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脱走聖女と幼なじみの騎士  作者: もりの
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隔離エリア(1)

 ルナは、患者の休憩用のベッドで身を横たえた。荷馬車の中ではごく浅い睡眠を細切れにとることしかできなかったので、ルナはすぐに眠りに落ちてしまった。


「ルナ、ルナ、起きて。」

ルナは自分を呼ぶ声と、肩を揺り動かされる刺激で目を覚ました。

目の前には、申し訳なさそうなダフネの顔があった。


「ルナ、起こしてごめんなさい。状態が悪い人がいるの、一緒に来てくれるかしら…?」

ダフネの言葉に、ルナは一気に目が覚めた。

「もちろんよ。」

ルナは身を起こし、ダフネに答えた。


ダフネは、着替えとして、下働きのお仕着せのような質素なワンピースと、白いエプロンを差し出した。そして、更にこげ茶色のセミロングのかつらと、薄い茶色のレンズの大きめの眼鏡と、三角巾を2枚、ルナに渡した。


「お師匠さんが、以前使っていた変装用のかつらと眼鏡よ。眼鏡は目の色を茶色に見せてくれる優れものよ。かつらをつけた後、頭と、口元を覆うように三角巾をつけてね。」

ダフネは早口でルナに言った。


ルナはダフネに手伝ってもらいながら手早く支度を終えた頃、ユーゴがドアの外からノックをしてきた。

ダフネはドアを開け、ユーゴにも早口で話した。

「ユーゴ、事態が悪化したわ。詳しくは歩きながら話すわね。ユーゴは薬草箱を背負ってついてきてほしいの。悪いけど、長剣も持ってきてくれるとうれしいわ。」


ダフネは、村の中心部からは外れていく方向に歩いていった。

そして速足で歩きながら、ダフネが話を始めた。

「疫病の可能性があるから、急に症状が出た人たちを村の集会所に隔離の意味でまとめて入ってもらっていたのね。おかゆなどの食べやすい食事の差し入れを非接触でしてもらうよう、村の婦人会の方々にお願いしていたの。でも、私が留守の間に、村長の指示で差し入れが中止になり、隔離の場所も村はすれに設置されたテントになってしまったのよ!


病人に、丸一日の間、硬いパンと干し肉しか与えなかったらしいのよ!吐き気やのどの痛みがある患者さんがそんなの食べられる訳がないのに!」


ダフネは話しているうちに、そのような指示を出した村長に対しての怒りがこみ上げてくるようだった。


やがてルナたちが着いたのは、村はずれの森の入り口で、元々建っていたと思われる炭焼き小屋を中心に大きめのテントが6つか7つ設営されている場所だった。


またテントが立ち並んだ場所の前には、これも急ごしらえなのか、ルナの腰の高さ位の木の柵が立っていて、その柵の前には、村の役人なのか細身の中年の男性がいた。そしてもう一人若い男が槍を持って立っていた。


ルナたちが近づくと、中年の男性がユーゴとルナにちらっと視線を投げ、慇懃無礼にダフネに声をかけてきた。

「薬師様、困りますね。部外者は立ち入り禁止ですぞ。」


「彼らは部外者ではないわ。下働きを頼んだ人と、私の護衛よ。」

と、ダフネが言った後、ユーゴはわざと腰に帯びた長剣を見せるようにマントをさばき、腰のベルトに手を置き、男性を一瞥した。


「そ、そうですか…。」

男性はユーゴの武人らしい体格と迫力に恐れをなしたのか、あっさりとルナたちを通してくれた。


「ルナ、こっちよ。」

ダフネは一つのテントにルナたちを案内した。

テントの中には、中年の女性と男性が横になっていた。女性はルナたちがテントに入ってきたことに気づき、身を起こしたが、男性の方は顔色が悪く、そのまま目をつぶっており、身動きをしなかった。


ルナが男性の顔を見ると、男性の目は落ちくぼんでいる印象があり、唇は乾いていた。

「脱水症が進んでしまったのね?」

ルナの問いかけに、ダフネは頷き言った。

「この人が最重症で、他に重症者が2人いるわ。」


「急ぎましょう…。」

ルナがそう言うと、ユーゴは素早く男性の隣にいた女性を抱きかかえ、テントの外へ出た。


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