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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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脱走判明

ガスパールが、何気なくその布袋を開いてみると、薄暗い備品庫の中でも、白く光沢のある布地の輝きが目に飛び込んできた。備品庫には全く似つかわしくない上等な質感だった。


「なんだこれは!?」

驚いて布地を袋から出し広げてみると…、美しい白一色のドレスだった。

そして、ウエスト部分での切り替えしがないデザインで、肩や胸に当たる部分に精緻な刺繍が施されている。


「これは、聖女の式典用のドレスだ…。」

聖女が身に着ける式典用のドレスには、序列順位により使用される生地や装飾が決まっていた。


「この刺繍は…確か、序列4位から10位以内のもの…。

ルナ!ルナのものかっ!?」


他の聖女からドレスを紛失したという報告などない。消去法で考えても、このドレスはルナのものである可能性が高い。


〝今、自分がドレスを広げるとき、このドレスはきれいにたたまれていたような…?!〟


ドレスの布地が上等であるため、ガスパールがドレスを広げたときも、ドレスはサラっと布地が流れるようにすぐに広がった。しかし、ドレスの袖の部分は、はるか昔に聖養母が自分たちに教えてくれたように、きれいに折りたたまれていたようだった。


「ルナが自分でドレスをたたんだのか?!」

ガスパールは小さく叫び声をあげた。


もし、ルナがこの聖女のドレスを自分でたたんだとするならば、その時点では、ある程度の心理的な余裕と時間的余裕があったということになる…。とするならば、そのとき誰かに脅され、ドレスを脱いだとは考えにくい。そして、もしここでドレスを脱いだなら、着替えもあらかじめ準備していた可能性があるということ…。


ガスパールは、到底信じられない結論に達し、愕然とした。

「ルナが神殿から逃げた……?」


もしルナが自ら神殿から脱出したとするならば、ユーゴは、ルナの意向に沿って協力し一緒に行動しているに違いなかった。

そして、あの日廊下でユーゴが押していた箱型の台車の中に、もしかすると、ルナが隠れていた可能性があったことにも、ガスパールは気がついた。


ガスパールは、立っていた床が抜け落ち、自分の身体が沈み込んでいくような感覚にとらわれた。


「なぜだ!なぜ神殿から逃げ出す!? どうして私の前から消えてしまうんだ!?」

ガスパールは、備品庫の中でドレスを握りしめながら、独り血を吐くような声をあげた。


〝自分の目にルナの姿を映すことさえ、神は許さないのだろうか? 

否、神殿から逃げ出すことなど、神に仕えることを誓った身なれば、許されるはずもない…。


けれど、なぜユーゴと一緒なんだ!?

なぜユーゴだけが、私の欲しいものを手に入れることができる…!?〟


ガスパールは、嵐のように吹き荒れる感情を胸に、ドレスを掴み、副神官長の元へと急いだ。


 副神官長は、ガスパールの見聞きしたことや推理したことを聴き、聖女の式典用のドレスを見分し、直ちに神官長へ上奏した。

聖女と聖騎士の脱走という、前代未聞の出来事に神殿上層部は騒然となった。


しかし、神官長は民への影響を考えて、という理由で、秘密裡にルナとユーゴの捜索することを命じた。

そして、ガスパールは自ら志願して、2人の捜索隊の陣頭指揮を執ることになったのだった…。


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