ユーゴの秘密(2)
ユーゴは、ルナがよく見えるように剣を横にして差し出した。
「なんて美しい剣なの…。」
ルナは立ち上がって聖剣を見つめ、感嘆の声を上げた。
聖剣は、抜き身で、白銀に輝く刀身からは聖なる気が放たれているように感じられた。
そして、柄の部分は少し黄金の色が混じった銀色をしていた。
神殿に聖剣とよばれる剣が存在していて、ごくまれに聖剣に選ばれる騎士がいる…と、いうことは伝説のように、ルナも耳にしていた。
「ただの伝説か、神話のようなものだと思っていたわ。」
「ああ、俺もだ。実は神殿には三振の聖剣があるらしい。
騎士になって3年目に、一人ずつ聖剣が安置されている場所の前室に入って、祈りを捧げるという儀式をするんだ。この百年間は誰にも何も起こらなかったらしいのだが。
俺が祈りを捧げたら、この剣が突然目の前に現れた。」
「それって…。」
「ああ、何故かわからないが、この聖剣に選ばれたらしい…。神殿でもこのことは、ごく限られたものしか知らない。」
「でも、すごいわ! ユーゴが聖剣の騎士になっていたなんて!?」
ルナは顔を輝かせて、うれしそうに言った。
「ルナにそう言ってもらえると、うれしい気がしてきた…。」
「え?」
「〝聖剣に選ばれる〟ということは、あまりに稀なことらしくて、細かいことは全然わからないんだ。自分で確かめたり、分かっているのは、剣を好きな時に手にしたり消したりできるということ、聖なる気を練るときに剣が助けになっていること…くらいかな?
言い伝えでは、聖剣らしい力もあるらしいのだが、これについても不明だ…。
それから、聖剣は元々は王家のものという伝承もある。もし俺が聖剣の騎士になったことを公にすれば、王家から俺と神殿へ何かの圧力があるかもしれないということで、神官長はこのことは伏せるように、と言われたんだ…。」
「そうなの。いろいろと複雑なのね…。」
「だから、聖女としてのルナだけではなく、この聖剣という宝も、神殿は取り戻したがっているはずなんだ…。」
「それにしても、よくユーゴを選んでくれました。聖剣さんはお目が高いのね。」
ルナがそっと聖剣に手を触れつぶやくと、聖剣の刀身が一瞬光を放った。
「わぁ…。」放たれた光の美しさにルナは見入った。
「反応した?」ユーゴはルナの言葉に反応したかのように剣が光ったことに驚いた。
少しして、ユーゴは聖剣を消した。
ルナは、現れたときのように一瞬で剣が消えたので、また目を丸くして驚いた。
「持ち運ぶには、とっても便利ね…。」
ルナの言葉に、ユーゴは笑った。
そして、ユーゴはふと真顔になって言った。
「神殿から長期間離れていたら、もしかしたら聖剣は俺から離れて神殿へ戻るかもしれないと期待していた。けれど、そうはならないらしい…。俺と一緒にいると、ルナは自由になりづらいかもしれない。
だから…。」
ユーゴの唇に、ルナの細い指が触れた。
「言わないで。私はユーゴとずっと一緒がいい。ユーゴが何者でも、何を持っていてもいなくても、私は、ユーゴのことが大好きだから…。」
「ルナ…。」
ユーゴは、唇に触れたルナの手を取り、そしてルナを抱きしめた。
「愛している。」
ユーゴはそっと囁き、ルナの唇に口付けを落とした。
初めての遠乗りは、ルナにとって一生忘れることのできない大切な思い出となった。




