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誰か私をお宅に住まわせてください(だれすま)  作者: 乾燥バガス
誰か私をお宅に住まわせてください
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第65話 掃除屋

   *   *   *


 ――デルファがロックの部屋に変わり身ゴーレムを持ってきた翌日のことである。


 僕とフェルミとゼロは小高い坂道沿いを歩いている。変身後の装備をもう少し充実させるために武器屋や防具屋などを巡るためだ。


 坂道の片側は崖になっており見晴らしがいい。今日もいい天気だ。サルファの街はにぎわっている。街門もここから遠くなく、出入りする人々の表情も良く見える。船着き場は此処からは見えないが、きっと今見ているこちら側と同様に人々が往来しているのだろう。


 フォトラへの変身のからくりの準備は、既にその準備を終わらせているルビィとデルファが担当している。ルビィ曰く、二人とも変身後はばっちりかっこよくなっている、とのことだ。


 ちょうど今、僕らとは別行動してフォトラの家に向かっていた。


 僕らは、変身に必要な変わり身ゴーレムを屋敷の客室一室に集め、その部屋をゴーレム設置専用部屋にしておくことにした。デルファによるとキャスティからの指示でもあるらしい。フォトラの変わり身ゴーレムも屋敷に置いておくことになる。なので、あの屋敷に住んでいないフォトラの準備は、その手順が大変そうだ。


 そんなことを考えながら崖の下を見ていたのだが、ふと、街門から入ってきた一人の女性に目が留まった。


 よく見ると大人になったキャスティだ。


「え? キャスティ!? なんで!?」


 僕は思わず叫んでしまった。


「どうしたん?」


 トウモロコシを両手に持っているフェルミが僕の方に歩み寄りながら聞いてきた。キャスティらしき人は突然踵を返し、街門の方に向かった。


「ちょっと気になることが。付いて来て。」


 僕は街門の方に走った。フェルミとゼロは僕に付いて来た。


   *   *   *


 街門近くに来てもキャスティらしき人は見当たらなかった。先ほど最後に見たキャスティは、街門に向かっていたから門を出ているのかも知れない。


 さらに僕は街門を出て、回りを見渡したがキャスティらしき人は見当たらなかった。


「誰か探しよるん?」


 トウモロコシを齧りながらフェルミが聞いてきた。クロガネは持っていないが四本の剣は装備している。例の凶悪な鉄製ブーツは履いていないので、ずいぶん背が低かった。


「うん。滅多に見かけるはずじゃない人を見かけたんだけど、人違いだったのかな?」


 僕は、周りを改めて見渡した。


 ん?


 そこには冒険者風の鬼人族(ラセツ)の女から肩を組まれている男が居た。まるで男が女から逃げられない様にするために。その男は、僕の家が火事だった時に塩水をくれた人だった。


 放火魔の容疑者じゃないか! そして鬼人族(ラセツ)の女は、確かパリエラ……。


「後を付けるぞ!」


 僕は彼らを指さしてフェルミに言った。


「あ!」


 フェルミもパリエラに気づいた様だ。


「フェルミ、手を出すなよ。尾行するだけだからな。ゼロ、代わろう。そして後ろから付いて来てくれ。」


「にゃ」


   *   *   *


 アベンド、パリエラ、そしてアベンドの仲間らしき女が居た。三人共、赤色で縁取りされた黒い外套を羽織っている。パリエラはここに着いた時、仲間の女から外套と大鎌を受け取っていた。


 彼らを前にして放火魔の男が居る。周囲はまばらに木や灌木が生えており周囲からここの様子は覗きにくかった。


「ディムってヤツをいつ始末してくれるんだ!? そしてなんで俺を呼び出したんだ!」


 放火魔の男は三人のリーダーらしいアベンドに食い掛っている。パリエラはニヤニヤしていた。


「メリーク、お前から説明してやるか?」


 パリエラはメリークと呼ばれた女に言った。


「……めんどくさい。」


 メリークと呼ばれた女は表情を変えずに答えた。


 メリークは二十代前半とも二十代後半ともとれる美人の類の顔立ちをしていた。すこしウェーブが掛かったショートの黒髪、丈の短い革製の上着とズボン、肘まである手甲を兼ねた様な指だしグローブ、太ももまである長いブーツを履いている。装備はすべて黒く要所をベルトで留めている。


「仕方ね~な~。私から詳しく説明してやるよ。お前はここで死ぬんだ。あははは、以上!!」


 パリエラはそう言った後、ニヤニヤしている。


「ば、馬鹿な! お前らは金を払ったら悪人を殺してくれるんだろ! 放火魔のディムを、俺の家を燃やしやがったアイツを殺してくれるんじゃなかったのか!?」


 放火魔の男が取り乱した様子で言った。


「まぁね~。それが正しかったらな。

 た~だ~し~、依頼内容が嘘だった場合……、分かるよな?」


 ニヤニヤしながら鎌を構えたパリエラが言う。


「ひっ!!」


 ヤバいな。僕は(ゼロ)から離れる様に走った。


 わざと三人に気づかれる様に、そして自分の身体に戻るために。


「誰だ!」


 僕がその声を聴いた瞬間、目の前が一瞬暗くなり、目の前にフェルミが居た。


「奴らはどっちだ?」


 僕が聞くと、フェルミが一方を指さした。


「付いて来い!」


 僕はさっきまで僕が居た方に走った。灌木を掻き分けるとそこに黒い外套の三人と放火魔、そしてその向こうにゼロが居た。


「なんだお前ら? あ!」


 パリエラが乱入してきた僕ら言って、フェルミに気づき指さした。


「お前たち()めろ!」


 僕は言った。


「邪魔をするな。俺たちは任務遂行のためには手段を選ばんし、邪魔するやつも手段を選ばす排除するぞ? 無駄に命を散らす必要もあるまい。これは俺たちの信条でもあり、信用の問題でもある。」


 アベンドが淡々と言った。


「こいつを殺さずに、立ち去ってくれると助かるんだが。」


 僕はアベンドに言った。


「それは無理だな。任務の前に立ちふさがる障害は、何があっても排除する。」


 アベンドは引く様子を見せず、長い剣を抜いた。


「お、やるのか? やるのか? あのチビは私が貰うぞ?」


 パリエラがアベンドを見ながら、フェルミを指さして言った。


「ゼロ、フェルミ、解除して良いぞ。なるべく殺すなよ。」


 僕がそういうと、ゼロが少年に変身した。身の丈にあった黒い革鎧そして二本の細身の剣を装備している。


「ほう、『殺すな』とはな。メリーク、そっちを頼む。」


 アベンドはゼロの方を見たまま、僕の方を指さした。メリークは短剣を抜き僕の方に向いた。パリエラが少し離れた場所に移動した。


「おいチビ。こっちで楽しもうぜ。あのでかい剣は持ってないのか?」


 パリエラがフェルミに言った。


 フェルミが突然両手に持っていたトウモロコシの芯を二本、パリエラに投げつけた。パリエラが鎌でそれを防いだ。金属同士が衝突する音が響くと同時に、トウモロコシの芯が二つに割れ、中からフェルミの投げナイフが現れた。


 それを合図に、アベンドがゼロに突っ込んでいった。そして両手に短剣を持ったフェルミもパリエラに突っ込んでいった。


 僕が右手で剣を抜くのと同時に、メリークが突っ込んで来た。


 速い!!


 メリークが短剣で攻撃してきたのを、なんとか抜きかけた剣で防いだ。直後、メリークが後方に下がった。メリークの短剣を持っている反対の手には剣が握られていた。


 僕のもう一本の剣だった。いつの間に?!


「自分の武器で死になさい。」


 メリークは静かに言い、自分の短剣をしまった。


 メリークから目が離せない。周りで激しく剣戟の音がする。僕は右手の剣を左手に持ち替えメリークに向けた。そして、右手で右腰のブラッドサッカーを抜いた。


「装填――」


 メリークが再度突っ込んできた。


 僕が右手のブラッドサッカーの切っ先をメリークに向けた瞬間、メリークが消えた。いや、もう僕の左前に居る! 左手の剣でメリークを突いた。メリークはそれを剣でいなし、さらに突っ込んできて僕の懐に入った。


 ブラッドサッカーをメリークに向ける直前、腹部に激しい衝撃が走り、僕は後方に吹き飛んだ。


 メリークは、薄っすらと蒸気が上がっている左手の掌をこちらに向け構えていた。そして右手の剣の先ではブラッドサッカーがくるくると回されていた。


 いつの間に盗られたんだ?


 そして、僕を吟味する様な目でメリークが、


「あんた、何でこれを持ってるの? 誰かから強奪した?」


「……奪ってない! 貰ったんだ!」


 腹部の痛み以上に、脱力感が酷い。


 メリークの一撃のせいだろうか。僕は尻餅をつき左手を支えに上半身を上げたまま動くことが出来なかった。


「ふ~ん。」


 何か考える様子のメリーク。


「アベンド! 思うところがある、いったん引いて!」


 メリークがそういうと、左の方から聞こえていた剣戟の音が消えた。


「パリエラ! やめろ!」


 左側からアベンドの声が聞こえた。


「え~!!!」


 右側の方からパリエラの不服そうな声が聞こえ、暫くして剣戟の音が消えた。


 メリークが剣先でくるくる回していたブラッドサッカーをこちらの方に飛ばしてきた。僕の目の前の地面に突き刺さるブラッドサッカー。


 メリークは僕に背を向け歩き始めた。アベンドが合流し、そしてパリエラが合流した。アベンドの外套は何か所か切れていた。パリエラの外套は何か所も切れ目が入っていた。


 アベンドとメリークはこちらに全く関心が無くなったかの様に去って行く。パリエラは時々こっちを振り返っていたし、視界から去る際には手さえも振っていた。


「大丈夫か。」


 少年の姿のゼロが聞いてきた。


「何とかね。」


「一番の使い手はロックが相手をした女だったな。すまん、見誤った。」


「僕も見誤ってた。フェルミは大丈夫か?」


 僕は、遅れて近寄って来たフェルミに聞いた。


「ブーストして良いんやったら大丈夫ばい。でも、ちょっとお腹すいた。」


 この調子ならフェルミは大丈夫だろう。


「放火魔の男、いや、もう一人の男は? 」


「そこに居るばい。捕まえるん?」


「ああ頼むよ。僕は、ちょっと休ませてくれ。」


 ゼロは元の猫の姿に戻って、座ったままの僕の傍に居た。フェルミが縛った放火魔の男を引きずって僕の所に連れて来た。


「た、助けて! 殺さないで!」


 こいつを殺さない様にしたために、僕らが戦ったということを理解していないのだろうか。アベンドとのやり取りも間近で聞いてたはずなのに。


「名前は?」


 僕はそいつに聞いた。僕もそいつも座っている。


 フェルミはそいつの横に回って立っていた。短剣を一本抜き、刃こぼれが無いかを確認している様だ。


「パロです。」


「奴らは何者なんだ?」


「金さえ払えば殺しを厭わない、『掃除屋』という集団です。」


「金を払えば殺しを請け負う、というだけじゃ無さそうだったが? 奴らが悪人と認めた場合だけ殺しをするんじゃないか?」


「う。」


「そして、お前は迂闊にも誰かに罪を着せようとして、それがばれ、逆に奴らに命を狙われた……。お前が放火魔なんだろ?」


「命ばかりはお助け下さい!」


 パロは地面に頭を付けて言ってきた。


「放火を自白すると約束するならな。」


「もちろんです。」


 パロは警備隊に放火犯として引き渡そう。だがしかし、罪を着せようとした相手が悪かった。よりによってディムとは。


 ん? パロが何でディムを知ってるんだ?


 ……これはつまり、ディムは自らパロに接触したということだな……。まったく、ディムは何をやってんだ。


「人のことは言えないかな。」


 僕は今の自分の姿を省みて、独りごちた。


「ん? 何?」


 フェルミが首を傾げて、僕が何を言ったのか聞いてきた。


「ん。いや、腹減ったな。」


「うん!」


 フェルミは満面の笑顔で答えた。


アベンド:「バリエラ、ぼろぼろじゃないか。」

パリエラ:「あのチビ、強ぇ~よ。ワクワクしてきたぁ~。んで? なんで途中で止めたんだ?」

メリーク:「ボスに報告することがある。」

パリエラ:「ふ~ん。まぁ、どうでも良いけど。あのチビとまたやりてぇ~。」


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