28 進入者①
更新が空いているのにブックマークしてくださってる方、ありがとうございます!
本当にすみません!
──その昔、謀反を企てた王族の女が幽閉された。
裁判もなく処刑が決まり、その日を待つだけの女が過ごした塔を【青の塔】といった。
しかし女は処刑日を迎えることなく、自らこの世を去った。
それ以降、女は怨霊となり呪いの言葉を吐きながら【青の塔】を彷徨っている。
怪談【青の塔】──。
彼女はなぜ、【青の塔】を彷徨っているのだろうか。
怨霊になるほど強い想いがあるのなら、自身を不幸にした元凶の元へいけばいいのに、なぜ・・・・・・。
■■■■■
【黒の塔】が建つその場所は、木々が生い茂る森の中で奇抜なところだった。
緑の中にポカンと空いた土色の空間。
草木の生えていないそこは、森の中には似つかわしくない異空間のようだった。
大きな扉の前で無言で佇む二人。
あの夜はよく見えなかったレリーフが今日ははっきりと見える。
ナディアは扉に近づき、じっくりと眺めた。
(ツタが絡む剣と炎を貫く弓矢。こんな紋章は見た事がないけど、どこの一族だろ)
ここら一帯は王家の所有地だ。
この【黒の塔】に紋章が刻まれるなら王家、もしくは傍系の紋章のはず。なのにそのどれにも当てはまらない。
紋章を見つめていると、ユーテリアが見透かしたように口を開いた。
「見慣れない紋章だろ?これは王家と敵対する一族の家紋なんだ」
「敵対する一族、ですか?そんな話は今まで聞いたことないですけど」
ユーテリアはフッと口元を上げる。
紋章を見つめる目には暗い陰が降り、どこか自嘲めいているように見えた。
「・・・・・・さあ、中に入ろう」
ユーテリアは扉に手をかける。
ナディアはそれ以上何も言えず、重い音を響かせながら開く扉を見つめていた。
■■■■■
窓のない、塔の中を進んでいく二人。
昼なのに光が差し込まないため、暗闇の中をライトで照らしながら歩く。
向かうのは手記を見つけたあの部屋だ。
ナディアは先ほどのユーテリアの言葉について考えていた。
(今の王家は安定していて表立って反抗的な家は無いと思ってたけど、水面下ではそんなことないということ?)
もっと詳しく聞いてみたい。だが、なぜかナディアから聞くのは憚られた。
無言で歩くのがどことなく気まずい。なにか話題は無いだろうか?そう思っていたのはナディアだけではなかった。
「・・・・・・まだここが王家の別邸だったころ、この【黒の塔】は兵士たちの待機場所だったんだ」
「王家の方々が滞在中の間、ここは兵士たちの詰所だったということですか?」
「ああ。いまはここらしか残されていないが、もっと沢山の塔が連なっていたらしい」
「それなりの人数を収容できますね。でもこんな窓もないところではゆっくりと休めなかったでしょうに」
ナディアはユーテリアの話を聞きながら周りを見渡した。
この塔には、一切の窓がない。
昼でも夜と変わらない暗さを保ち、堅牢に作られているためわずかな隙間もないので差し込む光もない。
手に持つこのライトが無ければ3歩先を歩く事すらできないだろう。
「元々あった窓はここを学園として運用すると決まったとき、学園生たちが無闇に入らないようにと塞いだらしい」
「なるほど」
確かに一般的な貴族の子女なら窓がない建物に入ろうとは思わないだろう。
今よりもさらに貴族としての品位が求められた時代ならなおさらだ。
(でも、それにしては・・・)
ナディアは前方右側の窪みに視線をやり、疑問に思う。
「兵士の詰所ということは、ここに女性はいなかったんですよね?」
「ああ」
「そうですか」
(じゃあ、アレはなんだろう)
ナディアの目線の先には人がすっぽり収まるくらいの窪み──そこにぼんやりとメイド服の女性が佇んでいた。
(随分と古めかしいデザインの服。ここにはメイドが出入りしてたのかしら?)
ぼやけているが色彩はある。
悪いものではなさそうだ。
でも、嫌な気配。
好んで近寄りたくはない。
ナディアの心中とは裏腹に、二人が進むたびに距離が縮まっていく。
あと、5m。・・・・・・4m、・・・・・・3m。
ナディアは何も言わない。
ただ静かに通り過ぎようとするだけだ。
・・・・・・2m、・・・・・・1m、・・・・・・50cm。
ナディアにしか見えないメイドとの距離がゼロになる。
メイドは微動だにしない。ただそこにいる。
目を合わせないように、だが視界の隅にメイドの姿を捉えたまま前を横切った。
・・・・・・。
何も、ない。無事に通り過ぎた。
ナディアはそう思っていた。
しばらく更新が途絶えてしまい申し訳ありませんでした。
続きを待っていてくれた方、たまたま見かけてくれた方、待ってないけどまぁ見てみるかと思ってくれた方。読んでくださりありがとうございます!




