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誰か私をお宅に住まわせてください(だれすま)  作者: 乾燥バガス
誰か私をお宅に住まわせてください
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第67話 アイーアへの旅行プラン

   *   *   *


 ――ロックがパロを警備隊に引き渡した数日後のことである。


 ダイニングルームで僕とネイ、ルビィとシィ、キャスティとデルファ、ゼロとフェルミ、そしてロクシーが食事をしていた。


 今日の夕食は、鶏肉と野菜たっぷりのグリルだった。フェルミの為に安価な芋や根菜を沢山入れているとのことだった。フェルミが好き嫌いが無いのは幸いしている。大食いのフェルミに野菜が嫌いなどと言われると、食費がかさんで仕方がないというものだ。


「ねぇロック。アイーアにロクシーとデルファが行くんだけど、どうしたら良い?」


 ネイが突然、僕に話を振って来た。


 アイーアに行くことの是非では無く、それを前提として『どうしたら良い』と来たもんだ。


「ロクシーは分かるけど、何でデルファなんだ?」


「キャスティの代わりよ。」


 ああ、何となく話が見えてきた。


 キャスティが遠出する理由の一つは転送の仕組みを作ると言うことだろう。それ以外は、魔法関係とかあるのだろうが僕には思いつかない。僕に思いつけない事を前提にネイは話さないだろうから、多分、これが理由だろう。


「デルファが仕掛けを作れるのか?」


「そうらしいわ。ここも殆どデルファが作ったらしいわよ。」


 そういえば、手ぶらのキャスティが、工具やら木材やらを持ったデルファを先導して宅内をうろうろしていたな。


 それは納得したとして、ネイの『どうしたら良い』と言う質問の答えか……。僕は肉をゆっくり咀嚼しながら考えてみた。


「ネイは行きたいの?」


「久しぶりに行ってみたい気はするわね。面白い品も見つかるかも知れないし。」


 アイーアに行ったことが有るのか。まぁ、四百年も生きていればそういう事もあるか。


「じゃぁ、僕も行くよ。アイーアには行ったこと無いしね。」


「カラーズはどうするのよ。」


「僕とデルファとゼロが抜けても活動はできるだろう。手が足りない時は、ディムやレムを巻き込めば良いことだし。僕たちが巻き込まれるばかりじゃ損だろ?」


「団長代行は誰がするんだ? 俺はできないぜ?」


 ルビィが割り込んできた。一緒にアイーアに行くと言ってこなかったのは意外だったが。


「フォトラで良いだろ。ディムを冒険者として指導したことも有るし。」


「だな。」


 ルビィが納得した様に言った。


「ルビィがアイーアに行くと言ったら、ワタシが絶対に断ろうと思ってたデス。そうしたら、シィにもう一度貸しが出来たのデスが……。とっても残念デス。」


 ちょっと不貞腐れた様に言うロクシー。


「あらぁ、でも今回はデルファが一緒に行くんでしょぉ? 良かったわねロクシー。ゆっくり船の上で男性恐怖症を克服すると良いわぁ。」


 シィがずり落ちた眼鏡を戻しながら、上機嫌で言った。


「じゃあ、ロクシーとデルファ、ネイと僕とゼロでアイーアに行くってことで良いかな。いつ出発するんだ?」


「数日後には出たいんだけど。」


 ネイが答えた。


「請け負ったクエストが一件あるんだ。明後日なんだけど、それが終わったらで良いかい?」


「もちろんよ。ロクシーが調べたアイーアへの船便は四日後よ。明日、私もその船に行って確認してくるけれどもね。」


「分かった――」


 その時、玄関の方から戸を叩く音が聞こえた。


「どうせ、ディムでしょ。」


 王子に対して身も蓋も無い言い方をするネイ。シィが手早く手に持っていたナイフとフォームを置き、席を立った。


「ちょっと見てくるわねぇ。」


 何も言われないのにルビィが同行した。


   *   *   *


「お食事中、すみませんね。」


 お誘いした食事は断り、水だけをシィにもらったディムが言った。椅子に腰かけ、その隣ではレムが座っている。


「お土産ぐらいは持って来たんでしょうね。まぁ、手ぶらで来るほど間抜けじゃ無いんでしょうけどね。」


 ネイがディムに言った。


「そうですね、話題を二件持ってきましたよ。その前に、挨拶をさせていただけますか?」


「ロクシーよ。で、こっちがサルファ国の王子のディム。これで良いかしら?」


 挨拶なんてどうでも良いと言う風に紹介するネイ。レムがディムの見えないところで口に手を当て笑いをこらえている。


「よろしくお願いします。ネイとロックには懇意にしてもらってます。僕の立場は公にしないで頂けると助かります。」


 ロクシーは会釈をしただけだった。まぁ、そうだろう。見慣れない男だしな。


 ネイはずっとジト目でディムを見ている。


「それで? 話とは?」


 僕は尋ねた。


「一つはロックの魔法装備(アーティファクト)の件です。残念ながら黒幕は今のところ分かっていません。」


「そうなんだ。」


「ロックが魔法装備(アーティファクト)を持っているという情報は、恐らく盗賊団の生き残りから得たものと思われます。」


「確か、ニオンだったな。」


 僕は盗賊団唯一の生き残りのヤツのことを思い出しながら言った。


「ええ。ただこれも、情報源がそいつだろうと言う事が分かっただけで、情報ルートは判明してません。警備隊員が漏らしたかも知れませんし、ニオンを牢に収監していた時期に被って収監されていた容疑者や軽犯罪人かも知れません。これらを追跡するには、コストが掛かるので本追い出来ていないのが現状です。」


「あなた、警備隊の内情をここでペラペラと喋って良いの?」


 ネイがディムに聞いた。


「僕がここで話したことは内密にお願いします。みなさん。」


 ディムがしれっと言った。


「僕からも頼むよ、みんな。」


「そして、放火魔の件ですが、パロが口を割りましたよ。

 それにしても、彼を捕縛し、自供まで追い込むなんて流石ですね、ロック。」


「それは良いんだけど、ディムは随分鼻先を突っ込んでいたみたいだな。」


 パロは『掃除屋』に殺害を依頼していたんだぞ。


「ええ、ちょっと軽率でしたね。しかし、パロが狙ったのは冒険者のディムであって、サルファ国王子では無いですよ。」


「同一人物だから、死んだら一緒だろうに。それで『掃除屋』って何なんだ?」


「いわゆる裏の組織ですね。金で人殺しを請け負うんです。ただし、悪人限定の様ですね。依頼人が嘘をついていたら依頼人を始末するみたいです。殺しの対象が殺す程でも無い悪人の場合は、殺しを執行しない様です。我々には良く分からない基準なんですけどね。行動動機が今一つ理解できないんですよ。暗殺集団の様に金目当てとも言い難いですし。

 そして当然、違法なので警備隊も追っているのですが、国を跨って広域に転々と活動をしている様で、足取りは掴めてません。ロックは何か知ってますか?」


「リーダー格のアベンドと言う名の長剣使いの男、争い好きの鎌使いのパリエラという名の女、短剣使い、いや体術も使ってたメリークという名の女。それぐらいしか知らないな。赤で縁取った黒い外套を着ていたけど、いつも着ているかどうか分からない。その規模も分からないな。」


 僕がそう答えると、ネイが言った。


「マグシムネに行った帰りにすれ違った連中ね。あの時は二人しかいなかったけど。」


「他にもう一人仲間が居たってことだね。」


 僕はそう答えた。


 仲間……。そう言えば奴らに会う前に大人のキャスティを見かけたんだった。あの姿で何をしてたんだろう? 大人の姿をしていたから何か理由が有ったのかも知れないな。ここでは何だから後で忘れない様に聞いてみよう。


「話を戻しますね。

 放火魔の件は、我々国を預かる者として感謝しているんですよ。」


 ディムが言った。


「それで?」


 ネイが問うた。


「その内、謝礼と依頼があると思います。」


 依頼だと?


「前の世界の物語では、英雄が褒美を受け取って喜んでいると、その褒美にまとわりついた義務が生じることが良くあったでござるよ。気を付けた方が良いでござる。褒美を送る側は、義務を負わせる為に褒美を贈ろうと考えることが多いでござる。」


「前世の話はさておき、アルならやるでしょうね。」


 珍しく、ネイがデルファの妄想話を全否定しなかった。


「……あれはそういうことね。準備をしておかなきゃ……。」


 そしてネイは一人事を呟いた。これは嫌な予感しかしないな。


ロック:「数日前、街門で大人になったキャスティを見かけたんだけど、外に出てたのかい?」

キャスティ:「え!?」

ロック:「いや、大人になって外に出歩くんだな~って思ってさ。」

キャスティ:「ちっ。不味ったか?」

ロック:「って、ちょっと。キャスティ、何処に行くんだ?」


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