新しい出発
「ルナ…、もしよかったら…。」
ダフネは言いかけて、そこで言葉を止めた。
ルナはユーゴの顔をちらっと見た。
ユーゴは、やはり、ルナに頷いてくれた。
「ダフネ、私たち、あなたの村に一緒に行ってもいい?
ちょっと、お尋ね者だけど…。」
ルナの心に中に、幼馴染の親友を助けたい…、という気持ちがどうしようもなく生まれ、膨らんできてしまっていた。
ルナの言葉にダフネの顔が輝いた。
「いいの?ルナ?!」
ルナはしっかりとうなずいた。
「いいの?ユーゴ?」
ダフネの問いかけにユーゴもしっかりと頷いた。
「ありがとう、ルナ。」
ダフネはルナに抱きついてきた。
〝ダフネの温もりはやっぱり10歳の頃と変わらない…〟
ルナはそう思った。
ダフネと共にブイエ村に行くと決まってから、ユーゴの動きは速かった。
自分の荷物をあっという間にまとめ、移動の馬車の手配をしに出掛けたと思えば、すぐに戻り、食堂の女将さんと主人に話をしてきたようだった。
ルナがユーゴと共に一階の食堂に降りていくと、女将さんと主人が待ってくれていた。ダフネは先に借りた馬車のところへ向かってもらっていた。
「なんだい、えらく急な話じゃないか!?」
女将さんは既に涙ぐんでいた。
「ごめんなさい…。」
ルナも急に食堂を去ることになり、本当に申し訳ない気持ちでいた。
「二人とも訳ありな様子だったから、いつかこんな別れの日が来るんじゃないかとは思ってはいたけどね…。」
「女将さん…。」
女将さんの涙につられ、ルナの瞳からも涙が溢れ出てきた。
「泣くんじゃないよ…。」
女将さんは、ルナの前髪を横にかきあげ、ルナの瞳を見つめた。
そして、しみじみとルナに言った。
「ああ、きれいな瞳だね。あんたはそのきれいな瞳でお客さんのことをしっかり見てくれていたんだね。ありがとうよ…。」
「ルナリス、君のおかげで、料理は一人一人のためにつくるものだということを思い出したよ…、ありがとう。」
いつもは無口な主人もルナに礼を言った。
ルナの目から更に涙が溢れ出てきた。
「そうだ、ユーゴもお客さんの話を聞いてくれていたね。ありがとうよ…。」
女将の言葉にユーゴは頷き、そして女将さんと主人に言った。
「こちらこそ、置いていただきありがとうございました。ただ、今後俺たちのことを訪ねる者がいても、『どこかまた旅に出た』とだけ言ってもらえますか…?」
「わかっているよ。行先はあたしらも知らない方がいいんだろう?」
「はい…。」
「でも、もし落ち着くことがあったら、便りを寄こすんだよ。待っているからね…。」
ルナは女将さんと主人に何も話せないこともつらく感じた。
「そんな顔はしなくていい。あんたらが幸せになったらそれでいい…。
これは餞別だよ…。」
女将さんはそう言って、ルナに美しい薄いピンク色のレースのリボンを手渡した。
「女将さん!?」
「いつかこれを髪に結んでくれるとうれしいね…。きっと似合うよ…。」
女将さんは、ルナにやさしく言った。
「ルナ、行くぞ。」
ユーゴがルナを促した。最後にそれぞれがハグを交わし合い、ルナとユーゴは食堂を後にしたのだった…。




