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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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初めの一歩

早速、ルナはジョセフへ面会を申し込んだ。最初の面会ということなので、ユーゴも騎士団の仕事の融通をつけて、一緒に行ってくれることとなった。

マージのアドバイスを聞き、手土産に用意をしたリンゴにルナは〝癒しの力〟を込めた。


ルナとユーゴがジョセフの部屋を訪ねると、従者はすぐに奥の寝室に二人を案内してくれた。

ジョセフはガウンを身につけ、ベッドで身体を起こし二人を出迎えた。


「ユーゴ、ルナさん、こんな格好ですまない。よく来てくれたね…。」

ジョセフは以前ルナが資料室で会ったときよりも更に頬がこけている感じがした。


〝やっぱり食欲もだいぶ落ちていらっしゃるのね。〟とルナは思った。


「兄さん、実は兄さんに頼みたいことがあってきました。

ルナがこの領地の薬草や植物、風土について、ぜひ勉強したいと言い出しまして、どんな本や資料を読んだらよいのか、ご指南いただければと思いまして…。」

ユーゴが丁寧な言葉を用いジョセフに言った。


「ユーゴ、そんな丁寧な言葉遣いはいらないよ。私は君の兄だ。君は覚えていないだろうが、神殿に行く前は、よく幼い君に絵本を読んであげたものだよ…。くりくりとした目を輝かせて絵本に見入る君はかわいかったな。」

ジョセフは微笑みながら言った。


「まあ、くりくりとした目の3、4歳の頃のユーゴですか? 私も見てみたかった。絵本も読んであげたかったです。」

ルナがうっとりしながら言った。


「いやいや、ルナ。俺が3歳のときは君も3歳だろう? 絵本を読んであげることはできないだろう?」

「あっ、そうか、そうね。」

とユーゴとルナは笑いあった。


「二人の仲がよくて何よりだ…。ルーセル領は安泰だな…。」

ジョセフが小さな声でつぶやいた。


「あの、今日は私、ジョセフ様に食べていただきたいと思い、リンゴをお持ちしましたの。召し上げっていただけませんか?」

ルナが言った。


「ありがとう、後でゆっくりいただくよ。」

「いいえ!ぜひ、今召し上がってください。このリンゴを育てた村の人に、手紙で、ジョセフ様の感想を伝えたいと思いますので。」


「というと、ブイエ村のリンゴかな?」

ジョセフは、ルナとユーゴがここに来る前に、リンゴの産地としても有名なブイエ村にいたことも知っていたようだった。


「ええ、そうなのです。ぜひ。」

ルナがそう言うと、ユーゴは従者に頼んでナイフと皿をもらい、鮮やかな手つきでリンゴの皮をむき、切り分けた。


「さすがは、騎士殿。果物ナイフさばきもすばらしいとは。」

少しおどけた感じでジョセフが言った。


「遠征に出た時は何でもやらなければならないので、身についただけです…。」

ユーゴがぶっきらぼうに、けれど少し照れ臭そうに言った。

「どうぞ、兄さん。」

ユーゴが差し出したリンゴ一切れをジョセフは口にした。


「うん。おいしいよ。」

ジョセフの言葉に、ルナの顔が明るくなった。


「よかったです。たくさん召し上がってくださいね。」

ルナとユーゴは、〝まずは第一歩…〟と思い、二人で目線を交わし微笑みあった。


 そして、ジョセフは、ルナに勧める本や資料の置いてある場所を、ベッド上ですらすらと説明した。

ルナは資料室でのジョセフの様子を知っているのでさほど驚かなかった。しかし、ユーゴは、資料室にある本と資料をすべて把握しているかのようなジョセフの語り口に驚いたようだった。


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