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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
29/92

探索

 時は遡り、ルナとユーゴが中央神殿から脱出したその日の夜…。

 

ルナの部屋へ、夕食を運んできた神官により、ルナの所在不明が発覚した。

眠らされていた聖女見習いの少女の証言により、ルナ自身が少女を眠らせたらしい、ということがわかった。また、同じ日に騎士のユーゴも所在不明となっていることも判明した。


しかし神殿が創建されて以来、聖女が神殿から自ら逃げたことなどなく、ルナは何者かに誘拐されたのではないか、という見方がなされていた。そして、当日担当の護衛騎士だったユーゴは誘拐犯を追っているか、共に捉えられたか、害されたかして、神殿と連絡を取れない状況にあるのではないか、と思われていた。


従って、誘拐されたとすれば、下手に騒ぎ立てればルナの命が危ないかもしれない、と言う判断で、神殿の上層部では混乱に陥っていたが、神殿の外へ情報を公表することはなかった。


そして、誘拐犯から身代金請求か犯行声明が送られてくるのを、神殿上層部は息を詰めて待っていたが、何の音沙汰もなく時間だけが過ぎていった。



 ルナの姿がこつ然と消えてから、神官のガスパールは、ルナの身をひたすらに案じていた。ガスパールは副神官長に目をかけられ重用されていたので、いち早く、ルナとユーゴが行方不明になっているとの情報を得ていたのだった。


ガスパールも当初は、ルナは誘拐されたか、何かの事件に巻き込まれたのではないかと思っていた、しかし1日2日と日が経つうちに、疑問が湧いてきた。


行方不明となった当日は、神殿の内部の警備が手薄になりがちな祭祀の日であったこと、ルナが珍しく体調を崩し早々に部屋に戻ったこと、護衛担当のユーゴがルナを部屋へ送り届けただけで、そのままルナの治療や観察を他の者に頼まなかったこと…、これらは偶然が重なっただけと考えるのは不自然ではないか…?


そう考え始めたガスパールは、当日の自分の記憶を細かくたどり始めた。


 あの日、貴賓席の誘導係だったルナが、体調が悪くなり部屋に戻ったと聞き、ガスパールは心配になり、式典が始まる時間だったにも関わらず、ルナの部屋へ向かった。部屋の中に入るつもりはなかったが、部屋に出入りするであろうお付きの見習いの少女にでも、ルナの様子を聞こうと思っていた。

するとルナの部屋の方向からユーゴが台車を押し歩いてきた。


ルナの様子を聞くと、『大丈夫、部屋に入るところまで見届けた』…と、ユーゴは言っていた。


〝それにしても、あの時ユーゴはあまり心配している雰囲気はなかったな?〟と、ガスパールは思った。

ユーゴもルナを大事に思っているはずで、めったに体調を崩さないルナが、祭祀の式典での職務を中座しなければならない程の深刻な体調の悪さだったかもしれないのに…。


そして、騎士として優秀なはずのユーゴが、『部屋で休む』と言ったルナに対して、治療の手配も経過観察の手配も、何もしている様子がなかったことが、やはりガスパールには不自然に思えてならなかった…。


〝そう言えば、あの時ユーゴが台車を押していたのは、備品庫へ何か物品を返却すると言っていたな…?〟

ガスパールは、どんな小さな手がかりでもいい、何か見つかれば…と思い、足早に備品庫へ向かった。


 そして、薄暗い備品庫の片隅に、ユーゴがあの時押していたと思われる大きな箱型の台車があった。その台車には大きな白い布がかぶせてあり、一見して台車とはわからないようになっていた。

なんでただの台車が大事そうに布で覆われているんだ? ユーゴは何を返却するところだったのだろう?〟

ガスパールは台車の近くの棚を見回したが、ルナが借りそうな物品は置いてはいなかった。


しかし、気になることがあれば、丹念に調べるのが、ガスパールの性質であったので、ガスパールは膨大な備品庫にある物品を一つ一つ見ていく決心をした。


〝物品の貸し出し台帳があればよかったのだが…。今後の業務改善点だな…。〟と、そんなことを考えながら、場所により、うずたかく積まれた埃を払いながら見ていった。

埃に辟易してきたところで、〝待てよ、3日前に返却されたもののはずだから、埃がついていないものを探せばいいのか…?〟と、ガスパールは思いついた。


「やれやれ…。」と言いながら腰を伸ばしかけたとき、ガスパールは壁際の棚の奥に押し込めたように置いてある茶色い布袋を見つけた。


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