマージに聞いた。

停戦後も引き続きトムはルナやユーゴの護衛として残ってくれていて、それぞれの任務や仕事はあるものの、ここで子どものロイがいない二人の生活時間を送っていたのだった。


「いえ、同僚にお願いしてきたロイのことも気になりますから…。」

と、マージは母親らしい顔をのぞかせた。


 真面目なユーゴはローガンへ帰還の許可をもらうべく使者を立てた。もちろん許可は出たが、帰還の際には城下町のはずれで一旦待機するように、との指示があった。

ユーゴとルナ、トムはそれぞれの馬に乗り、マージは馬車に乗り、トムを含めた護衛の騎士数人とゆっくりと城へ向かって進んでいった。


指定された城下町のはずれにある宿屋に到着し、居間に待機していると、ローガンがにこにこしながらやってきた。

「さあ、救国の英雄殿と救世の聖女様、パレードをしながらお城に戻りましょう!」

ローガンの言葉に、ルナとユーゴは固まった…。

「英雄…??」「救世…??」


何のことだかわからない…という顔をしている二人の前に、ローガンといっしょに来た城の副執事と従者が進み出た。

「お二人に相応しいお衣装を準備いたしました。お召し替えくださいますよう…。」

と副執事が言い、従者はユーゴを促し別室へ連れていった。


そして、いつの間にか白いドレスを手に抱えているマージがルナに声をかけた。

「ささっ、ルナ様もお召し替えをいたしましょうねっ。こちらへ。」

マージの横顔が輝いていた…。


 かくして、辺境領一番の仕立て屋が同業者に協力を要請し、それでも関係した多くのお針子たちが6日間睡眠時間を削りに削って仕上げたドレスと騎士服に身を包んだルナとユーゴが、宿屋の居間に出現した。


ルナのドレスは聖女が神殿での式典で身につける、ウエストでの切りかえしがない形のものだった。そして白く光沢のある生地で裾や袖、肩の部分に金糸銀糸、緑や青い糸で刺繍が施されていた。ユーゴの騎士服も白い生地で仕立ててあり、刺繍の意匠がルナのドレスと同じものが使われていた。


「まあ、私たちお揃いなのね…。」

ルナはユーゴの姿を見て、とてもうれしそうに顔をほころばせた。

ユーゴはルナのそのルナの輝くような笑顔を見て、

「ルナ、とってもきれいだ…」と呟くやいなや、ルナの右手を引いて、「少し、時間をくれ!」と皆に言い、勢いよく宿屋の玄関へと歩いていった。


 ユーゴが玄関の扉を開けると、目の前の通り一杯にすでに大勢の騎士や馬や従騎士、兵士たちがいた。

「だめだ…。」

ユーゴがつぶやき、すぐに扉を閉め、ルナの手を引いたまま、また廊下を戻り裏口の方へと歩いていった。

「ユーゴ?、どこかへ行くの?」

ルナはユーゴに聞くが、ユーゴは答えなかった。


そして、宿屋の裏口から外に出ると、そこには庭があり、宿屋の主人たちが丹精を込めているのか、手入れされた庭木が植えられ、花も咲いていた。

そしてようやくユーゴはルナの手を離した。



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