ガスパールの思い
〝自分はルナのことが好きだ…〟そう気がついたのは、ガスパールが10歳頃のことだった。
ガスパールは、同じ聖養母の元でルナ、ユーゴ、ダフネと、5歳から一緒に時間を過ごしてきた。幼いころから兄弟姉妹のように過ごし、そばにいることが当たり前の存在になっていた。
しかし、4人が皆10歳になり、あと2カ月で聖養母の庇護の元を離れることが決まったとき、ガスパールは気がついた。聖養母と子ども4人で過ごすことは、あくまでも疑似的な家族関係であり、ずっと続くものではない、ということに…。
今までは、お互いが家族のような大切な存在だったのに、その関係性が一気に薄まってしまう…。ガスパールは、喪失感と共に、ルナの無邪気な明るい笑顔がどれだけ自分の心を照らしてくれたのかわかってきた。
ルナとダフネ、ユーゴは、聖養母の庇護からはずれ、集団生活のみになってからも、親しく接してくれた。けれど、自分の気持ちに気がついたガスパールにとっては全く物足りなかった。
〝もっと自分の方を見てほしい〟〝ルナにとって自分だけが特別な存在になりたい〟そんな思いがガスパールの中で渦巻くようになっていた。
ルナは成長と共に〝聖なる力〟が増してきているようで、おそらくは聖女になれるだろうと思われた。そんなルナの近くにいるために、〝騎士になろう〟とガスパールは10歳のときに強く思った。騎士になれば、聖女を個別に護衛する任務があり、ルナの近くにいられると思ったのだった。
しかし、現実は残酷だった。どれだけ鍛錬しても、ガスパールが騎士見習い試験に合格することはなかった。
4回目の騎士見習い試験に落ちた後、ガスパールは神殿の教育統括官に呼び出され、諭された。
「残念ながら、君に騎士としての才能はない、もう騎士見習い試験を受けるのは止めなさい。だが、君には優秀な頭脳がある、神官としての才能はありあまるほどあるだろう…。」
教育統括官に言われなくても、神官になるより外にルナがいる中央神殿に残る道はなかった。
次の神官見習い試験で、ガスパールはあっさりと首位で合格した。けれど、まったくうれしくはなかった。
それに比べ、ユーゴは初回の騎士見習い試験で首位に合格していた。見習いとして本格的な訓練が始まっても、ユーゴの剣さばきや体術の動きは鮮やかで、〝聖なる力〟が感じられる、と評判だった。
ユーゴはこれからも、あっさりと当然のようにルナの隣に立つ…、それを思うと、ガスパールの胸は締めつけられるような感じがした。
〝僕は努力しても努力しても、ルナの隣には立てないのに…。〟
ガスパールは自分を情けなく思えば思うほど、ユーゴを嫉妬する思いが浮かんでくることを止めることができなかった。
〝では、ルナの隣に立てないのなら、僕はどうすればいいんだ…?〟
神官見習いとなったガスパールが14歳のときに出した一つの結論は、神官として出世をし、聖女になるであろうルナよりも権限をもつことだった。
偉くなれば、ルナに言うことをきかせることができる…、ルナを立場的に下に置くことができれば、自分は満たされた気分になるような気がした。
そうして、ガスパールは15歳で神官に叙任されてからも、誰よりも学びと職務に励んできたのだった。




