対峙(3)
「ルナ…、そんな…。」
ダフネはルナに向かって、ふるふると首を振った。
ルナは優しくダフネの左手首をとった。
「ダフネ、さっき捻られて痛めてしまったでしょう? じっとしてて…。」
ルナは軽く目を閉じ、〝癒しの力〟をダフネの手首に流し込んだ。
ダフネの腕が一瞬光輝き、その光は日の光の下でも、ルナを注目していた者たちの目には見えた。
「光った!?」
「やっぱり聖女様だ!」
村人たちが次々と声をあげた。
「温かい…、まさに祝福の癒しの力ね…。ありがとう、ルナ…。」
万感の思いを込め、ダフネが言った。
「さあ、お薬の仕上げをいっしょにしましょう。ダフネの祈りの力も貸してね。」
ルナがそう言うと
「ええ、もちろんよ。」
ダフネがルナの口真似をして答えた。
ルナは煎じ薬の鍋の前に立ち、左手でダフネの手を握り、右手で鍋に向かって手をかざした。
そして目を閉じ〝癒しの力〟を鍋に向かって流し込んだ。ダフネはルナに息を合わせ、昔、神殿で修行していたように、強く祈った。
先ほどよりも鍋が強く光り、人々は歓声を上げた。
ルナが目を開けると、ダフネがルナにそっとつぶやいた。
「ルナ、私のことは気にしないで。何だったらルナたちと一緒に外国に逃げてもいいんだから…。」
ルナはそう言ってくれる親友の気持ちがとても嬉しかった。
けれども、ダフネの大切な仕事を奪う訳にはいかないと、強く思った。
ルナは息を吸い、厳かに言った。
「薬師ダフネ、聖女の名において命じる。今回の中毒症状の治療を完遂させなさい。」
「中毒? 疫病ではなかったのか?」
ガスパールが声を出した。
「そうです。村長! よく聞きなさい。」
ルナが村長に向かっていった。
「は、はい。聖女様…。」
村長は、顔を青くしたり赤くしたりして、動揺のあまりウロウロしていたが、急にルナに声をかけられたので、驚き、その場に膝をつき頭を下げた。
「今回の集団発生した急性症状は、疫病ではなく、地下水を通じて西の井戸に混入した毒性物質による中毒です。西の井戸は今後使用してはいけません。
そして、このことを発見したのは、薬師ダフネです。
村長、今後、薬師ダフネを害したり、軽んずることは、決して許しませんよ。」
ルナは村長に重々しく言った。
ダフネは、左胸に手をおき、膝を落とし、ルナに礼をした。
「聖女様、この御恩は忘れません…。」
噛みしめるように言うダフネの言葉に、
〝この先、またダフネと友達として接する日が来ますように…〟と願わずにはいられないルナだった。
「さあ、中央神殿に帰りましょう。」
ガスパールが高らかに言い、ユーゴがガスパールに鋭い目を向けた。
そして、そのとき、地響きと土埃をあげて、新たな騎馬隊が隔離エリアに迫ってきた。




