表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰か私をお宅に住まわせてください(だれすま)  作者: 乾燥バガス
誰か私をお宅に住まわせてください
54/90

第54話 勲章

「おやぁ? 烏合の衆の会合か?」


 嫌な奴が現れた。エリトだ。


「なぁフォトラ。いい加減にレッドブーツに入ってくれよ。そろそろ僕の堪忍袋の緒が切れちゃうぞ? まだ、新人冒険者の手伝いを続けるのかい?」


 エリトはまだフォトラを自分の冒険団(カンパニー)に勧誘したがっている様だ。結構しつこいな。


「あら、今日からはカラーズの一員よ。お生憎様。」


「カラーズって何だよ?」


 思いもよらなかった展開に、エリトがフォトラに食い下がる。


「ここに居る人たちの冒険団(カンパニー)よ。あぁ、彼ら二人は違うけどね。」


 フォトラはディムとレムを指して言った。エリトが不満げに顔を歪ませた。


「ジェイス団の生き残りじゃないか。そんなひ弱な冒険団(カンパニー)に入ったら君も死んじゃうと思うぞ。ジェイスも死んでしまったしな。」


「なんだと!?」


 珍しくルビィが怒っている。


「やっていいん?」


 フェルミがこっちを向いて聞いてきた。ルビィにつられて身を乗り出そうとしていたが我慢している。僕との約束を守ってくれている様だ。


「やめろよ、二人とも。」


 僕は二人に言った。


「おやおや、君が団長かい? 

 えっと。確か、警備隊の入隊テストに何度も落ちたんだよね? う~ん。君の名前は覚えてないや。もしかして、入隊テストの実技で対戦したかな?」


 嘲笑しながらこっちに向いてきたエリト。


 さてはエリトのやつ、入隊テストのときに対戦したことをきっちり覚えているな。しかもボッコボコにしてくれたことも。


「あぁ、そうだけど。それが何か?」


 だが僕は、警備隊の件はすでに吹っ切れている。エリトの挑発に乗ることは無い。


 その僕の反応に満足せずに舌打ちをするエリト。


「ちっ。そんな脆弱な冒険団(カンパニー)より、うちのレッドブーツの方が断然良いに決まってるさ。団長を比較しても僕の方が良いしな。なんて言ったって僕は元警備隊だし能力者だしさ。

 君もそう思わないかい?」


 そこに居合わせているディムに話を振るエリト。


「いえ、あなたのことはよく知りません。ただ、ロックやルビィは国から勲章が送られるぐらいの実力を持ってますよ。そういう点で、彼らがあなたやレッドブーツに劣っているとは思いませんが?」


 急に顔色が変わるエリト。あからさまに悔しがっている。


「お前、何も分かってないな。」


 いや、分かってないのはエリトの方だ。ディムは王子だぞ?


 エリトの矛先がディムに向いたのを察し、レムがすっとディムに近づいた。


「えぇ。だから色々勉強中なんです。今日は、反面教師の有用性を勉強させてもらいましたよ。」


「なんだと! まぁ良い。お前もいずれ世間の厳しさを知る羽目になるのさ。」


 悔しさと怒りをなんとか抑えたエリトはそう言い放つのがやっとの様だった。


「そろそろ用件は終わったんじゃないかしら、エリト。」


 フォトラがエリトを退散させようと言葉を発した。


「覚えておけよ。」


 僕をにらみ、捨て台詞を吐いたエリトはこの場から去っていった。


「彼は典型的なアレでござるな。捨て台詞もテンプレート通りでござるよ。フォトラ殿が手に入らないと分かると、ますます欲しくなってるのではなかろうか。早速カラーズにも面倒な相手ができあがったという訳でござるな。

 ふむ。これは気を付けた方が良さそうでござる。」


 腕を組んで少し考え込む様子のデルファ。


 そんなことは勘弁してほしいがデルファの言う通りだろう。エリトには気を付ける必要がありそうだ。


「ところでディム、勲章って何のことかしら?」


 フォトラがディムに尋ねた。


 そう言えば、カスルから教えてもらった報奨のことをフォトラには言っていなかった。


「ジェイス団でしたっけ? かつて盗賊団を壊滅させたでしょ。その功労らしいですよ。ジェイス団全員に贈られるらしいです。

 あぁ、レムの親族が王家に近いところで働いているんですよ。その情報筋です。」


 なぜ知っているのかを聞かれる前に、適当なことを言うディム。


 ディムの言う通り、確かにレムは王家に近いところに居るよ。それは間違いない。


「へぇ。いつもらえるんだ?」


 エリトが居なくなって機嫌をとり戻したルビィがディムに尋ねた。


「所属していたクエスト紹介所を介してジェイス団に贈る予定だって、勲章授与関係者が言ってたらしいですよ。そろそろハロルドワークに届いていてもいい頃じゃないかな?

 そうだロック、一緒に受付カウンターに行って聞いてみましょうよ。」


「あぁ、冒険団(カンパニー)の登録もしたいからな。みんなはここで待っててくれ。ちょっと行ってくる。」


 僕はディムと二人だけで受付カウンターに向かった。そして周りに誰も居ないことを確かめた僕はディムに訪ねた。


「お忍びかい? ディミトリオス王子。にしては目立ち過ぎの気もするけど。」


「えぇ、リドレック=セイマーフォ卿。色々な視点で物事を見ておきたいですからね。あなたには、色々お世話になるつもりですよ。」


 よしてくれよ。


「その名前はネイが勝手に付けたんだ。正式な場所には必要なんだってさ。

 それはそうと、あまり迷惑かけないでくれると助かるんだが。カラーズの団員だけも個性的な奴ばかりだしさ。」


「えぇ、わきまえますよ。しかし、あなたは貴族相手でも物怖じしませんね。いえいえ、そちらの方が都合が良いので気にしないで下さい。」


「まぁ、ネイの影響が多分にあるね。

 ところで、盗賊団の討伐って勲章がもらえる程の大したことなのかい? まさか、余計な介入があったってことは無いよな? かなり偉い人が口を挟んだとか。」


 サルファ侯爵とか。知り合いの知り合いってことだけで、大事に巻き込まれるのはごめんだ。


「さぁ? 僕は何も知りませんよ。少なくとも国家間の懸案であったのは確かですから、遠慮せず貰っておけば良いんじゃないですか?」


 しれっと答えるディム。これ以上詮索しても何も出てこないだろう。


 そうして僕は、クエスト紹介所のカウンターで冒険団(カンパニー)の登録を終え、さらに勲章も受け取ることができた。ルビィとコポルとフォトラは勲六位珊瑚章を、僕と殉職者のジェイスは勲五位真珠章を貰った。


 勲章をもらえたのは感謝するとして、これってどの位すごいのだろう? 後でネイに聞いてみよう。


ロック:「勲章ってどんなのがあるんだ?」

ネイ:「勲一位恒星(こうせい)章、勲二位薫風(くんぷう)章、勲三位蒼鷲(そうしゅう)章、勲四位白鯱(びゃっこ)章、勲五位真珠章、勲六位珊瑚章で、一位と二位が貴族用、三位と四位が軍人用、五位と六位が市民用よ。」

ロック:「貰ったら何かいいことがあるのかい?」

ネイ:「アルが喜ぶだけよ。手駒にするための手綱みたいな物だから……。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング 一票入れて頂けると嬉しいデス。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ