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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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言づて(2)

「ほう?そなたは神官か? 神殿とは緊張状態にあるこの辺境領へ単身乗り込んでくるとは、いい度胸だ。名は何という?」

バシルが、右側の眉を上げ、鋭い眼差しで言った。


「ガスパールと申します。」

ガスパールは、その場ですっと立ち上がり言った。

「ガスパール? もしや、ブイエ村にしばらく張り付いていた神官か?」

「はい…。」

「そうか、我が領民が世話になったようだな。…そなたの話であれば、聞かねばなるまい。ついてこい。

ジョセフ、治療院をもう少し見て回っておいてくれ。」

バシルが身を翻し、ガスパールがついて行った。


〝あれが、ダフネがよく話していた幼馴染のガスパールか…。〟

ジョセフはガスパールの背中を興味深く見送った。ガスパールは神殿にいる神官より、日に焼け、筋肉のついたしっかりとした体つきをしていた。

〝本当に村人のために立ち働いていたのかもしれないな…?〟とジョセフは思った。


半日してルナが回復すると、マージがルナに「ご領主様が、回復次第、執務室へ来るようにとおっしゃっています。」と言った。


ルナがバシルに急に呼び出されるなど、初めてのことだった。ルナはいそいで身支度をして、執務室へ向かった。マージがルナにつき従った。


執務室へ着くと、バシルは、マージへ扉を開けたままにして扉の傍に控えているように命じた。

バシルはルナに「ユーゴから聞いているのだが、防音の結界をかけてもらえるか?」と小声で言った。

「はい。」ルナはすぐに防音の結界をかけた。

〝もしやユーゴに何かあったのかしら?〟とルナの胸に不安がよぎった。


「実は中央神殿から、言づてがあった。」

「え? ガスパールが言づてを持ってきたのですか?」


「ああ、そうだ、普通の言づてではなく、これだった…。」

そう言い、箱に入ったバシルの手のひらに丁度おさまる大きさの水晶玉を取り出した。


「これは…?」

「これをガスパールが神官長からだと言って持ってきてな。」

「はあ…?」


〝神殿から辺境伯家への贈り物なのかしら??〟

ルナが的はずれなことを考えていると、

「説明が難しいな…。論より証拠だ。」

と言い、バシルは、水晶玉を箱から取り出しルナに渡した。


「ルナさん、それに聖なる力とやらを少し流してくれ。」

「は、はい…?」

ルナは言われるがまま、水晶玉を両手で持ち、少し聖なる力を込めた。

水晶玉はぼっと白く光ったが、すぐにその光は収まった。


〝??…〟

ルナが首をかしげ、バシルの方を見ると、

「少し待っていよう。面白いことが起きるから。」と、バシルがいたずらっぽい表情をして言った。


「面白いこと、ですか…?」

ルナがソファに座り、膝の上で水晶玉を支えながら持っていると、

しばらくして水晶玉が上方に淡い白い光を放ち出した。


「わぁ!」とルナが白い美しい光に目を奪われていると、その光はみるみるうちに水晶玉の上で、水晶玉よりやや大きいサイズの白い人型を形作った。


「神官長様?!」

その小さな人型は、長く白いひげをたくわえ、ローブを着た神官長の姿をしていた。


「聖女ルナよ…。」

その白く輝く小さな人型がルナに向け、話しかけてきた。

「えっ!?ホントの神官長様?!」

ルナは驚いて、立ち上がり、水晶玉を落としそうになったが危うくこらえた。


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