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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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次々と

 一晩眠るとルナは回復し、マージの心配をよそに治療院で朝から立ち働いていた。

「ルナ姉さま、ルナ姉さまは座っていてください。今日は僕がルナ姉さまの手足になります。」

ノアは、昨日ルナが倒れたと聞きつけていたので、ルナに近づいてきて言った。


「ノア、ありがとう。でも大丈夫よ。」

ルナは微笑んでノアに返した。そして、

「ほら、朝食が運ばれてきたわ、皆さんに配りましょう。」

と、ロイにも声をかけて配膳に取り掛かった。


 そこへ「たった今帰還した負傷者だ! 頼む!」と、戸板に乗せられて一人の兵士がホールへ運び込まれてきた。

ダフネがすぐに戸板に近づき、状態を確認した。

兵士は肩を負傷していた。そして、昨日の捕虜程ではないが発熱もしているようだった。


この二、三日、負傷者の傷の深さや運ばれてくるまでの時間の長さが明らかに悪化してきていた。それはすなわち戦況の悪化を意味していた。


戸板を持っていた男が戸板の上で痛みにうめいている兵士に声をかけた。

「ジッド!治療院についたぞ!手当してもらおうな!?」


ジッドと呼ばれた負傷兵が、その声に反応して、男の方へ目を開けて顔を見ようとした。

次の瞬間、ジッドは白目を向き身体を強張らせ痙攣し始めた。


戸板を持っている四人の男たちの一人が驚き、戸板から手を放しそうになった。


「だめだ、手を離すな!」

いつの間にか戸板のそばに来ていた旅姿の男が、とっさに戸板を支えた。

「静かに!そっと下に降ろすんだ。」

旅姿の男が冷静に支持を出し、痙攣しているジッドを乗せている戸板を皆で息を合わせてそっと床に降ろした。


ダフネは、ジッドの全身の様子を確認しながら、頭部の方へ回り気道を確保しようとした。

しかし、いち早く旅姿の男が頭部の方へ回りこみ、ジッドの下顎を両手で持ち引き上げた。

「ダフネ、こっちは任せろ。」男がダフネに言った。


ダフネが反射的に顔を上げて見ると、旅姿の男は…ガスパールだった。

「「ガスパール!?」」

ダフネと、駆けつけたルナが同時に声を上げた。


「ダフネ!痙攣を治める薬はないのか?!」

ガスパールが声を上げた。

「ルナ、緊急用の薬品箱にホミの抽出液があるからもってきて!」

「はい。」ルナはホールに設置された薬品用の棚にある箱から、小瓶と小さな薬用のさじを取り出し、ダフネに持っていった。

ダフネは小瓶からさじに薬液を出し、慎重に1滴ずつジッドの鼻の穴に垂らした。


しかし、痙攣は収まらなかった。ジッドは白目を向いたまま、顔色も悪いままだった。

「ルナ…、業を…お願いしてもいいかしら?」

ダフネが引き絞るような声でルナに言った。

「はい。もちろんよ。」


「いいのか!? ルナ! こんな所で!?」

ガスパールが、声を上げたが、ルナは答えた。

「ええ、私の務めですもの…。」


ルナはひざまずき、痙攣し続けているジッドの肩に手を置き、目を閉じた。

ジッドの身体が光に包まれ、その光が収まった後、彼の痙攣は止まり、呼吸も通常のものになっていた。

ジッドがゆっくりと目を開け、「あれ? ここは?」と呟いた。


戸板を囲んでいた男たちは、ジッドの身体が光に包まれたのをあっけにとられて見ていたが、我に返り、口々に言った。

「ジッド~!」「よかった!」「わかるか!?」


しかし、ルナは戸板のそばから立ち上がり、ふらふらと一歩二歩と後ずさった。

そこへノアとロイが素早くルナに近づき、両脇からルナを支え、そして近くのベッドにルナを腰掛けさせた。


ルナは、意識は失わなかったものの、顔色がひどく悪くなっていた。


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