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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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戦場の河原(3)

ルナが木立の中から走り出すのと同時に、反応が速い味方の騎士5騎も飛び出し、素早くユーゴを囲んだ。即座に剣を抜き矢を払い、じわじわと近づいてくる敵兵たちを、大声を出しながら威嚇した。


ユーゴは味方の騎士たちに向かって叫んだ。

「ルナを守れ!」

騎士の何人かはすぐにユーゴの指示を理解し、ルナに矢が当たらないよう援護に入った。


もう少しでユーゴがいる場所に着くというところで、ルナは足元の石につまずき転んでしまった。したたかに膝を打ち手をついてしまったのに、痛さは感じなかった。


ルナは立ち上がったところで、川の中央の隊列の端に、盾の隙間から除く敵兵の顔が見えた。

それは、ノアより少し年上のまだ年若い青年だった。その表情は恐怖におののいていた。

次の瞬間、その青年が川底の石に足を取られたのか、急に体勢を崩し列から外れてしまった。

途端にその青年に向けて味方からの矢が飛んできた。青年は叫び声を上げながら慌てて水しぶきを激しく上げ、盾を掲げようとした。しかし、体のどこかに矢が命中したのか大きな音を立て水の中に倒れこんだ。


ルナはそれを見て、唇を強く噛んだ。

〝戦いを、終わらせなきゃ!〟


ルナを何かの衝動が突き動かした。そしてルナは再び走り出し、ユーゴの元に辿りつき、ユーゴの胴体に抱きついた。

「ルナ、なんてまねを!」

ユーゴは自分の体に触れているルナの手の平から血が出ていることに気がついた。

しかし、ルナは擦り傷がついた顔でユーゴを見上げ、はっきりと言った。


「ユーゴ!!聖剣を掲げて!」

「ルナ!?何を!?」

「心を合わせれば、もっと聖剣の力が発揮できる!」

「は!?」

「神官長様が教えてくれたの!」


ユーゴはルナが何を言っているのかわからなかった。

しかし、ルナが自分の右手に添える手からは温かな力が流れ込んでくるのがわかった。

そして、聖剣がまるで鼓動を打つようにリズムを刻み光輝き出した。

それはまるで聖剣が〝自分に任せろ〟とでも言っているようだった。


ユーゴはルナと一緒に聖剣を天に向けて掲げた。

ルナがユーゴに言った。

「一緒に祈って! 戦いが終わるように!」


ルナとユーゴは、強く強く天に願った。

〝戦いが終わるように。世界に、人々に、平安を…。〟と。


聖剣から、太陽が地上に出現したかのような目も眩む光が放たれた。

ルナとユーゴがあまりの眩しさに目を閉じた。そして真っ白になった視界がようやく戻ると…、川面と河原は静寂に包まれ、川のせせらぎの音だけが響いていた。


見渡す限りの騎士も兵士も、敵も味方も、武器や盾を降ろし、ぽかんとした顔をしていた。そして、「俺たち、なんでこんなところにいるんだ?」「何をやっているんだ?」などと口々に言い始めた。


ルナとユーゴは顔を見合わせ、微笑みあった。

「ユーゴ、大丈夫? 何ともない?」

「ああ、大丈夫だ。」

一応聞いてみたものの、ルナには聖剣とユーゴと、一つになった感覚、つながった感覚がまだ残っており、自分と同じようにユーゴもエネルギーで満たされていることがわかっていた。

自分の細かい傷も膝の打ち身も、ユーゴの足も一瞬で治ってしまっていた。


「皆さん、戦いは終わりです。怪我をした人たちに手を貸してあげてください。」

ルナが敵にも味方にも声をかけていった。


すると、皆、我に返ったように、盾や弓を置き、まわりの怪我をしている同僚たちを助け起こしたり、肩を貸し、元の岸辺へ戻り始めた。


対岸の騎士や兵士たちも、川から上がりだした兵士を手伝っている。


 そこへ、ローガンが本隊の先頭をきって馬で到着した。

ローガンを始め、先頭集団の騎士たちは、すぐにでも戦えるように抜刀していた。

しかし、戦闘が完全に停止し、敵も味方もまるで訓練か何かが終わった後のように、平穏な雰囲気で撤収しかかっているのを見て、あっけにとられた。


「これは、一体…?!」

ローガンがつぶやいていると、トムがローガンの元へ駆け寄ってきた。

「団長!ユーゴ様とルナ様がっ、剣で、ぴかっと光ったら、戦いが終わりました!」

と、興奮しながら言った。

「トム、お前、いい年して言葉が崩壊していないか?」

と、ローガンは思わず返したが、〝到着前に木の間から光ったあの光か?〟と直感的に思った。


そして、ルナとユーゴが何か途轍もないもないことをしたのだろうと、素早く彼なりに理解をした。


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