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14 お兄様はやっぱりお兄様です

ブックマークや評価ありがとうございます。励みになってます。

 


 ——

 ———

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 久々に嫌な記憶がよみがえってしまった。

確実にトラウマになっている記憶で、でも私にとって1回目の転換期になった出来事だ。恐怖より怒りを強く感じた出来事。死の危険は感じなかったけど、今の私のベースとなる出来事だった。


 

 食欲がなくて今日のディナーは断った。シェフに申し訳ないことをしたなー。その分あしたたくさん食べるから許してね。・・・明日が平穏に終わればだけど。


 ベッドで横になりぼーっと天井を見ている。何も考えたくないというより頭がカラッポだ。ただ脳みその休息をとっているような、そんな感じ。帰ってから着替えもせずお茶も飲まずそのままだから髪も服もグチャグチャだろうなあ、なんて他人事のように考えていたらノックが聞こえてきた。 



 「お嬢様、お加減はいかがですか?」



ライアンの声だ。



「うーん、うん。まあ大丈夫」


「軽食をお持ちしますか?」


「んーん、いらない」


「体調が悪い訳ではないのですね?」


「・・・うん」


「ではお嬢様、旦那様がお呼びです」


「・・・あ゛・・・忘れてた」



 そうじゃん!ぼーっとしてる場合じゃないじゃん!お兄様に殿下の様子を報告しろって言われてたじゃん!いろいろあって忘れてたよ。

 結局、殿下の観察は途中で終わっちゃったんだよね。でもまあ、殿下の様子を報告するとして、殿下と話したことやその内容まで言うべきか否か。悩むわー。



「お嬢様?」


「ごめんごめん、いま行くわ」



 ライアンをこれ以上待たせるのも申し訳ないし、身支度はいいよね別に。

 髪とドレスを簡単に直してドアを開け、ライアンを伴いながら書斎へと向かった。




■■■■■■




 私とお兄様はいま、サロンでお茶をしている。何も口にしていなかったせいか、喉が潤ったら甘いものが欲しくなりデザートに出される予定だったプリンを持ってきてもらった。やっぱうちのシェフが作るスイーツはおいしい。



「おいしいかい?」


「とってもおいしいです」



 お兄様は優しく微笑みながらカップを傾ける。


 私たちがなぜお茶をしているのか?

 それは数十分前に遡る。・・・が、わざわざ回想するほどのことでもない。簡単なことだ。私はお兄様に全てを報告したから今後のことをゆっくり相談するために場所を移し、私が何も口にしていないことを知っているお兄様がお茶を用意させた、というだけのこと。まあ、全てを報告といっても殿下を介抱した詳しい内容についてはまあ、その・・・ね。

 

 お兄様には今日の殿下の様子(リゼット嬢からの情報&二人で話したこと含む)と婚約破棄騒動のときに見た内容と私の見解を伝えた。案の定、黙ってたことをお兄様にネチネチ言われたけど。

 それでも、今日ほどカロン家当主がお兄様で良かったと思ったことはない。お兄様はお父様よりも私の力に理解がある方だから。お母様ほどじゃないけど。



「ナディア、その“黒い女”に見覚えはないんだね?」


「はい。まったくありません」


 

おっと、まだお兄様とこれからについての相談中だった。



「そういえば、ミサンガ変えたのかい?」


「ああ、いえ。実は殿下を介抱したときに切れてしまったみたいで。予備のミサンガを出したんです」 


「ミサンガが切れた・・・?」


「私もよくわからなくて。もしかしたら解れていたのかもしれませんね」



 何やら考え込むお兄様を見ながらお茶を一口飲む。あ、ラズベリーの香りがして美味しい。



「・・・今後のことだけど、殿下は正気に戻りかけているようだけどまだ不安定な状態だ。正気に戻る手助けになったのがナディアの存在だというなら、明日からずっと殿下に張り付いていれば本当に良くなるかもしれないよね」


「ぐっ、ごほっごほ」



お茶が変なとこに入りかけた!



「お、お兄様!?」



何てこと言うのさ!ほんと、それだけは勘弁してください。殿下に張り付いて“黒い女”の矛先がこっち向いたらどうしてくれるのさ!いや、それもだけど一緒にいるところを見てミリア嬢が何て言うか・・・。



「でもまあ、ナディアはこれ以上殿下と関わりたくないんだろうね。その“黒い女”に敵認定されたくないんだろう?」



・・・さすがです、お兄様。よくわかってらっしゃる。



「私も、かわいい妹をわざわざ危険な目に遭わせるようなことはしたくない」


「お兄様・・・!」



妹思いなお言葉に思わず両手を組んで見つめてしまう。そうですよね、いくらカロン家当主とはいえお兄様はお兄様ですもんね。昔から私に(時々怖いけど)優しいお兄様ですよね!



「じゃあ、これから私は殿下と距離を置いて──」


「でもそれだと王家の守護者(カロン家)としての面目が立たない」



おにいさま?なんだか目が怖いですよ・・・?



「だから、妥協案としてナディアは『殿下を守る念』を込めたミサンガを作ること」


「げ!」


「こらこら、令嬢がそんな声出しちゃダメだって教えただろう?」



再教育が必要かな?なんて首を傾げるお兄様。ごめんなさい、気をつけるので勘弁してください・・・じゃなくて!



「あ、あれは、1本作るのに最低でも2日はかかるしめっちゃ疲れるんですけど・・・」


「明日から土曜日だし時間は取れるね。足りないなら学園を休んでもいいよ。疲れるかもしれないけど、ナディアもカロン家の者なんだから王家のために働かないと。それと言葉遣いも気をつけようね」



そ、ん、な・・・。



「なーに、ほんの少しだけ殿下のために働けば、もう()()()()殿下の護衛まがいのことは頼まないよ」



 お兄様はお茶を飲むと、何でもないように言った。








読んでくださりありがとうございます。

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