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誰か私をお宅に住まわせてください(だれすま)  作者: 乾燥バガス
誰か私をお宅に住まわせてください
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第50話 サルファ商国への帰路3

   *   *   *


 ――後一日でサルファ商国に着く予定の正午近くのことである。


 僕ら一行が街道を進んでいると、三騎の騎兵が前の方から近づいてきた。先頭は北方守備隊のカスル少尉だ。


「おお、貴殿は。」


「お久しぶりです。カスル少尉。」


「お前たちは先に行ってくれ。すぐに追いつく。」


 カスル少尉は馬を降りながら、連れの二人にそう指示した。


「カスルと呼んでくれ、ロック。あの襲撃の後はどうだった? 息災か?」


 連れの騎兵の二人が立ち去ってから、気さくな雰囲気で話し出したカスル。


「ええ。」


「あぁ、立ち寄ったのは他でもない。例の盗賊団の生き残り、口を割ったぞ。やはり手配中の盗賊団だったらしい。まぁ、その盗賊団は君が潰しちまって跡形は無いんだけどな。」


 僕がほぼ一人で盗賊団を壊滅したのがまだ少し信じられないのか、若干の感心と苦笑を浮かべながらカスルは言った。


「そのうち君のところに、なんかしらの報奨が行くかもしれん。楽しみにしておくといい。一応あの盗賊団は各国間の懸案だったからな。それを解決してくれた君には多少なりとも感謝していると思うぞ。

 それから聞いたぞロック。君はリックの息子らしいな! リックも誇らしいだろう、君の様な息子を持てて。」


 リックは僕の父さんの名前だ。カスルは父さんの知り合いだったんだな。


 カスルの言う通り、お父さんは誇らしく思ってくれるのかな。


「リックには俺も世話になったんだ。あの事故は残念だったが……。」


 それは父が城外の警備中に事故に合って死んだ件だ。詳しい話は、誰からも聞かせてもらえなかったな。僕には父さんの装備品と死亡退職金が手元に残っただけだった。


「ええ。」


「まぁ、これも何かの縁かも知れん。俺にできることがあったら何でも言ってくれ。」


「ありがとうございます。」


「じゃぁな、俺はまだ仕事があるんでな。」


 カスルは馬にまたがり、先に行った二人の後を追いかけた。


「誰なの?」


 御者席からネイが聞いてきた。デルファもこっちを見ている。フェルミは興味が無さそうだった。炒った豆が入った袋の中身をぽりぽり食べている。


「盗賊団に襲われたときに駆け付けてくれた警備隊の隊長さ。どうやら父さんの知り合いだったらしい。」


 ネイに説明した。デルファは当然、話の内容を理解できていない。


「もう、吹っ切れてるの?」


 ネイが突然聞いてきた。


「え?」


 僕は何のことか分からず、それしか言えなかった。


「警備隊よ。あんた、憧れだったんでしょ。」


「ああ、ネイのお陰でね。今は全くさ。」


「じゃあ、今はちゃんと大陸制覇の野望を目論んでるって訳ね?」


 ネイが笑顔で言った。


「な、何の話だよ。大陸制覇とか。」


「もちろん私の為よ。どう?」


「どうと言われても、それは無理だろ。」


「あら、残念。」


 ちょっと不貞腐れて見せるネイだった。


「大陸制覇の話ではござらんが、少し前の世界での話をしても良いでござるか?」


 デルファが僕に近寄って話しかけてきた。ネイの方をちらりと見ると、遠くでやってくれと目くばせしてきた。


「ああ、構わないよ。」


 時間もたっぷりあるので、デルファの妄想話に付き合うことにした。僕は、ルビィとフェルミが居る前の方に行くため、歩を速めながら言った。ネイから離れるためでもある。


「前の世界では、冒険団(カンパニー)の様な一団は、それぞれのメンバーに何かの象徴を割り振っていたでござるよ。例えばメンバーそれぞれに色を割り当てたり、動物を割り当てたり、カードゲームのシンボルマークを割り当てたりするのでござる。」


 ……本当に、大陸制覇の話とは全く関係ないな。


「何でそんなのことをするんだい?」


「個々の特徴を明確にするためでござろう。グループメンバーはそれぞれに役割を持っており、他のメンバーとは違うということを示していると思うのでござる。

 同じ個性が沢山居るより、異なる個性が居た方が結果としてグループにしか出せない『大きな力』が生まれるのでござるよ。」


 なるほどね。デルファが前の世界の妄想を持ち出して、何を言おうとしているのかは何となく分かる気がした。ネイも以前、団員のとんがった個性をうまく引き出せとか言ってたし。


「さらに、そう言ったグループは戦闘する前に変身するのでござる。」


「へ? ……んしん?」


「そう、変身でござる。普段の服装とは違う、戦闘用の装備に変身するのでござるよ。決して素早く着替えるのではござらんよ。魔法の様な力を利用して、一瞬で戦闘用装備になるのでござる。」


「そんなことせずに最初から装備していたら良いんじゃ無いか? 変身の為に魔力を使うのはもったいない気がするし、何の為にわざわざ変身するんだ?」


「普段の正体を敵にバレない様にするためでござるよ。」


「なるほどね。じゃあ、僕らには必要無いな。」


 僕らは普段の正体がバレても困る訳でもない。今は妖魔退治ばかりだし、妖魔が僕らの正体を知ったうえで普段の生活を脅かすという訳でもない。


「ちょっと待てよロック。」


 ルビィが口を挟んできた。


「かっこいいんじゃないか? 変身。これから戦闘に突入するって時に変身すると、やる気が出てきそうじゃないか。そうだよな? デルファ!」


「もちろん、変身は戦隊の定石でござるよ。」


 デルファが突然、大袈裟に両手を振り回して「変身!」と言った。何やら決めポーズをとっている。ルビィはそれを見て感心していた。


 おいおいおいおい。


「共に戦うメンバーに、いや、仲間に象徴を割り振りたいでござる。小生の憧れでござるよ、前の世界の記憶を得たときからの。そして、さらにそれは冒険団(カンパニー)の一体感も得られると思うのでござるよ!」


 ルビィが目を輝かせてこっちを見ている。多分、デルファの目も輝いているのだろう。


 しかし、僕にどうしろと言うのだ?


「ま、まぁ、可能なら別に良いんじゃないか? でもそんな仕掛けを作れる魔法使い、僕は知らないぞ。」


 おっと、キャスティが居た。


 きっとキャスティなら出来てしまうのだろう。だがしかし、僕がキャスティにお願いしなければ、それは叶わない筈だ。


「おっし。団長の許可が出たな。すぐには無理かも知れないけど、いずれそんなことが出来ると良いな!」


「そうでござるな!」


 意気投合したルビィとデルファは、互いの右手を打ち合わせ握りあっていた。フェルミは興味なさげに、欠伸をしながら伸びをしていた。


カスル:「リック、夜遅くまで訓練するのも良いが、息子の相手もしてやれよ。」

リック:「あいつには早く独り立ちして欲しいんだ。」

カスル:「モニータもラックも居なくなって、ロックはお前の唯一の家族だろ? 会話してやれよ?」

リック:「……そうだな、あいつに足りないところを教えてやるか。」

カスル:「いや、そうじゃなく、普通の会話で良いと思うぞ……。」


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