三人で
「ダフネ、君が描いた地図を出してくれ!」
ユーゴがダフネに言った。
ダフネが昨日描いた村の家々の配置に患者発生を描き込んだ地図を広げた。
「ここ!この位置に井戸があったよな?!」
ユーゴは家々の間にある一点を指で差し示した。
「ええ、確かに…。」ダフネが言った。
「見てくれ、この井戸があるところは、患者発生分布のほぼ中央に位置していないか?」
ユーゴの言葉にルナとダフネは息をのんだ。
「そして、患者が発生していない村の東側のエリアには別の井戸があったよな…?」
ユーゴは村の隅々を観察してきてくれたようだった。
「そうか…、水?! 井戸水が感染源になったってこと?!」
ダフネが小さく叫んだ。
「待って、ダフネ。そもそも、これは疫病なのかしら?」
ルナが言った。
「そうね。いわゆる疫病と考えるには不自然な点も多々ある…。多くの患者があまり時差がなく発症しているし……。」
と、ダフネ。
「なんらかの毒物では…?」
ユーゴが言った。
「え?誰かが井戸に毒物を投げ込んだってこと?」
ダフネがまた小さく叫んだ。
そこで、ルナが記憶をたどるように右手の指先を自分のこめかみに置いた。
「いいえ…。待って…、以前に神殿にある資料で読んだことがあるわ。地下水が毒性のある物質に汚染されることがあるって…。その物質の中毒症状の特徴は…多彩な皮膚病変、と記載してあったわ!」
「え?でも、なぜ急に発症したの?井戸水は昔から使っているのよ?」
「ダフネ、患者が発生する前に村や村の周りで変わったことはなかったか?」
ユーゴが落ち着いた口調でダフネに聞いた。
「……そう言えば、最初の患者さんが出る前日に地震があった。小さいものだったけれど…。」
「それだ。」「それね…。」
ユーゴとルナが頷きながら言った。
「どういうこと?!」
と言うダフネにルナが答えた。
「地震で地下水脈の流れが変わり、毒性物質が急激に井戸に流れ込むようになったのだと思う。
この土地で病が多いのは、もしかすると、井戸水から微量ながら毒性物質を取っていたからかもしれないわね…。」
「そんな…。」
病で亡くなった師匠のことを思い出したのか、ダフネは言葉を失った。
「ダフネ、今は患者を回復させることが先だ…。解毒薬を作れるか?」
ユーゴはダフネに言った。
「ええ、やるわ。」
ダフネは悲しそうな瞳に決意の色を宿し頷いた。
翌日朝一番に、薬房から、解毒に関する薬学書や薬草書をユーゴは取ってきた。
ほとんど眠らずに、処方の検討を始めていたダフネは喜んだ。
そしてダフネのサポートをしていたルナに、ユーゴが声をかけた。
「ルナ、これは、汚染されていると思われる西の井戸から汲んできた水だ。君の力で毒性物質を感じとることはできるだろうか?」
「やってみる…。」
ルナは、たらいに入れられた水の表面ギリギリ近くに手をかざした。




