11.冒険者登録
「あのー。もしかして、これってゴブリンの……」
「そうだね、そのゴブリンの耳だね」
「しょ、少々お待ちを!」
そう言うなり、慌てた様子でカウンターの奥へ駆け込んだ受付嬢を見送っていると、周りで静観していたらしい冒険者たちが、またこそこそと話し始めた。
「なあなあ、ゴブリンだってよ」
「やっぱりさっきのってマグレなんじゃ……」
「おい! 聞こえちまうだろうが。もう少し静かにしろ」
好き勝手に言い合う冒険者を無視して待っていると、すぐに受付嬢が戻ってきた。
「すみません、お待たせしました! ゴブリンキング三体の討伐を確認しましたので、まずはこちらが討伐報酬の金貨三枚と――」
「「ご、ゴブリンキングっ!?」」
「ふぇえ!!」
冒険者たちの大声に驚いて、受付嬢が素っ頓狂な声をあげる。
「あー、大丈夫?」
「……こほん、大変失礼しました」
軽く咳払いをした受付嬢は、改めて取り出した金貨をカウンターに並べると、その横にアルクの名前が刻印された小さな銀のバッジを置いた。
「こちらがCランクの冒険者章になります。ゴブリンキング三体の討伐と……先程のグスタフさんの件も含めまして、Cランク相当の実力があると判断されました。おめでとうございます」
「どうも」
「それと、Cランク以上の冒険者さまには特典がございまして、”ステータスカード”というものを無償で配付させていただいているのですが、ご入用になりますか?」
「それはどういうものなのかな?」
「はい、ステータスカードは鑑定スキルと似た効果を持つ魔導具になります。魔力を登録されますと、登録者本人もしくは登録者が許可した方だけが、カードに登録されている人の状態を字面で確認することができます」
「じゃあ、もらおうかな」
「かしこまりました」
受付嬢はカウンターの下から水晶を取り出して、アルクの前に置いた。
「それでは、魔力の登録を行いますので、こちらの水晶に手を当てて魔力を送ってください」
「わかった」
アルクが水晶に魔力を流すと、透明だった水晶の内部に淡い光が生じていく。
光の変化が緩やかになったところで、受付嬢は半透明の薄板を水晶にかざした。
「ありがとうございます。これにてステータスカードの魔力登録は完了になります。カードを使用したいときには、魔力を送って念じてもらえれば表示できます。また、カードには収納スキルの効果も付与されていますので、同様に念じるだけで自由に出し入れすることができます」
「なるほど。便利なもんだな」
ステータスカードを受け取ったアルクは、早速魔力を送って魔導具を起動させる。
ところが、そこに表示されたのは、予想だにしない内容だった。
◆登録者情報
名前:アルク
状態:正常
スキル:〈真・身体強化(極小)〉
※初回メッセージ
各項目に指で触れることで詳細を表示します。




