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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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資質

 ジョセフの微笑みを見たダフネは、そこで思いきって提案してみることにした。

「ジョセフ様、恐縮ですが、ジョセフ様の病の治療について、私と一緒に調べていただくことはできませんか?」


「は?!」

ジョセフは、ダフネの提案が、あまりに意外だったので、甲高い声を上げてしまった。

そしてすぐに言い返した。

「ダフネさん、失礼だが、それは貴女の仕事であって、私の仕事ではない。

私の仕事は、父上をお助けし、この領地を守り繁栄させることだ。」


「あら、でも今はその本来のお仕事には、取り組んでいらっしゃらないですよね?」


「それは…。」


「ノア様には進んで教師役をなさっているのに…。辺境伯の跡継ぎは、ユーゴに譲るつもりなので、もう御領主補佐の仕事はやるつもりはないのでは?」

ダフネは、ここぞとばかりにズバリとジョセフに聞いた。


「君は…はっきりと言うね…。」

ジョセフは言い淀んだが、すぐにダフネを見つめて、言葉を続けた。


「そうだ。私は辺境伯の継嗣で居続ける気はもう、ない。

このような病弱な、いつ死ぬかもわからない私より、ユーゴの方が辺境伯として、はるかにふさわしい。誰が見てもそうだろう?」


ジョセフの言葉を聞き、ダフネはクスクスと笑いだした。


「ダフネ!? 何が面白いんだ?」

ジョセフは、ダフネを鋭く見つめながら低い声で聞いた。


「ごめんなさい。だって、〝誰が見ても〟って…。

申し訳ありませんが、私は同意いたしかねます。

ユーゴより貴方の方が領主に相応しいと、私は思います、ジョセフ。」

ダフネも、ジョセフに負けずに、揺らぐことのない眼差しで言った。


ダフネに『ジョセフ』と呼び捨てにされたことで、自分も『ダフネ』と呼んでしまったことに、ジョセフは気がついた。もっとも身分の上からも立場の上からも、それで構わなかった。むしろ、ダフネの方が不敬にあたる呼び方だった。


しかし、ジョセフは必要以上に、自分を偉そうに見せるのは嫌いだった。

「すまない、ダフネさん、呼び捨てにしてしまった。貴女は立派な薬師殿なのに。」


「まったく構いませんわ、ジョセフ様。でも、そういうところですわ。決して偉ぶらず、誰に対しても丁寧にフラットに接するところ、領地や領民に深い愛情を抱いているところ、幅広い知識をもっているところ…、どれをとっても、辺境伯継嗣として、ユーゴに勝っています。」

ダフネは自信をもった口調で、断言した。


「ははっ、貴女は本当にはっきりと物を言う。ユーゴより勝っている、か…?」

ジョセフは、うれしそうに笑う表情を隠せなかった。


「あなたは、あなたなりの領主になればよいのです。辺境の防備については信頼できる騎士団長に任せればよいのです。辺境伯が完璧な人間である必要はないと、私は思います。」

続けてはっきりと語るダフネに、ジョセフは真剣な眼差しを向けた。


「ありがとう。自分でもまだ自分のことを客観視することはできていないから、今は君の言葉を受け止めるだけにしておく。」


「それで、十分ですわ、ジョセフ様。

治療法の調査について、ご協力いただくことも、ご検討くださいね。」

ダフネは、優しくジョセフに言った。


「わかった。私からもお願いがある。二人でいるときは、〝様〟づけなしで呼んでくれないか?」


「は!?」

今度はダフネが甲高い声を上げてしまった。

「うん、そうしよう。いいね、ダフネ?」

ジョセフは、たたみかけるように、にっこり笑って言った。

「は、はい…。」


〝あれ?? ちょっと偉そうな感じ?〟

ダフネはそう思いながらも、ジョセフの笑顔につられて頷いてしまったのだった。


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