言づて(3)
「フォフォフォ…。」
独特な笑い声で小さな神官長が笑い声を立てた。神官長の笑い声を聞いたのは、ルナにとって初めてのことだった。
「面白いだろう? どんな魔法か知らないが、遠くにいる人間とやり取りできるなんてな…。」
バシルも笑いながら言った。
「ルナ。だいぶ修行を重ねたようだな…。」
小さな神官長が笑うのを止め、しみじみと言った。
「はい、ご無沙汰をいたしております…?」
ルナがとまどいながら返した。
「ぷっ。」バシルが机の向こうの椅子に座ったところで、ルナの挨拶を聞きふき出した。
「脱走している身で、〝ご無沙汰〟もないだろうに…。」とつぶやいているが、ルナは聞かなかったことにした。
「ルナよ、そなたに申し伝えたいことがある…。」
神官長は、神殿でのいつもの重々しい口調になり、ルナに言った。
「はい、神官長様。」
ルナも聖女の顔になり、真っすぐな碧い瞳を向けた。
「ユーゴが足を負傷しているようだ。」
「え!?」
ルナとバシルは息をのんだ。
「恐れながら…。神官長様には何故そのようなことがおわかりになるのですか?」
「聖剣が、主の危機を我に教えてくれた…。ユーゴが聖剣に選ばれたということは、聖剣自身も長い眠りから目覚めた…ということでな。我は聖剣に働きかけをして、聖剣の〝友〟にしてもらったのだ…。」
〝聖剣の〝友〟になる、そんなことができるのか…!?〟とルナは思った。
「友となった我にユーゴの窮状を聖剣が伝えてきた。」
「窮状…!? ユーゴの怪我はひどいのですか?」
「いやそこまでではなさそうだ。聖剣は言葉ではなく、一瞬の映像や感覚を勝手に我に送り付けてくるからのう…。」
ユーゴの怪我はひどくはなさそうだ、と聞き、ルナはそっと小さな息をはいた。
「これも詳細は不明だが、聖剣がルナにユーゴの元へ来いと言っておるのだ…。」
「え!?」
「関連があるかわからんが、騎士ともう一人が共に聖剣をかかげていると、聖剣から光らしきものが放たれている絵が描かれている羊皮紙も発見されていてな…。聖女か神官の存在が聖剣の力を発揮するのを助けるかもしれないのだよ。」
「らしい、とか、わからないが、とか、そんなのばっかりではありませんか…!?」
ルナはついに、神官長を責めるような口調で言ってしまった。
しかし、「すまんな、ルナよ。」
と神官長は詫びの言葉を言った。
ルナが一つ深呼吸をした。
「神官長様、私、ユーゴのところに行きます。」
「うむ…。いとし子よ。そなたに神の祝福を…。」
小さい神官長がルナに向けて手をかざしたかと思うと、ルナへ温かな力が流れ込んできた。
「ありがとうございます…。」
ルナが礼を言うと、神官長はわずかに頷き、その後その姿は水晶玉に吸い込まれていき、水晶玉の光も消えた。
「神官長様と、一生分お話した気がする…。」
ルナはつぶやいた。




