交渉(1)
そして、ユーゴとルナの馬を引いてくるようにトムに命じ、ユーゴへ近づいた。
「ユーゴ様、聖剣は敵味方関係なく戦意を喪失させるのですね?」
「ああ、そのようだ。俺も驚いた。ルナのお陰だ。」
「わかりました。」ローガンはニヤリと笑いながら続けた。
「ここでしっかりと停戦にもっていきます。そのために貴方とルナさんに旗印になってもらいます。よろしいかな?」
「ああ、戦いを終わらせるためならば、是非もない…。」
そこへルナが戻ってきた。
「騎士団長!」
ルナへローガンは微笑んで言った。
「ルナさん、ありがとう。両国の平和のために、今しばらくご協力ください。」
「はい!わかりました!」
協力と言ってもよくはわからないが、聖剣から貰ったエネルギーが身体に満ちていて、返事がとてもよいルナだった。
ローガンとユーゴ、ルナはそれぞれ騎乗し、川が浅くなっている部分の中央へ進んだ。
そしてローガンが大陸共通語で声を張り上げた。
『私は、総指揮官のローガン・ミュレー! イースター軍の指揮官はおわすか?!』
すると、立派な駿馬にまたがった偉丈夫が進み出てきた。その後ろには4騎の武装した騎士が従っていた。いずれも緊張はしているが、静かな表情をしていた。
「ほんとに聖剣はすごいな…。」
つい先ほどまでギリギリの命のやり取りしていた状況に全く似つかわしくない雰囲気に、ローガンは呟いた。
『私はイースター国の王弟、フランツ・イースターだ…。』
先頭の人物が口を開いた。強い閃光を浴びた途端、戦意が全くなくなってしまった自分がよくわからず、まだ混乱している気配が目の表情からうかがえた。
『王弟殿下、ここは停戦ということで、よろしいかな?』
ローガンは落ち着いた重々しい口調で聞いた。
「…!?」
このような場で停戦を持ちかけられるとは思っていなかったのであろう、王弟は息を飲んだ。
『もう戦いにはなりますまい。何しろこちらには覚醒された聖剣の騎士と、聖女様がいらっしゃいます! 聖剣の偉大なる力は、御身がご存じでありましょう!?』
ローガンの口上に、〝すごいわ…騎士団長。初めからこの場に居たみたい…。〟と、ルナは感心した。
『王弟殿下、貴国の窮状は存じております。この冬は我が辺境領からも食料の援助をいたしましょう。辺境伯が三男、このユーゴ・ルーセルがお約束いたします。』
ユーゴも落ち着いた口調で言った。
『なんと、攻め入った我が国にそこまでのご厚情を…。』
ユーゴの言葉にフランツは感じ入った表情を受かべた。
『聖女のルナと申します。私も落ち着いたら、ぜひ貴国を訪問させてください。
でも、その前に負傷した方々に、癒しの業を…。』
ルナはそう言うやいなや、愛馬のシルフィと共に王弟フランツの横を微笑みながら通り、対岸の隣国の兵士や騎士たちが居並ぶ川岸近くまで進んでいった。
ユーゴもすぐにルナの隣についた。
『皆さん、今から〝癒しの業〟を施しますので負傷した方は前へ出てきてください。』
ルナが言った言葉を理解できる騎士や将校たちが、兵士たちに隣国の言葉に直し伝えた。
[癒しの業??][聖女って言っていたぞ。][さっきの光った人だろう??][治してくれるのか?!]
隣国の兵士たちがざわめいた。
そして、仲間の兵士たちに助けられながら、十数名がよろよろと痛みに耐えながら進み出てきたり、板に乗せられ水際まで運ばれてきた。
その中に、ルナが戦闘中に見かけた年若い兵士が、血で真っ赤に染まった肩を抑えてようやく立っているような姿を見つけた。




