表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰か私をお宅に住まわせてください(だれすま)  作者: 乾燥バガス
誰か私をお宅に住まわせてください
33/90

第33話 護衛任務2

   *   *   *


 翌朝、僕とルビィがクエスト斡旋所ハロルドワークのロビーに着いたら、すでにジェイスとフォトラが居た。二人の他に、今回連携する冒険団(カンパニー)のリーダーと思わしき人物も居た。防具は革鎧の軽装で剣を帯びている。その三人で、いや、主にフォトラとそのリーダーが二人で話し込んでいる。打ち合わせ中だろうか。僕は彼らの方に歩み寄った。


「おはよう、みんな。」「おっす。」


 僕とルビィの挨拶でようやく彼らは僕に気が付いたようだ。


「おはよう。」「おっす。」


 挨拶を返すフォトラとジェイス。


「ストラク、こちらはうちのメンバーのルビィとロックよ。ルビィとロック、こちらはストラク。今回連携する冒険団(カンパニー)『フォックスアイズ』の団長よ。」


 フォトラが紹介をしてくれた。ジェイスは腕組みをしたままだ。


「「よろしく。」」


 ストラクと僕らは異口同音に挨拶した。


「それでは、我々は北の街門で隊商と合流しておく。そちらもメンバーが集まり次第、合流してくれ。」


 ストラクはそう言ってロビーを出て行った。ストラクの鎧は使い込まれていて、いくつかの刀傷が刻まれていた。きっと、クエスト慣れしているのだろう。そのストラクが出て行った暫く後、集合時間の少し前にコポルが現れた。


「待たせたか?」


 コポルが言った。


「おはよう。問題ないわ。定刻通りよ。」


「ようし!! お前ら準備は万全か? 行くぞ!」


 ジェイスが大きな声で出発の合図を出した。


   *   *   *


 北の街門を出て少し行ったところで、五台の馬車が馬を道側に向けた形で整列していた。それぞれの馬車馬を御者が世話している。商人らしき二人がストラクと話している。フォックスアイズの他の五人の団員は、こちらから見て馬車の列の向こう側に集まっていた。僕らはストラクら三人に近寄った。


「お待たせしました。」


 フォトラが声を掛ける。


「おぉ、皆さんお揃いですね。それでは出発しますか。」


 商人の一人が言った。


「あぁ。」「おう。」


 返事をするストラクとジェイス。


「お~い、ニオン。二人連れて先行警戒をしてくれ。連絡方法はいつもの通りだ。」


 ストラクはフォックスアイズの五人に向かって大声で言った。斥候役の三人が先に出発した。街の近くから斥候を出すとは用心深い。そのフォックスアイズの装備は五人ともに似たものを装備している。ストラクと同じように剣だけを持っているのがストラクを除いて二人。弓と剣を持った射手が三人だ。


 先行警戒の斥候に遅れて、馬車が順番に出発した。ストラクら三人は先頭馬車の前で先導している。二人の商人はそれぞれ一台目と四台目の馬車に乗り込んだ。ジェイスとコポルが四台目の馬車の左右に並び、僕とルビィが最後尾の馬車の後から左右に広がって歩いた。フォトラは最後尾の馬車の後部に後ろ向きに腰かけ、後方を監視してる。


「ロックとルビィはそれぞれ左右方向と、前方の馬車群を監視しておいてね。」


 フォトラが馬車の上から言った。ゼロはフォトラの膝の上に居た。


「ゼロと代わりたいぜ。なぁ、ロック?」


 ルビィが言った。


 僕は返事の代わりに苦笑いをルビィに返した。そうして一日目の旅が始まった。


   *   *   *


 護衛クエストの一日目の夕暮れ。街道から離れたところにあった水場で野営の準備を始めた。馬車を縦列に並べ壁を作る商人達。その馬車の壁を背にして、中央辺りに商人と御者のグループが焚火を囲んでいる。縦列の先頭側にはフォックスアイズが、後尾側にはジェイス団がそれぞれ焚火を囲んだ。皆が夕食の準備をしている時、ストラクがジェイス団の焚火の方に近づいてきた。


「念のため、警戒の仕方の確認に来た。

 夜中を通して、フォックスアイズ、ジェイス団のそれぞれの一人ずつが交代で見張りをする。そして、真夜中前にジェイス団が周囲の広域警戒索敵を行う。真夜中から明け方の間にフォックスアイズが、周囲の広域警戒索敵を行う。明日は、広域警戒探索の順番は入れ替える。この段取りで問題ないな?」


「ええ。」「ああ。」


 フォトラとジェイスが答えた。


 その確約通り、夕食を終えたジェイス団が、就寝前に周囲の広域警戒探索に出た。


 この辺はまばらに木が生えていたり藪があったりした。僕とゼロとコポル、ジェイスとルビィとフォトラの二組に分かれて広域探索を行った。フォトラのスカウト技能と、僕の猫の知覚の能力とで探索エリアを分担した形だ。


 フォトラ組と別れて僕らは焚火から離れたところまで歩いた。そして僕を中心とした近距離をコポルに探索してもらい、ゼロに一人で遠距離の周囲探索をしてもらった。わざわざゼロと入れ替わるより、僕から二十メートル以上はなれた探索をゼロ一人に任せたほうが効率が良い。ゼロのことだから、野生の動物に襲われることは無いだろう。万が一襲われそうになったら、一目散にこちらに逃げる様に言ってはある。


 広域探索では特に異常は認められなかった。その代わりと言っては何ではあるが、ゼロがウサギを一羽ついでに捕まえてきた。小猫のゼロよりもそのウサギは大きかった。


 その後一人ずつ交代の番に付いた。順番はジェイス、コポル、フォトラ、ルビィ、僕だ。


 途中で目が覚めた時、フォトラが膝に置いたゼロを撫でながら番をしているのが見えた、その時、フォックスアイズの面々がばらばらと広域警戒に向かい始めているのが見えた。


「ロック、起きろ。」


 ルビィに起こされた。


 フォトラが番をしているかと思ってたけど、いつの間にか眠ってた様だ。


「交代だぜ。眠たくなったらフォトラの寝顔を見るといいぞ。」


 まったく、ルビィは……。


 まだ夜は深い。東の遠い空が明るくなろうとしている様だが、気のせいかも知れない。僕は焚火に薪を追加した。


 暖かい物でも飲みながら番をするか……。


 そうしているうちに、何事も無く二日目の朝を迎えた。


   *   *   *


 二日目の昼間の移動もつつがなく行われた。フォーメーションも一日目と同じだ。今晩一泊野宿すれば、次の夜は警備隊駐屯地で宿が借りれるかもしれない。最悪宿がいっぱいで野宿を強いられたとしても、少なくとも店で食事がとれるだろう。街にある様な立派な店は無いと思われるが、無いよりはましだ。


 二日目の夕暮れ。一日目と同じ様に水場を求め街道から離れたところに野営の準備を始めた。商人と御者のグループの焚火を挟むように、フォックスアイズとジェイス団の焚火を用意した。夕食の準備をしている際に、ストラクがジェイス団の焚火の方に近づいてきた。


「今日は、フォックスアイズが就寝前に広域警戒に行く番だ。深夜の巡回はそちら側でよろしく頼む。」


 そう言ってストラクは去って行った。そして、途中で商人達と何か話した後、フォックスアイズのメンバーが囲んでいる焚火に向かって行った。


 夕食を終え、ジェイス団は五人と一匹が円形に焚火を囲んでいた。そんな折、フォックスアイズの面々が三人二組の班に分かれ、広域警戒探索に出発するのが見えた。ジェイスが手を振り挨拶をすると、ストラクが手を上げ返事をした様だった。


ロック:「その色の付いた石は何ですか?」

ストラク:「これか? 前を行ってる斥候からのメッセージさ。色と数の組み合わせで簡単なメッセージを残すのさ。」

ロック:「へぇ、この場合はどんな意味なんですか?」

ストラク:「まぁ、特に問題なく順調だって意味だな。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング 一票入れて頂けると嬉しいデス。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ