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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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勃発

ルナが、〝ずっと一緒にいたい〟と言ってくれた日から、ユーゴは聖剣の持つ力を本気で検証してみようと思うようになった。自分たちがいずれ自由を手に入れるために神殿側と交渉をするにも、聖剣について把握することは必要だと思ったからだった。


辺境騎士団の団長であるローガンに聖剣について話すと、少し驚いた顔をした後、しっかりと協力を申し出てくれた。

あまり驚かないローガンを、ユーゴは意外に思い、聞いた。

「なんだ、団長殿はあまり驚かれないんですね?」


ローガンは、破顔一笑し、言った。

「貴方は自分の体術と剣術を外から見れないですからね。

訓練で模擬戦をやっている時でさえ、あなたから感じる気は何やらまぶしく感じるときがあるんですよ。だから、驚くというよりは、納得しました。」


そして、ローガンは口の堅い団員5人を推薦してくれた。ユーゴの持つ剣は聖剣だということは明かさずに、模擬戦に協力してもらった。


ユーゴは、ルナが聖剣を触った後から、聖剣とわずかにだが、感覚で交流できるようになったと感じていた。

聖剣は、神の意志が反映されているからなのか、人を攻撃するときは、まったくの普通の剣だった。

しかし、ユーゴがふと思い立ち、相手と対峙したときに、〝戦いよ、終われ。〟と念じると、聖剣から相手の剣へ光が放たれ、相手の手がしびれ、剣が一定時間持てなくなる…という現象が起きた。


〝なるほど、聖剣はやはり争いを避ける方向に力を発揮するのか…。〟

聖剣の力を一つ見つけることができたが、まだまだ他に力は眠っているような気がするユーゴだった。



 そして、ルナの銀髪が肩を超えてだいぶ伸びた頃、東の辺境領の平和は突如として破られた。


辺境領に接している隣国イースターは昔から痩せている土地が広がり、これといった産業もない貧しい国だった。それが今年は極端な日照りが続き、小麦の収穫量が著しく減ったという情報は流れていた。


辺境伯バシル・ルーセルの元へ、その隣国が国境沿いの村に兵を終結させつつあるという情報を携えて、辺境騎士団の偵察員が、週一回の夕食の場へ飛び込んできた。


「皆、楽しい団らんのときは終わったようだ。」

バシルが重々しく言った。

その場にいた皆に緊張の色が走った。


「騎士団長、直ちに出陣の準備を始めよ。ジョセフ、引き続き全力を挙げて情報収集に努めよ。ユーゴ、先陣をきってもらうぞ。

ノア、あらゆることを、よく見ておけ。すべてのことがお前の糧になるだろう。」

バシルは、矢継ぎ早に支持を飛ばした。


ルナはダフネの元へ素早く歩み寄り、ダフネと頷きあった。

そして、バシルに向け、ルナは言った。

「ルーセル卿、私たちは負傷者のための治療院の準備をします。」

バシルは静かな瞳で「頼む。」と返した。


「それでは皆、それぞれの場で力を尽くそう!」

「おう!」「はい!」と、バシルの声にそれぞれが答え、足早にディナールームを後にした。


ルナとダフネの元へ、ノアが駆け寄ってきた。

「ルナ姉さま、僕に治療院のお手伝いをさせてください! 僕も、見るだけでなく、できることをやりたいのです。」

と、ノアが真っすぐな、新緑の色をした瞳で力強く言った。


〝『できることをする』、そうだ、そうしよう…〟

ルナは、ノアの言葉を聞き、思いを新たにした。

「ノア、一緒に頑張りましょう。」とノアに返し、ダフネと再び大きく頷きあった。


 

 その後、城内の薬草保管庫で、ルナとダフネは薬草の在庫の確認をしていた。

そこへ戦闘用の支度を終えたユーゴが訪れた。


「私はちょっと休憩してくるわ…。」

ダフネが気をきかせてくれた。


ユーゴがルナの手をとり静かに言った。

「ルナ、ここからは『君の好きにしていい』から…。」

それは、神殿を出る前にユーゴが言っていた二人の区切りとなる言葉だった。


ルナは首を振った。

「私はここにいる。ユーゴの帰りを待っているから…。」

「うん…。でも、俺に何かあったときは、ジョセフ兄さんとダフネに相談して…。」


「はい。」こくこくと頷きながら、ルナの目には大粒の涙が溢れてきた。

「ルナ…、ここを、君を守るから…。」

ユーゴはそう言いながら、優しくルナの涙を指で拭い、ルナを抱きしめた。


そして、身を翻がえし、保管庫を出て行った。



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