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誰か私をお宅に住まわせてください(だれすま)  作者: 乾燥バガス
誰か私をお宅に住まわせてください
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第36話 墓参り

   *   *   *


 数日後、ジェイスの遺体はサルファに移送され、親族によって葬儀がしめやかに執り行われた。


 葬儀が終わった後、僕らジェイス団の残りの面々はジェイスの墓標の前に集まっていた。


「ジェイスも冒険者として死んだんだ。俺らがあまり悲しむと、あっちで胸を張ってられないんじゃないか?」


 コポルはまだ完治していない左腕をさすりながら言った。


「そうね。ジェイスが死んだ事を忘れる必要は無いけど、ずっと悲しむ必要も無いわ。」


 フォトラがしっかりとした口調で言った。


「だな!! で? ジェイスが死んじまったら、ジェイス団は解散か?」


 気持ちの切り替えが早いルビィが切り出した。ルビィは昔っから、苦悩からの回復が異常なほど早い。


「おい、ちょっといいか?」


 コポルが、少し申し訳なさそうに、話し出した。


「俺、冒険者辞めるわ。

 ……実家の稼業、鍛冶屋だけどな、そこで働こうかと思ってるんだ。家業は兄貴が継ぐんだけどよ、それでも鍛冶をやりたいって思ってるんだ。

 何つぅか……、冒険者に使ってもらえる良い武器や防具を作り出したいっていうか、……な。」


 普段あまり喋らないコポルが、上手く伝えられない様なもどかしさを含みながら語った。


「コポルがそうしたいんなら、良いんじゃない? 別に私たちを気にすることは無いわよ。好きな様にしなさいな。その道も厳しいだろうけど、選んだのはコポル自身なのだから、頑張ってね。」


 否定はせず、コポルの選んだ道をそっと後押しするフォトラ。


「あ! あれだろコポル。重たい剣を、軽くすることができる様な鍛冶師を目指すんだろ? そしたら、冒険者の隙が無くなって危険が減るって訳だし。」


 無邪気にルビィが言った。


「ふん。あー、そうだよ。それがどうした。」


 怒ったように振る舞っているが、顔は本気で怒ってはいないコポル。


「やっぱりな! じゃあさ、いい武器が出来たら俺に売ってくれよな。もちろん割引を多めで。何なら、試作品を実戦利用するのを手伝っても良いぜ。

 うん、どこにも売っていない自分専用の武器ってのもかっこいいよな。よし! それも頼むとするか。」


「あぁ、もちろん頼むさ。」


 コポルとルビィは固く長い握手を交わした。


「よし!

 それで? 俺は冒険者を辞めないぜ。ロックもだよな? フォトラはどうするんだ?」


 ルビィは僕の意向を全く聞かずにフォトラに質問を振った。まぁ、僕も冒険者を辞めるつもりはこれっぽちも無い訳だが。


「私も冒険者を辞める気は無いわ。」


「だよな。だったら、ロックとフォトラのどっちが団長をするんだ?」


 ルビィは自分は団長をしないことを間接的に宣言した。


「私はしないわよ。」


 フォトラがすかさず言う。僕はてっきりフォトラが団長をするのかと思っていた。


「じゃぁ、ロックだな。」


「え?」


「なんだ? 不満か?」


 団長の役を僕に振るルビィ。


 団長か……。


「団長をすることはやぶさかでは無いけど……。」


 今の僕で勤まるのだろうか? ちゃんと皆を守れるのだろうか? もっと考える時間と、もっと成長する時間が欲しい。


「いや、まだ待ってほしい。」


 今はそう答えることしかできなかった。


「オッケー。待ってほしいってことは、いずれやるってことだな。フォトラはロックが団長をやっても良いのか?」


 話をぐいぐい先に進めるルビィ。


「ええ、ロックなら出来ると思うわ。ねぇロック? 自信をもってやってみたら?」


 フォトラは僕に団長をすることを促してくれた。


「だとさ、ロック。良かったな。で、どのくらい待てばいいんだ?」


「分からないさ。」


 まだ僕には色々足りないところが有るんだ。


「う~ん、そっか。俺はいつまででも待つぜ。それまではロックと一緒に行動するからな。

 で、フォトラはどうする?」


「そうね……。

 私はジェイス団に入る前の時みたいに、派遣隊(パーティ)の補填として参加したり、新人冒険者の手伝いとかして待ってるわ。まぁ、もともと一匹狼みたいなものだったしね。

 ロック、いずれはちゃんと拾ってよ? エリトの所なんかに拉致されるなんてまっぴら御免だわ。」


 フォトラは両腕で自分自身を抱きしめて、少し大げさに身震いして見せた。


「もちろんさ。その時は、よろしく頼むよ。」


 僕はそう答えた。フォトラ程の人材を手放したくはない。


「ええ。」


「よし! じゃあ、みんな帰ろうぜ。ジェイス団はここで解散だ。」


 ルビィが言った。そして、ジェイスの墓に向き直り言葉を続けた。


「じゃぁなジェイス。見ててくれよ。俺たちは俺たちの冒険をまだまだ続けるぜ。」


 ルビィは力拳を握っていた。


 真新しいジェイスの白い墓標は何も語らず、ただそこに佇んでいるだけだった。だけれども僕はジェイスがふんぞり返って、頑張れよと励ましてくれている気がした。


 澄んだ風だけが、墓標や墓地の木の間をすり抜けて行った。それはまるで新しい風を起こせと言っているかの様だった。


バガス:「一旦ここを一章完了とします。皆さんの反応をドキドキしながらお待ちしております。誤字脱字の指摘も歓迎です。」

神奈:「先輩。会社PCで何やってるんですか?」

バガス:「あ、いや……。」


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