24.
学園都市の研究棟に建てられた病院にて。
「いいですか、もう耳にタコができるほど聞かされたかもしれませんが、二度と無茶な魔法を使ってはいけませんよ」
「はい」
「分かってるわよ」
「ただでさえオリジンは不確定要素も多いんですから……」
並んだベッドの上で、智之とセレナはこっぴどくお医者さんに叱られていた。
ここ二週間、智之の腕は魔法が使えないように対魔法専用包帯でぐるぐる巻きにされている。
その横、セレナはもっとひどく、上半身全てに包帯が巻かれていた。
それもこれも、全部破壊魔法のせいだ、ということにしておこう。
お医者さんが去ったあと、しばらくして病室の扉がガラガラと乱暴に開けられる。
来訪者は央麻とヴルムの二人だ。
ヴルムは比較的軽症で済んでいたが、央麻の方はファフニールに操られていた時の後遺症がまだ残っているらしく、服の上からコルセットを巻いていた。
「よ、なぁにしみったれた顔してんだい」
「けっ、呑気な面しやがって」
「ヴルムさん、那波くん。もう起きて大丈夫なの?」
智之もセレナも、操られていた彼と相対していた時は死なないように必死だった。
その影響もあり、なかなかに重症だということは以前お見舞いに来た学園長の話で聞いていた。
「いんや、ぜーんぜん。ほい」
「うぁっちいててててて! クソ、何すんだヴルムぅ……っ」
叫ぼうとした央麻だったが、身体に走る痛みに耐えきれずに思わずその場でもんどり打つ。
腰をつついたヴルムは楽しそうに笑っていた。
酷い有様だ。
「何見てんだよ」
「いや、大丈夫かなぁって……」
「俺だって自分がやったことぐらい分かってんだ。笑うならさっさと笑いやがれ」
「でも、那波くんが悪いわけじゃないし」
「うっせぇ、俺がやらかしたことには変わりねぇだろうがぉおおおおお……っ」
また脇腹を突かれて悶え苦しむ央麻。
触った張本人はやれやれと肩をすくめていた。
「何で雇い主サマはごめんなさいの一言も言えないのかねぇ」
「ヴルムさん、何だか弄りが過激になってません?」
「雇い主サマの親から金積まれてね。性根を叩き直してやれって言われたんだ」
「あんのクソ親父……っ」
「はいはい、行くよ。そろそろ担当医が戻ってくる頃さね。怒られるのはごめんさ」
「あ、ちょ、止めろ! 持ち上げるな! 痛い痛い痛い!」
央麻はヴルムに抱えられて部屋を出て行く。
妙な沈黙が病室に横たわった。
「何の話だったの?」
「謝りに来たんだろうね」
「あれで?」
ははは、と智之は苦笑する。
「また今度四人で話そうか」
「えぇ……私アイツ面倒くさいんだけど。というか神子はどこ行ったのよ」
「実家の方で忙しいみたいだよ」
「ふぅん。ま、元気にしてるのならいいわ。それにしても残念ね。せっかくアンタも魔法が使えるようになったのに……」
「仕方ないよ。やっぱり破壊魔法の実戦投入は俺たちには早かったんだって」
もともと、道理を壊して無理を通す力だ。
強力な力の代償は身体にやってくる。
智之の腕は破壊魔法の使いすぎで、中から鬱血していたほどだ。
一週間は魔力を使わないようにと釘を刺されてしまった。
(いつか、魔力操作さえも使えなくなるのだろうか)
ふと、そんな懸念が頭を過る。
片鱗を万全に操った智之でこれなのだ。
魔法操作がおぼつかないセレナの翼はさらにボロボロになってしまった。
もうそのままでは飛ぶことも難しいだろう。
「お互い、夢から離れちゃったね」
「何、まさか諦めるとか言わないわよね」
「まさか」
口元に笑みが浮かぶ。
智之の相棒はまだ諦めていない。
だとすれば、いや、だとしても智之が夢を手放す理由もどこにもない。
これからも二人は高みを望み続けるだろう。
魔法が使えない俺と、空が飛べないドラゴンだとしても。
──魔法学園での物語はまだまだ続いていくのだから。
<無能魔力しか持たない俺の魔法学園ライフ
〜ツンデレ使い魔ドラゴン娘の夢を叶えるまで〜
邪竜ファフニール編・完>




