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10.再会

 「アルクちゃんよぉ、ずいぶんと久しぶりじゃあねぇか。しばらくぶりに話でもしたいところだけどよぉ……その前に、なーんか忘れてねぇかあ?」

 「ああ、久しぶりだな、()()()()。……まあ確かに、話をする前に()()()()()()()もらわないといけないかな」

 「アア?」


 その途端、グスタフの額に青筋が浮き出ち、全身がピクピクと震えていく。


 「テメェ、引きこもり過ぎてボケちまったのかァ!? クソザコの分際で、このグスタフ様に舐めた口聞いてんじゃねえぞッ!」


 怒鳴り声をあげたグスタフは、半歩後ろへ下がりながら、流れるような動作で背中に背負った大剣を抜いて大上段に振り上げる。

 本来、ギルド内での暴力行為は禁止されているのだが、ギルド職員も含めて誰も彼を止めようとはしない。それが示すのは”冒険者グスタフ”の確たる地位の証明であった。


 Bランク冒険者にして、”オーガキラー”の異名を持つ高位の冒険者。

 それが彼の冒険者ギルドでの立ち位置である。


 人ひとりを丸呑みできるほど巨大で強靭な肉体を持つオーガさえも真っ二つにする恐るべき大剣が掲げられ、その場にいた誰もが目の前の青年の死を確信した。

 とはいえ、誰一人として青年に同情するようなことはない。

 ろくなスキルすら持っていない者など、貧民や奴隷か、路上の卑しいこじきくらいしかいないのだ。そんな底辺の人間ごときが、上位冒険者に逆らうなど無礼な行為に他ならない。

 自分がしでかした愚かな行為の報いを受けるだけなのだと、ある種の達観した心持ちでその結末を見守っていた。

 ところが、事態は思わぬ方向へと転がっていく。


 グスタフが大剣を頭上に持ち上げたまさにそのとき、素早く前進したアルクが互いの身体が接する寸前まで近づいた。

 そこで何かする様子もなく、そのままスッと身体を後ろへ離すと、何事もなかったかのように受付のほうへと踵を返す。


 「う、ぐぅ……」


 アルクが去ったあとには、腹を押さえて膝から崩れ落ちるグスタフの姿があった。


 「な、何が起きたんだっ?」


 アルクは戸惑う冒険者たちを無視して再びカウンターの前まで行くと、ぽかんと口を開けたまま固まっている受付嬢に声をかけた。




 「あー、すまないけど、冒険者登録をお願いできればと」

 「ふぇっ! あ、はい! 冒険者登録ですね」



 ◇



 声をかけられて放心状態から戻った受付嬢は、先程とは違い落ち着いた様子で事務的に冒険者についての説明を行っていった。

 流れとしては、ギルド協会所属の冒険者としてのルールから始まり、F~Aまでのランク制度について、依頼の種類やそれぞれの達成基準、素材の買い取り方法に至るまでさまざまな説明がされた。




 「ところで、すでに討伐した魔物の素材があるんだけど、今出しても構わないかな?」

 「ええ、もちろんです。ここで見せてもらえれば、そちらをランクの査定にも反映させていただきます」

 「それで、これなんだけど」


 受け取った小袋の中身を見て、受付嬢は目を見開いた。


 「こ、これって……!」

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