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1.少年は家を追い出される

 生まれ持ったスキルで人生が決まる。


 それがこの世界の常識だ。


 十歳を迎えた子どもは、祝福の儀で鑑定を受けてスキルが判明する。

 田舎町で生まれ育ったアルクも儀式に参加し、スキルを告げられた。

 かくして、そのスキルの名は――。


 「――〈身体強化(極小)〉っ!?」


 それは、アルクも聞いたことがないスキルだった。




 〈身体強化〉自体は、ごく一般的なスキルである。

 冒険者の大半はこのスキルを取得しているし、現在の最高ランク冒険者が〈身体強化(大)〉持ちであるのは有名な話だ。

 それだけを聞けば悪くないスキルにも思えるのだが、現実はそう甘くない。


 前述の冒険者として活躍できるのは、〈身体強化〉の種類が”中”以上の人たちだけなのだ。

 それも、祝福の儀を受けたほとんどの人は〈身体強化(小)〉を授かる傾向があり、〈身体強化〉のスキル評価は、庶民が多く持つスキルという印象が強い。


 〈身体強化〉以外のスキルは戦闘系と非戦闘系に区分され、戦闘系で有名なスキルは〈剣術〉や〈魔力強化〉などがあり、冒険者向きだ。

 ちなみに、これらはたとえ”小”であっても優遇されるスキルである。


 非戦闘系スキルは職業特化型とされており、〈農作〉や〈料理〉などが有名で、これらもまた各方面で活躍できる可能性がある。


 では、〈身体強化〉持ちである多くの庶民はなんの仕事をしているのか、という疑問が当然浮かぶわけであるが、そこから導き出される答えがアルクの今後の運命を如実に物語っているといえるだろう。



 ◇



 アルクの両親は二人とも〈身体強化〉のスキル持ちである。


 父親は崩落の可能性がある危険な坑道で作業員として従事していた。

 母親は小作人で、〈農作〉スキル持ちの下働きとしても働いていた。


 生活はぎりぎりではあったが、それでも奴隷でないだけましだった。




 やがて、子どもが生まれた。

 母親は泣いて喜んだが、父親は顔をしかめた。


 「お前のせいで生活が苦しくなった」


 いつからか、それが父親の口癖になった。




 それから更にときが経ち、子どもは少年となり、十歳を迎えた。

 祝福の儀から帰宅した少年の報告を聞き、父親は息子を殴り飛ばした。




 そのまま少年は家を追い出された。

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