友の願い
〝癒しの力〟を人の身体に向けて放つときに、ルナはその人の身体のどこが、どの程度悪いのかを感じることができていた。その応用で、害のある物質について感じることができないか、という試みだった。
ルナは目を閉じ集中して、〝癒しの力〟を水に向けた。たらいの水が一瞬光った。
「私の感覚では、暗い緑色の粒子が水の中にもやのように漂っている感じがあるわ…。」
ルナが言った。
「ルナ、この水も感知してみてくれ。」
ユーゴがもう一つたらいを出した。
ルナは、再び目を閉じ、手を水の表面にかざした。しかし、今度はたらいの水が一瞬光った後も、しばらく手をかざし続けた。
そして目を開け言った。
「暗い緑色の粒子はゼロではない…。けれどごくごくわずか…。おそらく、この程度なら人の身体に影響はないと思う……。」
「そうか…。」
「ユーゴ、この水はどこの水なの?」
「村の西の井戸から汲んできた水だ。」
ルナとユーゴの様子を見守っていたダフネが口を開いた。
「よかった。西の井戸は現時点ではこのまま使用できるということね。
でも、早急に毒性物質を検出する方法も確立しないといけないわね。」
「ダフネ、ごめんなさい。私、昨日お師匠さんの病について、とてもうかつなことを言ったわ。薬房は村の西側にあるから西の井戸を使っていたのよね…?」
ルナがダフネに言った。
「ううん。ルナの言ったことも可能性はある…。お師匠さんはよく村の東側の家にも往診に行っていたから、東の井戸の水はいくらかは飲んでいたと思う。今となっては、どの程度毒性物質がお師匠さんの病に関与していたのか、わからないけれど…。」
ダフネはため息を一つついて続けた。
「いずれにせよ。聖女様と一緒にして恐れ多いけれど、人を癒したり、治療する私たちの仕事は、自らの身も危険にさらす可能性がある、ということね。もし今回が疫病だったら、自分たちも感染する可能性があったわけだし…。」
ダフネは悲しい目をして言った。
「そうね…。」ルナはダフネに同意した。
「だからユーゴ、聖女様を、ルナを、守ってあげてね…。」
ダフネが万感の思いを込めて言った。
「ああ…。」
ユーゴは短く答えたが、ダフネの思いはわかっていた…。




