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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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交渉(2)

「ユーゴ、力を貸してください。」

ルナがユーゴに言うと、ユーゴは静かに頷いた。

そして二人とも馬上のままで手をつないだ。

ユーゴはまた右手に聖剣を出現させた。いきなり出現した光輝く聖剣に、兵士たちがどよめく。


そして、ルナが目を閉じ、静かに空いている左手を振り上げ、負傷した人たちに向けた。すると、聖剣とユーゴとルナの身体が光に包まれ、その光がルナの左手からほとばしり、負傷者一人一人に届いた。そして一人一人が輝いたかと思うと、それぞれの傷がふさがっていた。


その場にいた人々すべてがどよめき、歓声を挙げた。

年若い青年も、肩に手を当て、〝あれ?〟という顔をした後、歓喜の表情を浮かべ、その場でぴょんぴょんと元気に飛び跳ねた。


歓声がこだまする中、ルナとユーゴは粛々と川の中央、ローガンたちがいる場所へ戻っていった。


ローガンはその二人の姿を見て、〝さっきのユーゴの言葉といい、ルナさんといい、二人にとっては、〝敵〟はいないんだな…。〟と思った。

〝通常の交渉としては、カードをきり過ぎだが、まあこうして恩を売りまくっておくのもいいだろう…。〟と、あくまでも現実的なローガンであった。


ともあれ、停戦は成立することとなり、あらためて正式な停戦についての交渉をすることを約束する文書を両軍は交わした。


しかし、大胆ではあるが、慎重なところもあるローガンは、国境付近に兵力を十分残しつつ、何回にも分けての撤収を指示した。


「申し訳ないが、ユーゴ様とルナ様は後半の帰還でお願いします。国境付近を二人そろって馬でも馬車ででもちゃらちゃらと姿を見せながら動き回ってもらってもよいですか?」

ローガンの言葉に、

「ローガン団長…、言い方……。」

とユーゴは少し呆れた。しかし、自分たちの姿を見せることで、隣国への牽制になるのであれば、ルナと共に国境で過ごすことはやぶさかではなかった。


「では、ルナに新しい乗馬服を頼む。強行軍であちこち傷んでしまっているようだから…。」

ユーゴはローガンに言った。

「お!? 今のはよい交渉ですね…。結構です、侍女を馬車やルナ様の服と共に寄こさせましょう。」

ローガンはニヤリと笑い言った。


〝食えない男だが、ローガンが辺境領を支えてくれる限り、心配ないな。〟と改めてユーゴは思った。


その3日後にマージがたくさんの服を携えて馬車で到着した。その頃ルナとユーゴは国境の村の村長の家を一時的に借り受けて過ごさせてもらっていた。

マージは馬車を降りるなり、出迎えたルナを半泣きで抱きしめながら、「よかったです。ルナさま…。」と、何度も何度も言った。


マージは早速張り切ってルナの世話を始め、ルナの髪の手入れは殊の外熱心にしたので、

染粉で少し傷んでいたルナの銀髪もすぐに元の輝きを取り戻していった。


「お城はどんな様子なの?」

ある日、日課であるユーゴと一緒のホール川沿いの乗馬デート(??)を済ませた後、ルナはお茶をいただきながらマージと話した。ユーゴはルナの傍らにいてくつろぎながら二人の話を聞いていた。


「戦後処理で皆いそがしくしておりますが、よい雰囲気ですわ。ルナ様がこちらで負傷者を癒してから帰還させているお陰で、治療院の負担はだいぶ減っているようです。」


「よかった…。ダフネは変わりない? ガスパールは、あれからすぐに城を出たのかしら?」

ユーゴがガスパールの名前を聞き、わずかに反応した。ガスパールの来訪や水晶玉、神官長の言葉などについては、ユーゴはルナから聞いていた。


「ダフネさんはお変わりありません。

神官のガスパールさんは…、まだお城にいらっしゃいます。

ダフネさんのお手伝いを積極的になさっていますわ…。」

マージの言葉にルナとユーゴは驚いた。


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