異世界に家出して冒険しています(3)
一応、毎日、一回の投稿を目標としています。
その直後、多分、一分も時間は経っていない。
しかしアーシャやユウマにとっては、もっと長い時間を感じた時間の後で、激しい爆発音が聞こえた。
間違いない火薬の爆発音だ。
そして次の瞬間、崖から一機に土砂が落ちて来た。
もともと崩れかかっていた崖が、火薬の爆発の衝撃でひとたまりもなく崩れた。
そのことをユウマ達は知っていた。
「ええい、しつこいのだよ。」ユウマはなおもロープから這い上がってくるゴブリンを蹴り飛ばし、地面に落とす。
そして、次の瞬間にゴブリンたちは土砂に呑まれていった。
「やった!」アーシャの声が聞こえて来た。
「はあ、死ぬかと思った。」ようやく木に登り切ったユウマが声を吐息をもらす。
時間にして数十秒単位に過ぎないが、崩れた土砂に百を超えるゴブリンが呑まれて消えていくのをユウマたちは確かに観ていた。
「うぎゃー」
「ぐがあ、」
そんな悲鳴がゴブリンたちから聞こえて来た。
「アーシャ。アレ」ユウマが下を指す。
「ええ。」アーシャは頷く。
そこには木の幹にへばりついたゴブリンの姿があった。
アーシャは、黙って弓を引く。
こちらを見つめるゴブリンの表情は確かに恐怖と悲嘆があり、哀れみさえ誘うものだが
ユウマたちは何も言わない。
びん、と弦をはじく音がすると、次の瞬間、ゴブリンの額に矢が突き刺さり、落ちて行った。
土砂はすぐに止まったが、それでもしばらく木から降りる気にはならなかった。
死に物狂いで逃げていたから、息切れが続いていた事が大きいだろう。
静まり返った地で、最初に動く気配を感じたのは、場違いのフルアーマーを纏った長身の影だった。
「ゴリアテ、うまく行ったな」ユウマは木から降りる。
崩れた土砂で、地面は2Mくらいもかさ上げされていた。
「ガー、ザァー」とラジオのノイズ音のような音がゴリアテから聞こえて来た。
「ああ、作戦通りだ。」ユウマは答える。
ユウマやアーシャには、ある理由でノイズ音にしか聞こえない。ゴリアテの言葉が理解できる。
「まさか、これを実際にやる事になるとはおもわなかったけど。」木から飛び降りたアーシャがそんなぼやき声を漏らした。
「念のために準備しておいてよかっただろ。」ユウマが笑った。
「うまく行くとは思ってなかった癖に」白い目でアーシャがユウマを見た。
実際、そうだった。
そもそもゴブリンたちをおびき寄せて土砂崩れで一機に皆殺しにしようとは、ユウマの発案であったが。
そもそも最初にゴブリンの巣穴に乗り込んだ時に片付ける事が出来れば、こんな作戦は必要なかったわけであり。
ユウマにしても、実際にやる事になるとは思わなかった。
あくまで念には念を入れての作戦だったわけだ。
「ま、そもそも言えば、火薬を充分な量、用意出来たら済んだ話だったのだけどさ。」ユウマがぼやくように言った。
最初は、少々、数が多くとも手製の手りゅう弾で充分だと思ったのだが
「仕方ないでしょう。材料が足りなかったのだから」アーシャが言い捨てる。
「ガァー」ゴリアテがまた何かを言っていた。
とにかく、作戦は成功したが、まだやるべきことは残っている。
ユウマはゴリアテに向かって頷いた。
これでひとまず。本作のプロローグが終わりという位置づけです。