ユーゴの秘密(1)
ある日、ルナは、ユーゴから念願の遠乗りに誘われた。
ルナの乗馬技術も順調に上達し、馬術の基本はほぼ習得することができた。最近は馬を速く走らせる襲歩を習い始めたところだった。
「え!?いいの?」
「ああ、いつも馬場を走るだけでは退屈だろう? お父さんには外出の許可をもらったからな。明日朝ノアの練習が終わったら出かけよう。マージに昼食を用意してもらうように頼んでおいてくれるか?」
ルナは、とても喜び、マージに伝えた。
「マージ、初の遠乗りよ。シルフィと初めて出かけることができるわ!」
「ルナ様、愛馬と初めての遠乗りというのも喜ばしいことですが…。それより! この城に来てからユーゴ様との初の外出なのでは?!」
マージは、〝めっ〟とルナをたしなめるような顔をして言った。
「そう言えば、そう、ね…?」
ユーゴのことを一人の男性として好きなんだ、とルナが自覚してからは、二人きりでゆっくり過ごすのは初めてのことになる。
ルナがそのことに気づいて、少し頬を赤らめたのを、マージは微笑ましく見つめた。
「そうですよ。では、明日はとびきり気合を入れて髪も整えさせていただきますね。」
「そんな、マージ、気合を入れなくても…。」
「いいえ、ルナ様、これは侍女としての、私の心意気というものですわ!」
マージが胸を張るのを、今度はルナが微笑ましく見た。
「ありがとう、マージ。」
翌朝、ノアの練習は早めに切り上げられ、ユーゴとルナは遠乗りに出発した。ノアは少し寂しそうに二人を見送った。
二人はゆっくりと馬を進めていった。
「ユーゴ、今日はどこへ行くの?」
「城下町を外れたところに、花畑がある丘を見つけた。そこへ行こうと思う。」
しばらくして辿りついた丘には、大きな木が一本立っていて。その丘の南側の斜面には、青い小花が一面に広がっていた。
「わ~すごい!!私、花畑を見るのは初めて!」
ルナが歓声を上げた。
「そうだろう? ルナに見せたかったんだ。」
「うれしいわ。ユーゴ。」
ルナの微笑みをユーゴは眩しそうに見つめた。
それから、木の下で二人は持ってきた軽食を食べながら、いろいろなことを話した。
楽しいこと、たわいもない話…、そして、話題は神殿の話に移っていった。
「ユーゴ、神殿からの通達は来ているようなのかしら?」
「ああ、性懲りもなく城へ届いている。〝聖女を引き渡せ、と。」
「そう…、私はいつになったら、皆に匿ってもらわなくてもよくなるのかしら?
なんだか、ユーゴにも皆さまにも申し訳なくて…。」
「ルナ、実は話さなければならないことがある。」
ユーゴがとても真剣な顔で言ったので、ルナは向き直った。
「神殿が取り戻したいと思っているのは、俺も、だ…。」
「え??」
「いや、正確に言えば、これだ…。」
ユーゴはそう言い、立ち上がり、二、三歩ルナがから離れた。
そしてユーゴの右半身に向け風が流れたと思うと、ユーゴの右手には美しい長剣が出現していた。
「これは…!?」
「聖剣だ。」
ユーゴが淡々とした声で言った。




