お茶会
それから毎日、ルナがシルフィに乗る前に念入りにブラッシングをかけている間に、ロイはユーゴから体術を習うことが日課となった。
ルナはシルフィとゆっくりとスキンシップをはかることができ、乗馬技術の習得にも役に立った。
ロイは少しずつではあるが、体術を習うことができ、とてもうれしそうだった。
筋肉痛が出なくなり、やっと普通に苦痛なく歩けるようになった頃、ルナはユーゴをお茶に誘った。
「あのね、ユーゴ、お話があるの。おいそがしいところ申し訳ないのだけど、いつでもいいから、時間をもらえないかしら?お茶をいただきながらとか、どう?」
何のモードも入っていない、ルナからの誘いだった。
〝ルナから話? 改まって話とは!?〟
ユーゴは騎士にあるまじき動揺をしていたが、表情に出さないことには成功していた。
「ああ、では明日の午後、部屋に行くよ。」
ユーゴはあくまでも、さらっと返事をした。
ユーゴをお茶に誘ったと聞き、マージは喜んだ。
「まあ、まあ、まあ。それはとても良い思いつきですわ、ルナ様。
久しぶりに、美しく装ったルナ様を見ていただきましょうね。」
と、はずんだ声で言った。
「マージ? 私はただユーゴと話しをするだけで、そんなおしゃれは…。」
「はいはい、マージにはわかっておりますとも! すべてお任せくださいませ!」
マージは張り切って、まずはお茶菓子や軽食について相談するために、厨房へ行こうとした。
ルナは厨房でお願いしたいことがある、と言って、マージについて行った。
そして次の日の午後、ルナは仕立てあがった新しいデイドレスを着て、辺境伯と会った時よりも凝った編み込みがある髪型で、美しく装った。
マージの圧力に押された感じにはなったが、ルナはドレス装身具を考えたり、選ぶことがすぐに面倒くさくなってしまうだけで、美しく装うこと事体はもちろん好きだった。
そして、ユーゴがルナの部屋を訪れた。
ユーゴも、辺境伯にルナと挨拶に行った時のように、騎士服ではなく、白いシャツに上質な上着を羽織っていた。
「ルナ、これを君に…。」
ユーゴはピンクのバラの花束をルナに差し出した。
「ありがとう。」
思いがけないユーゴからのプレゼントに、ルナがうれしそうに笑顔を浮かべた。
その笑顔を見て、ユーゴの動きが一瞬止まった…。
「わざわざ時間を作ってくれて、ありがとうユーゴ。」
「いや、いつも乗馬の練習の後は、すぐに騎士団の仕事へ向かっているから、ゆっくり話す時間が無くて申し訳ないと思っていたんだ。」
「ユーゴ、今日はね。マージがたくさんのお茶菓子を用意してくれたのよ。」
ルナがユーゴの手を引いてソファに座らせた。
すぐにマージは、優雅な手つきでお茶をいれてくれた。
すると、テーブルの上に並べてある色とりどりの菓子や、スコーン、サンドイッチの中で、さえない茶色のクッキーの皿をユーゴが見つけた。
「これは…?」
厨房の職人が作ったとは思えない、シンプルな形の、しかも所々焦げ目があるクッキーが皿の上に並べられていた。他の皿と比べて、明らかに違和感があるので、ユーゴの目にとまったのだった。




