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23 絶対そこってヤバい場所ですよね?

ブックマークと評価、ありがとうございます。


かなり遅くなってしまいました。。。


 ミリア嬢の調査を始めて今日で10日目。

私は木の枝に座りながら学園の女子寮を見張っていた。



 「・・・っくしゅん」



 この寒気は体調不良からだけでなく、寒空の下にいるせいでもあるのだろう。

時刻は21時を少し過ぎたころ。寮を見ると明かりがついた部屋の数が少なくなってきている。

寮の門限が18時なので出歩く人の姿はない。



「あーあーあー、寒いし眠いしお腹空いたし湯浴みしたい」



 夜中に大きな木の枝に座りながら愚痴を吐く伯爵令嬢・・・。我ながらシュールだ。

なんで私がこんな事になっているかというと、もちろんミリア嬢がらみである。


 4日前、ひたすら殿下を捜すミリア嬢を眺めるだけだった日々にようやく異変を感じられた。

ミリア嬢の周りの黒いモヤが濃く、大きくなっていたのだ。“黒い女”ほどではないが、近寄りたくない関わりたくないと思うぐらいは良くないもの。


 私は彼女が寮に戻るまでしか観察していなかったため、異変の原因があるならば彼女が寮に戻って以降だ。その原因を探るべく、私は夜通し張り込む事にした。

 もちろん、張り込んだ当日から何かがあるとは思っていなかった。昨日も空振りだったしおとといもその前も何もなかった。今日だって何事もなく朝を迎える可能性は十分にある。おかげでここのところの講義は身が入らない。まあどちらにしろ彼女と講義は被っていないので自分の講義をサボって彼女の講義に参加しているから自分の単位にはプラスにはならないけど。


・・・ならないけど。ないけども!


早いとこ解決しないと私の単位が大変なことになってしまう。マイナスにはならないけどプラスにもならないんだよ?いや本当に、冗談じゃなくてまずいことになる前に片付けたい。

・・・なのに!肝心の殿下が長期不在なんですけど、どういうことですかね?今回のことだって報・連・相することもできずに自分で夜も張り込むという考えに至ったわけですけどね!

 まあ、あんな腹黒王太子に相談することなんてないですけど?私一人で大丈夫だし?コミュニケーション不足だとかイチャモンつけられたってずっといない方が悪いんだし?そもそもあんな裏表のある王太子殿下なんて頼りにしてないし!


 木の枝の上でモヤモヤと自問自答しているとあっという間に22時になっていた。今日は新月のうえに曇り空だ。学園内なので周りに街灯なんてない。申し訳程度に足下の歩道を照らす灯りがポツポツと灯っているだけだ。つまり、結構な暗闇だということ。姿を隠すにはもってこいの状況だ。

 ちなみに、木に登って対象を観察するのも気づかれないように尾行するのも我が家では当たり前の技能だ。男女問わず幼い頃から施される教育の一環である。



 今日も何もないまま朝を迎えるのかなと思いながら寮を見ていると、明かりが灯った部屋がついに無くなった。私はマントに包まりながらじっと身を潜め続けながら警戒を続けた。





 動きがあったのは日付が変わってから2時間経ったころだった。

ミリア嬢の部屋に小さな明かりが灯った。間接照明の類いだろう。

 


(出てくるか?)



 ミリア嬢の部屋は2階の一番端っこで、真下の部屋は物置になっている。必然的に出入り口からは遠いため窓からの出入り、もしくは真下の部屋から出入りする可能性がある。

 寮の出入り口とミリア嬢の窓、それから真下の物置の窓を注視しながら敷地内の地図を頭の中に思い浮かべた。敷地外に出るには見回りを避ける必要があるのでルートを確認する。

 私は息をひそめたままミリア嬢が出てくるのを待つ。


──来た。


 真下の部屋の窓からゴソゴソと出て来たのはストールを頭からかぶったミリア嬢だ。

結構な薄着のように見えるが寒くないのだろうか。


 周りを気にしつつ歩き始めた彼女の後ろを慎重に追いかける。


(あれ?)


てっきり敷地の外へ行くのかと思っていたのに、彼女は敷地の奥へと進んでいく。


(私の知らない裏ルートでもあるの?)


不思議に思いながら後をつけていくとますます奥へと進む。どんどん奥へ向かう彼女は迷いなく進んでおり、始めてではなさそうだ。


 学園の敷地はとても広い。

ここは元々、王家の別邸を改装してできた学園だ。王家の別邸だっただけにその敷地はとても広い。学園生が利用する場所は建物の周辺がほとんどで、周りは小さな森になっている。

 私も迷わないように目印を付けながら進む。曇り空にわずかにあった星の光すら見えないほど、周りを木に囲まれていた。




 しばらく歩くと、建物が見えてきた。木々が生い茂る中、ぽっかりと空いた空間にそびえ立つ建造物は10階ほどの高さだろうか。壁がはがれている部分も散見され古いように見える。

 今にも崩れそう、というほどではないが好んで中に入りたいと思わない。そんな建物の扉を開け、ミリア嬢は躊躇なく入っていく。


(ちょっと、本気であの中に入るの?!すっごく嫌な気配なんだけど)


夜だからそう思うだけだろうか?でも最初に目にしたときからとても嫌な気配をあの建物から感じる。近づきたくないと思うのは見た目からだけではない。


 結局、彼女が出てくるまで私は木の上でひたすら待ち続けていた。





 しばらくして出てきたミリア嬢に、私は思わず顔を顰める。

彼女の周りを禍々しい黒が覆っていたのだ。



集中して視なくてもわかるほど黒いのに、

新月の闇の中でもはっきりと認識できるほどの禍々しさ。

今までの比じゃない。



それぐらいならまだ我慢できた。・・・だが。




(な、に?なん・・・ひっ!)



ミリア嬢の周りを漂っていた黒いモヤ。

それが女の姿になった。


背筋が冷える。



あの、“黒い女”だ。




“黒い女”が、ミリア嬢を包むように影を落とす。




ミリア嬢が森に消えていくのをただ呆然と見ていることしかできなかった。




 


読んでくださりありがとうございました。

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