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3.忍び寄る影

 畑仕事を終えて、帰宅したアルクは居間で倒れているおばあさんを発見した。

 医者を呼ぼうと立ち上がるアルクをおばあさんは手で制した。


 「おやめ、あたしは大丈夫だから」


 その一言で我に返ったアルクは、その場で立ち尽くしてしまう。




 (そうだよね……そんなこと、わかってるよ)


 おばあさんの容態はかなり悪い。

 顔は青ざめ、尋常でない量の汗をかいている。

 それでも助けを呼ぶわけにはいかなかった。




 おばあさんは人々から魔女と罵られ、街では目深にフードをかぶっている。

 アルクも無能と馬鹿にされており、街に行くことはほとんどない。


 そんなアルクがおばあさんの助けを求めに行ったところで、からかわれるだけなのが落ちだろう。下手をすれば、これを好機と見た一部の狂人が魔女狩りと称して押し寄せてくるかもしれない。


 (そんな危険なこと、できるわけない)


 落ち着きを取り戻したアルクは、何かできないかと周囲を見回した。

 そこでふと、棚の上に置いてある小さな壺が目に留まった。




 「おばあさん、少しだけ待ってて。すぐに薬草を探してくるからね!」



 ◇



 アルクは林の中を駆けていく。

 魔獣と呼ばれる恐ろしい怪物が出るという森が近くにあるものの、今は一刻を争う状況である。慎重を期して、時間を無駄にはしたくなかったのだ。




 幸い、探していた薬草はすぐに見つかった。

 鞄にしまう時間すら惜しくて、薬草を握りしめて急いで家に帰った。



 ◇



 意識を朦朧とさせていたおばあさんに、薬草を煎じて飲ませていると、苦しそうな表情がいくらか和らいでいった。


 そのあとも看病を続け、濡らしたタオルを交換していたときだった。

 畑のほうからガサガサと物音が聞こえてきた。


 「なんか動物でも出たのかな?」


 念のため、威嚇用に(くわ)を手に持って、家の裏手へと回った。



 ◇



 畑に着いたアルクは、見るも無残に荒らされた畑に唖然としたあと、近くの草むらから現れた生物を目にすると、慌てて鍬を構えた。




 「グゲゲ。ニンゲン、ウマソウ」


 草むらから現れたのは、緑色の小さな身体で、醜悪な笑みを浮かべる異形の怪物――コブリンだった。

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