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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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移動

 ルナは急に馬の鞍に乗せられたものの、下働きのような質素なワンピース姿をしていたので、以前馬に乗って移動したときのように足を広げて馬の鞍を跨ぐことはできなかった。

ユーゴに横座りの恰好で抱え上げられ、すぐにユーゴが後ろに乗ってきて二人乗りで馬を走らせ始めた。


騎士団の団員たちの馬の速度に合わせ、かなりの速度で走り始めたため、ユーゴはルナに「しっかり俺につかまって」と言った。


ルナは馬から落ちないようにとユーゴの胴体に両手を回した。

すると、当然のようにユーゴの胸板がルナの頬にあたり、またもルナはどきどきしてしまった。


〝ユーゴの男らしい胸は、好きなのだけれどっ! 心臓がもたない! 次こそ、乗馬を学ぶ!!〟

ルナはまた決心をした。


 

 しばらく駆け、一行は、今までいたブイエの村の隣の町に入った。

ルナは速く駆ける馬の上で、ユーゴにしがみついていたので、なかなかに疲労してしまった。


町の一角で、ルナとユーゴが乗っている馬が止まっているのに気づかず、ルナは目を閉じユーゴの胴体にしがみついているままだった。


「聖女様、恐れ入りますが、馬車を用意してありますので、お移りいただけますか?」

馬から降りたローガンがルナに声をかけた。


「は、はい!」

ルナは馬が止まっているのに、自分がユーゴに抱きついていることに気づき、慌てて、手を解きユーゴの胸から顔を離そうとして…

バランスを崩し、一瞬落馬しそうになった。


「危ない。」ユーゴがとっさにルナの腕を取り支え直した。

「ご、ごめんなさい。ユーゴ。」

ルナはユーゴにしっかりと抱き留められるような恰好になってしまったことが恥ずかしく、頬を赤く染めながら言った。

「いや…。」ユーゴがぶっきらぼうに答えた。


「やれやれ、中年の男やもめには初々しいというか、目の毒というか…。」

ローガンはそう呟きながら、ルナが馬から降りるのを支えた。


そして、ルナが下に降りると、ローガンはルナの右手を取り、左胸に手をあて軽くお辞儀をしながら言った。

「聖女様、改めましてご挨拶申し上げます。

東の辺境騎士団団長のローガン・ミュレーと申します。お見知りおきを。」


ローガンの茶色の瞳が、まっすぐルナを見つめた。

「あの…私のことは、ルナとお呼びください。」

と、ルナが言うと、ローガンは「はい、ルナ様」と、爽やかにニコリと微笑んだ。


〝この方は頼りがいがありそうだし、女性にモテるでしょうね…。〟

ルナはローガンの微笑みを見返しながら思った。


そこへ「ルナ、さあ馬車に乗るぞ。」

と、馬を降りていたユーゴが、ルナの左手を取り、馬車が止めてある方へ引っ張った。


「ユーゴ様、諸々の説明をルナ様に、頼みますぞ。」

ユーゴの背中に向かって、ローガンが声をかけた。


 ルナが乗り込んだ馬車は、外観はごく普通の辻馬車だったが、内装は落ち着いた上品な装飾がなされていて、座席の座面がふかふかで広めにとってあり、とても乗り心地がよいものだった。


「まあ!? この馬車は、外見と中身がだいぶ違うのね?」

ルナが感心したように言うと、


いっしょに馬車に乗り込んできたユーゴは

「これはおそらく領主やその側近が、お忍びで視察するとき用の馬車なんだろうな…、ローガンがルナのために用意させたのだろう…。」

と言った。



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