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31.迷宮産スキル

 「どうしたんだ? スキル名的にはそう悪くないスキルに思えるんだけどな。何か知っているなら教えてくれると助かるんだが」

 「そこには、本当に〈魔素吸収(小)〉って、書いてあるの……よね?」

 「ああ、そうだ。……何かあるならはっきり言ってもらっていいぞ。仮にも、〈身体強化(極小)〉なんて弱小スキルを授かった身だ。どんなスキルだろうと驚かないさ」


 言いづらそうに口ごもるイネスの不安を、アルクはあっさりと笑い飛ばした。

 そもそもアルクが迷宮に来た目的は別にあるため、何か得られれば儲けものくらいの感覚だったというのもある。

 そんなアルクの様子にイネスは意を決したように口を開いた。


 「それも、そうよね! じゃあ言うわよ」

 「ああ、頼む」

 「〈魔素吸収(小)〉はね。〈歩行補正〉・〈呼吸補助〉に並ぶ、迷宮産の中でも三大底辺スキルと呼ばれるものの一つよ」

 「……えっ」


 アルクは思わず驚きの声を漏らしてしまった。

 底辺スキルと聞いただけでは驚かなくとも、さすがにほか二つのスキルと比べられる程度のものだとは想定していなかったのだ。


 「ちょっと待て。歩行と呼吸のスキルだって? 仮にも魔素の吸収ってことは、魔力が足りなくなったら少なからず補えるんじゃないのか?」

 「その魔素の吸収量が問題なのよ。中以上ならかなり有用なスキルなんだけど、小に限っては……はっきり言って役に立たないわね」


 上げて落とすとはまさにこのことだろう。

 まさかここまで評価が低いスキルだとはアルクも思っていなかった。


 「ちなみに、ほかの二つのスキルはどの程度の効果があるんだ?」

 「〈歩行補正〉は長旅だと便利みたいよ。山道や泥道なんかの悪路でようやく効果が実感できる程度みたいだけれど。〈呼吸補助〉は酸素の低い場所とかで有効で、水中でもほんの少しだけマシになるくらいの効果はあるみたいよ。まあ、どちらもたかが知れてるけどね」

 「そうなのか」


 どうやら全く役に立たないわけではないようで安心していると、イネスが最後にとんでもない一言を付け加えた。


 「〈魔素吸収(小)〉に限ってはそういう期待はしないほうがいいわよ。魔素の濃さにもよるけど、年間通して魔力回復薬一本分にも満たない回復量なんて、あってもなくても変わらないでしょ?」



 ◇



 アルクがイネスから聞かされた驚愕の事実に打ちひしがれていると、いつからか階層内の崩落が次の段階に進行していたようで、地面が大きく揺れ動き始めた。


 「そろそろ脱出に動いたほうがよさそうね」

 「そうだな。脱出する前に一つだけ確認しておきたいんだが、壊した迷宮の核は回収しておいてくれたってことでいいんだよな?」


 実は、アルクは気絶から目を覚ましてすぐに、周辺の魔力反応を探って迷宮の核が落ちていないかを探っていた。

 どこにも反応がないことから、イネスが持っていると踏んでいたのだ。


 「ええ、持ってるわよ。見つけたときにはバラバラに砕けてたから欠片の状態だけど、魔力媒体としては便利だし。何かに使うの?」

 「さっき話したおばあさんの病気を治すのに必要でね」

 「そっかあ。ふふ、早くよくなるといいわね」

 「ああ、絶対に治して見せるよ」

ここまでお読みいただきありがとうございます。

おかげさまで本話投稿時点で……なんと5600PVを超えました!!

評価くださった皆様に感謝いたします!


とはいえ、毎日投稿もやり切ったので執筆は一旦お休み……。

再開予定は6月末までにはあらすじに掲載させていただきます。


次回は、迷宮の脱出後は日常回をメインにして、次の迷宮の探索パートに入れたらいいなと考えています。(希望的観測)


感想だけでなく、ご意見・ご要望やご指摘等々ございましたらお気軽にどうぞ。


今後とも本作をよろしくお願いいたします。

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