初対面(2)
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。」
ルナがバシルに頭を下げたが、ユーゴがすぐに口を出した。
「お父…さん…、私がルナをここへ無理やり連れてきただけですから!ルーセル家に迷惑をかけているのは、この私です!」
「あら、ユーゴ、無理やりと言ったら、私の方でしょう? だって、最初に私がユーゴを脅したもの。小さい頃のおねしょの話とかで……。」
ルナがそう言うと、ユーゴは横から手を伸ばし、手のひらでルナの口をふさいだ。
急に口をふさがれて、ルナは目を白黒させた。
バシルはそんな二人の様子を見て、声を出して笑い出した。
「まあ、よい。2人が互いに相手のことを大切に思っていることはよくわかった。
ではこのまま、ルナさんは、ユーゴが連れてきた、婚約者の、ただのご令嬢、ということにしようか?」
「「婚約者!?」」
便宜上だ。対外的にはその方がよいであろう? そのうち〝嘘から出たまこと〟となっても、私は構わないぞ?」
あっけにとられたルナとユーゴだったが、そこから立て直したのはユーゴの方が速かった。
「わかりました…。ただ、ルナの行動の自由だけは保証してもらいたい。安全面で問題がない限りは好きに過ごさせてあげてほしいのです。」
「承知した。ただし、聖女としての行動は一切禁止だ。神殿側からいろいろと言ってくるだろうが、聖女など知らぬ存ぜぬで通すことにするからな。できるかな?ルナさん?」
バシルは、鋭い目でルナを見つめて言った。
「はい…。」
ユーゴのためにも、そう返事をするしかないルナだった。
しかし、せっかくの面談の機会なので、ルナは思いきって口を開いた。
「あの、図々しいのですが、お願いがあります。」
「…言ってみなさい。」
「乗馬を習ってもよろしいでしょうか?」
「ほう?乗馬を?」
バシルは意外そうな顔をした。
「はい、一人で馬に乗れるようになりたいのです。そうすれば、ユーゴにかける迷惑も少しは減りますから…。」
「ルナ、迷惑なんて。」
と、ユーゴは言ったが、
「承知した。なるほど、自由な意思をお持ちの方のようだ。」
と、バシルは言い、ニヤリと笑った…。
ルナが自分に与えられた部屋に戻り一人になると、待ち構えたように、すぐにマージがティーセットを携え、部屋に入ってきた。
「ルナ様、旦那様とのお話は、つつがなくお済みになったのでしょうか?」
「ええ。いつの間にか、私はユーゴの〝婚約者扱い〟になったようなの…。」
ルナは、ぼんやりと答えた。
しかし、マージは状況をすぐに察したのか、顔をパッと輝かせた。
「それは、ようございました。それでは、これからもルナ様のお世話をさせていただけるのですね。この城はしばらくお仕えする女性の方がいらっしゃらなかったので、使用人は皆喜びますわ。」
と、はずむような声で言った。
「あれ?ユーゴのお兄様方の奥様は??」
「長兄のラファエル様の奥様は、4年前ラファエル様とご一緒にお亡くなりになりました。馬車の事故でした。次兄のジョセフ様はずっと病がちでいらっしゃるので、婚姻はなさっていないのです。」
「そうだったの…。」
やっぱり、ユーゴの立場は微妙なのかしら…?と、ルナは思った。




