団らん
食卓を囲み、和やかな会話が続いた。ジョセフがふとした瞬間に、ダフネの方を穏やかに見つめていることに、バシルは気がついた。
そして、ルナはときどきおどけた口調でノアの話に入っていくが、ここでの会話を本当に楽しみ喜んでいる様子が伝わってきた。
ルナが皆を見る眼差しは温かく、どこか母性を感じさせる雰囲気があった。
〝そうか…、ジョセフが変わったのは、この女性二人のおかげか…。〟
人の心の機微を見るのに長けているバシルは、そう思った。
あまりに劇的なジョセフの回復ぶりは、やはりルナが聖女の業を発揮したのだろう、そして、ジョセフが生きる力を取り戻したのは、ダフネのことが好きになったことも一因としてあるに違いない…と思った。
ノアにしても、ジョセフにしても、その人がその人として輝いている様を導き出しているのが、神殿出身の二人の女性の働きだとするならば…、神殿のことをほんの少しは見直さないといけないな、ともバシルは思った。
朝食が終わるときに、バシルは皆に提案した。
「皆、今日は楽しかった、ありがとう。家族で集まる時間はとても大切だ、と、思い出したよ。
そこで、どうだろう、週一回、夕食を皆で共にしないか? 私も皆ともっと話したいんだ。」
バシルの言葉に、ジョセフが答えた。
「父上、それはとてもうれしい話です。ただそれは、ルーセルの名を持つものだけの会となるのでしょうか?」
そう言って、バシルは気遣わしげに、ダフネの方をちらっと見た。
そこで、ユーゴが声を上げた。
「それでは、その場にルナと、騎士団長とダフネさん、それから上級使用人の中から一人ずつ交替で参加してもらうのはいかがでしょう。いっそ情報交換と交流の場にしましょう。」
「それはいい。」
ジョセフはすぐに賛成をした。
「それでは、気の置けない家族団らんの場とは言えなくなってしまうではないか!?」
バシルは異を唱えた。
すると、ルナとノアがクスクスと笑い始めた。
「何かな?何かおかしいか?」
バシルは二人に聞いた。
すると、すぐに二人は笑うのをやめ、顔を見合わせた。
そしてノアが男らしく、口を開いた。
「おじい様、申し訳ありません。おじい様が少し怖い顔をなさっているのに、〝家族の団らん〟なんてことをおっしゃるのが、何かおかしくて…。」
「そ、そうか? 怖い顔だったか?」
バシルは、自分の顔を右手でつるりと撫でた。
「ええ、少し怖いお顔は、ユーゴとジョセフ様に似ていらっしゃいます…。」
ルナが、もの怖じをせずさらっと言った。
「そうか…??」とユーゴが意外そうな声を上げた。
「ルナさん、私が、ではなく、ジョセフとユーゴが、私に似ていると思うがね。」
バシルが自信を持って断言すると、ジョセフが右手で自分の顔をつるりと撫でて言った。
「そうかな?」
「あっ!今のお顔は似ていた!」
ジョセフを見て、ノアが大きな声で言った。
「本当ね。」「そうね。」ルナとダフネが同意して、皆が笑った。
結局、夕食会はユーゴの提案通りになり、家族団らんについては、今まで通りの朝食の場にバシルも参加する、ということで落ち着いた。




